『遊びの中での声のかけ方』 Vol.2 - 2010.02.24 Wed
以前、小さいうちは特に一人遊びこそ大切と書きました。
ではどうすれば一人遊びがよくできるようになるか。
それは、見ててあげることです。
大人が相手をして遊んであげるっていうことも必要なのだけど、一人で遊べているときは割り込まずに見守ってあげる。
遊びの途中で大人の視線を確認してくるときもそうだし、なにかが出来て見て欲しいとき、きちんと見てあげられると達成感が持てて、遊びに意欲的に取り組めるようになります。
別にず~っとつきっきりじゃなくても、だんだんどこで確認してくるか、出来たものを見て欲しいかってなんとなくわかってくるものですよ。
あと、おもちゃはありったけ出しておくのではなく、時々「入れ替え」をしてあまり使ってないものは目に付かないところにしまっておいて、しばらくしてまた出すと新鮮な気持ちでじっくり取り組めるようにもなります。
これけっこう効果あります。
集団のなかでの遊びを見ていると、時々いろいろなおもちゃを持ち歩いてそれで満足してしまっている子がいます。
「遊具の抱え込み」です。
年齢の近い兄弟がいたりして自分の遊びがすぐに壊されてしまったり、集団の中で個々の遊びをきちんと保障しきれていないことをたくさん経験してきたりするとなることがあります。
こういう「抱え込み」はこどもの遊ぶ力にならないので、はっきり言ってしまいます。
「そんなにおもちゃ持っていてもどれも遊べなくなっちゃうから、遊ぶもの決めてごらん」「そういう風にたくさん持ち歩いているのは僕は好きじゃない」「ちゃんと遊んでいるもの壊されないよう見ててあげるから大丈夫だよ」
遊ぶ力のついていない子だと、見ているだけではじっくり遊べず、他のものに目移りしたり、刺激の強いほうへと行ってしまうので、大人が遊びの相手をしてあげてある程度遊び方を伝える。大人が遊び方を見せることで1つのもので遊べること教えていく必要があるかもしれません。
また、この「抱え込み」は家庭で大人から良い関わりをもらっていない子、叱られたり、支配されたりの多い子が心のすきまを物で埋めるためにしていることも多いです。
こどもも大人と同じように、心に不満があると物欲で満たすということがあるのですね。
遊具はたくさんあればよく遊べるというものでもないです。
たとえば、汽車セットやプラレールの列車。
ままごとの材料、食器など。
電車など連結するものがあればつなげたくなるものですが、多すぎると離れたり、脱線したりのストレスが遊ぶ楽しさよりも多くなってしまって、結局その遊具はつまらないものと感じるようになりかねません。
初めは1つ。だんだん成長とともに増やしていくと、遊びも発展していくのでよく遊べます。
ままごとの材料なども、たくさんありすぎるとそれをバラバラしたり、落としたりと本来の使い方でないことを遊びにしてしまうので、先々ままごと自体ができない子にもなりかねません。
ですので、適切な量と使い方を示していくといいと思います。
ここでポイントは、バラバラしたり落としたり、投げたりしてもそれを否定するのでなく、それならばままごととは別のところでその遊びをさせてあげればいいのです。
こどもは成長のある時期に来ると、その成長によって獲得した能力を発揮して遊びたくなります。
物をつかんで落とすことができるようになれば、それが楽しくなって遊びになります。適切にそれをやらせてあげれば、その能力はさらに伸びて次へとつながります。
1歳をすぎて食事をあげてたりすると、つかんだ食べ物を床に落としたりしますね。そういうのは悪気があってやってるのではないんです。「食べ物だから落としたらママいやだよ」と伝えつつ、他のところで落とす遊びをやらせてあげその欲求をみたしてあげると食事の面でも、遊びの面でもどちらにもよい影響を与えます。
大人から見たら肯定できないことも、ほとんどの場合こどもは悪意でやっているわけではありません。だから「否定」する必要はないのですね。
「肯定」できるところへと切り替えてあげればよいのです。
この辺が、なかなかこどもを相手にした経験の少ない人には持ちにくい視点みたいです。
ちなみに、もしこどもが「悪意」でやってるのだったら、それにははっきりと叱ることが必要ですよ。
・こどもがままごと遊具を投げて遊び始めたとき。
「それはお野菜で、投げるものじゃないから、投げたかったらこっちのボールで遊ぼう」と誘いボール遊びをする。
次にままごとに戻ったときは、先ほどの言葉を覚えているのと、ボール遊びで投げたい欲求を満たしてあげているので、ままごととして遊べる。
もし、まだ投げてしまうようなら、またボール遊びや型落としなどに誘ったりして、ままごと遊具は投げないことを習慣化していく。
「こどもがしたがっているからやらせてしまう」
という人がしばしばいますが、大人が見て好ましくないことはさせないということを当たり前に(習慣化)してしまえば、別にやらせないからといって可愛そうでもなんでもなくなります。
「したいからやらせる」が習慣になってしまうと、常に大人がこどもに負けた状態の関係になり、とても育てにくい子になってしまいます。
その子の遊びを保障して(守って)あげること。これはとても大切なことです。
それには年齢が大きいからとか小さいからということは関係ありません。
前にも書きましたが、小さい子が欲しがっているからと大きい子に遊具を譲らせる必要はありません。
これをしても、小さい子は「大きいお兄ちゃんだからおもちゃを譲ってくれたんだ」とは絶対考えられません。
小さい子が理解するのは「欲しいおもちゃは取っていい」ということです。
そして大きい子の方は、「小さい子っていうのは自分のやりたいことを制限する存在なのだ」と感じていきます。そうなってしまうと、小さい子を大事にするものと考えたり、かわいいと感じることがだんだん出来なくなっていきます。
最近、自分の弟・妹を可愛がれない子が多くなっているように感じます。
ちょっと心配です。
・小さい子が大きいこのおもちゃを取ろうとしたとき。
「それはお兄ちゃんが使ってるよ。こっちのおもちゃで遊ぼう」と別の遊具を差し出して、気持ちを切り替えてあげると共に、大きい子の遊びを保障する。
こうしてあげることで遊びが維持されると共に、大きい子は自分が尊重されたと実感することも出来ます。これが心に余裕を持たせてあげることになるので、結果として小さい子や他者に優しく接してあげられるようになるのです。
そして、こうして作られた心の余裕は、いずれ結果として小さい子や友達に自分からおもちゃを貸してあげられる子になりますよ。
・逆に「大きい子が小さい子(同年齢でも)のおもちゃを使おうとしたとき」
「どうしてそれ使っちゃうの?よく見て。○○ちゃんが使っているよ」と叱るのではなく気づかせる。
そして、自分の遊んでいたものを思い出させたり、そうでないなら使ってないおもちゃなどを提供していく。
こういった場合も、たいていは意地悪で横取りしているのではなく(そういうこともありますがそれはまた別の問題なので置いといて)、その遊びが面白そうで興味をひかれてしまったわけです。
なので注意するのではなく、気づかせ考えさせていくようにすると、こどもの心も荒らさず、遊びも荒れないのでよい遊びの空間が維持されていきます。
『あそび』についてのカテゴリーも最近設けました。よろしかったらこちらも参考になさってください。
こどもの遊びはただの時間つぶしではなく、様々な経験の場です。
よい遊びの時間を持たせてあげたいですね。
では、今日はこのへんで。おやすみなさい~。
↓励みになります。よろしかったらお願いします。


- 関連記事
-
- 乳児の遊び・関わり Vol.2 「乳児最大の遊び」 (2011/04/13)
- 乳児の遊び・関わり Vol.1 (2011/04/11)
- 『遊びの中での声のかけ方』 Vol.5 (2010/03/01)
- 『遊びの中での声のかけ方』 Vol.4 (2010/02/28)
- 『遊びの中での声のかけ方』 Vol.3 (2010/02/26)
- 『遊びの中での声のかけ方』 Vol.2 (2010/02/24)
- 『遊びの中での声のかけ方』 Vol.1 (2010/02/23)
- 『遊びとかたづけ』 (2010/02/18)
- 『遊べる子、遊べない子』そして『友達との関わり』 (2010/02/16)
- 6ヶ月前後のあかちゃんあそび (2010/01/18)
- 日本の子育て文化 おもちゃ選び編 その2 (2009/10/23)
● COMMENT ●
大真面目な話!
素が屋さん
> 本を書いて、
> 全国の幼稚園、保育園を講演してまわって下さい!
> あるいは、
> 実はもうやってます?
あはは、そうですね~本書いたり講演とかできたらいいんですけどね~。
でも、僕はちゃんと専門的に保育を研究したりしたわけでなく、自分のやってきたこと見たことを考察しているだけだから、たいして底が深くないんですよね~。
このブログをベースに色々考えてきたことが文章化できてまとめられているので、いいきっかけになりました。みなさんの応援があってこそだとおもいます。
いつもありがとうございます。
こんばんは
現在進行形で幼児の子育てに四苦八苦している私にとって保育士おとーちゃんさんの記事はどれもとても興味深いもので、実は今日で二回目の訪問です。
前回は『遊び』そして少し前の記事『かたずけ』を、今回は当記事を読ませて頂きました。
読めば読むほど私自身の子育てを思い返して反省しきりです(;^ω^)思い当たる事が多すぎて・・・
遊びの中での声のかけ方、片付け方、早速実生活でも頑張って実践しています。
実は現在もゆる~いトイレトレーニングの最中なんですが保育士おとーちゃんさんの記事を読んでトイトレ中の声かけにも通じるものがあるなぁとこれまた反省しました。
『トイレに行こうか』と誘っても中々うまくいかないので軽く落ち込み気味だったのですが、今考えると夢中になっている遊びをぶった切る形での声かけが多かったような気が・・・(時間ばかりが気になって)
最後になりましたがブログを覗いてくださって本当にありがとうございました。
記事の更新楽しみにしています。これからも頑張って下さいね。
ぷにこさんはじめまして~
どういたしまして、こちらこそ訪問していただいてありがとうございます。
> 遊びの中での声のかけ方、片付け方、早速実生活でも頑張って実践しています。
> 実は現在もゆる~いトイレトレーニングの最中なんですが保育士おとーちゃんさんの記事を読んでトイトレ中の声かけにも通じるものがあるなぁとこれまた反省しました。
> 『トイレに行こうか』と誘っても中々うまくいかないので軽く落ち込み気味だったのですが、今考えると夢中になっている遊びをぶった切る形での声かけが多かったような気が・・・(時間ばかりが気になって)
ためしに取り入れてみるのはいいけど、あんまりがんばってやる必要はないですよ~。
無理したらなにごとも長続きしないですからね。
「ゆる~く」がいいんですよ、なにごとも。
トイレはたしかに気になるところですが、あんまり「時間で」とか気にしないほうがむしろよかったりしますよ。
もしよければカテゴリの「排泄の自立」のところでまとめてありますので、ごらんになってください。
がんばらなくていいヒントがあるかもですよ。
> 最後になりましたがブログを覗いてくださって本当にありがとうございました。
> 記事の更新楽しみにしています。これからも頑張って下さいね。
こっちこそありがとう。
ぷにこさんのブログも楽しみにしていますよ。
でも、無理しないでね~。
No title
↑
こちらは、只今兄弟ができて悩んでいるところでした。おとーちゃんのお子さん達はいかがですか?下の子がちょろちょろ、上の子が遊んでいるのを取ろうとしますよね。うちも、私が手が離せない時は、おんぶしてお兄ちゃんの遊びを確保したり、戸を閉めてお兄ちゃんだけの場所を作ったりしてたんですが、長男は、何かあれば「次男くんおんぶして!」とか「戸を閉めると、一人でさみしい」とか言ってきます。こんな感じでもいいのでしょうか?
ちえっつママさん
> ↑
> こちらは、只今兄弟ができて悩んでいるところでした。おとーちゃんのお子さん達はいかがですか?下の子がちょろちょろ、上の子が遊んでいるのを取ろうとしますよね。うちも、私が手が離せない時は、おんぶしてお兄ちゃんの遊びを確保したり、戸を閉めてお兄ちゃんだけの場所を作ったりしてたんですが、長男は、何かあれば「次男くんおんぶして!」とか「戸を閉めると、一人でさみしい」とか言ってきます。こんな感じでもいいのでしょうか?
うちも下の子がこの頃身近に兄の遊具が置いてあると掴むようになったのだけど、兄はまだ自分のものを使われるのは嫌みたいで、遊具を取り返した後自分で妹のおもちゃをもってきて渡してあげたりしています。
兄弟がいるとどうしても、上の子の遊びが気になったりしてしまうもの、遊びをある程度確保できていたら、ある程度はこども同士の関わりの経験ということでいいんだと思いますよ。
ちょっとちょっとがいい学びです
遊びは確かになやみます。
「小さい子が大きいこのおもちゃを取ろうとしたとき」がヒットしました。
2歳のちびちゃんはうらやましくて楽しくって参加している気分いっぱいなので、5歳の兄ちゃんのおもちゃが欲しくてたまりません。
兄ちゃんは兄ちゃんで自分の世界に没頭しているので荒らしにくるちびちゃんが疎ましいと思っています。
お兄ちゃんの世界を荒らさないでいると隙を狙ってはこそっと取っています。これまた親がみると兄弟とはおもしろいものだと観察しているのですが、お兄ちゃんは気が気でなく、「いじわるされた」とつげ口にやってきます。
そのなかで「そうか、そうか」と拝見することができました。
次も期待しています。
ぴよままさん
> 「小さい子が大きいこのおもちゃを取ろうとしたとき」がヒットしました。
> 2歳のちびちゃんはうらやましくて楽しくって参加している気分いっぱいなので、5歳の兄ちゃんのおもちゃが欲しくてたまりません。
> 兄ちゃんは兄ちゃんで自分の世界に没頭しているので荒らしにくるちびちゃんが疎ましいと思っています。
兄弟がいるとどうしてもこうなるんですよね。
お兄ちゃんからすれば、下の子はかわいいと思う反面、自分のしたいことをはばむ存在になることもしばしば。
でも、「お兄ちゃんの遊びが上手で面白そうだからやってみたくなっちゃうんだよ」みたく兄を立てながら関わっていくといいみたいですね~。
> お兄ちゃんの世界を荒らさないでいると隙を狙ってはこそっと取っています。これまた親がみると兄弟とはおもしろいものだと観察しているのですが、お兄ちゃんは気が気でなく、「いじわるされた」とつげ口にやってきます。
「いじわるされた」っていうのが可愛いですね。
こどもって自分の遊びに真剣なんですよね、そこまでしっかり遊べるお兄ちゃんは立派ですよ。
参考になります
夢中で読んでいます。
現在一歳半の娘が生まれた時からおとーちゃんの本とブログを参考に子育てしています!
おかげさまで娘は全体的に発達がゆっくりめなものの、子供らしく天真爛漫な子に育っています。
ただ天真爛漫すぎるというか、「それはやめてほしい」という注意が全く伝わらないんです!
特に食事の時は毎回必ずスプーンやコップを投げるので、その都度こちらも真剣に怒るのですが、ニコッと笑う始末…
何しろまだ一歳半で見た目が反則的に可愛いので、その笑顔につられて我慢しきれずつい笑ってしまうこともあります…それも良くないとは分かっているんですが(^_^;
そんな状況が毎日3食数ヶ月続いているのでいくら可愛くて堪らない娘といえどさすがに嫌気がさしてきて、おとーちゃんのブログにそういう事例はなかったかな?と探して探してやっと見つけました!(全記事目を通していますが忘れちゃっている部分もあり…)
明日は早速、食事の前にベビーチェアの上からお手玉でも散々投げさせようと思います(笑)
うちはお茶もぶちまけるので水遊びもさせないとですね。
もう本っ当にこれでやめてほしい!!
もちろん心のパイプを繋げる努力も引き続きやっていきます。
大変長々と申し訳ありません…
為になるお話をありがとうございました。
トラックバック
http://hoikushipapa.jp/tb.php/65-972c4a91
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
本を書いて、
全国の幼稚園、保育園を講演してまわって下さい!
あるいは、
実はもうやってます?
それがたくさんの子ども達の笑顔に貢献できると
本気で思いました。
僕の伝えたいところと
いつもリンクしてるんですよね。
僕が見えない保育の具体的な語り口、
本当に説得力があります!
ここに来ると、
発信してる側として元気をもらえると同時に、
親として、癒される思いがするんですよね。
ぜひ、やってほしいなぁ。