『遊びの中での声のかけ方』 Vol.5 - 2010.03.01 Mon
ほんとはもっと色々書こうと思えばあるのだけど、事細かに書いてそれを真似するより、ある程度例をあげてきたので、なぜこういう言い方をするのか、それを理解してもらったほうが良いのかなと思いました。
問題は大人の「スタンス」なんです。
「立ち位置」。「視点」。
多くの大人はこどもに対して上から見ています。
確かに、年齢の上下はあるし大人はこどもを導いてあげる存在です。
でも、だからといってこどもは大人の下にいる存在と考えていくと、どうしても「支配」や「抑圧」という方向へおちいり易いのです。
そしてその結果、こどもはどんどんつぶされていきます。
なにか物を教える先生ならそういう部分があってもいいと思うのですよ。
例えば、ピアノ教えたり勉強を教えたりするだけなら、強制力もないと覚えられないから、上に立っててもいいのだと思います。
でも、人間を育てていくのだからそればかりでは伸びないですよね。
前回の終わりのほうでも述べましたが、こどもと大人の立ち位置が同じになったからといって、それがこどもに媚びているとか下手にでているとか、親の威厳がゆらぐとかそういったことにはならないですよ。
親と子の関係というのはどこまでいっても変わりませんからね。わざわざ支配的にこどもを扱う必要なんてないのですよ。昔はそういう考え方だったし、社会構造だったのでいまだにその名残があってそう考えてしまう人もいるのですが。
「どんなに小さかろうと、こどもを一人の人間として尊重すること」
これまでみてきた、「遊びの中での声のかけ方」は全てここから出発しています。
そしてこども大人関わりなく、人を育てようと思ったら「相手を尊重すること」抜きには出来ないと思います。
「うまく遊ばせよう」と思ってしてきたというだけでなく、むしろこどもをよく観察してその上で相手の意思とかを尊重していったら、結果的に遊びもよくできるようになったという面もあったわけです。
(こどものいいなりになるという意味ではけっしてないですからね、誤解のないように~
ときどき極端に走ってしまう人がいるので、念のため)
しかし、子育ての世界ではこのことはそう簡単にはいきません。
多くの人がどうしても「大人・こども = 上・下」 という感覚でとらえてしまっているので。
プロである保育士であってもそうです。
あるベテランの保育士は強い性格とでも言うのかな、主張のはっきりした人で、とてもこどもに言うことを聞かせるのがうまい人がいました。
なので、発表会や運動会などこどもがとても立派にできます。
だけど、その保育士の勤務時間が終わって遅番に引き継いだりしていなくなったりすると、みな大荒れなのです。
大人の言うことは聞かないし、その年齢ならするべきでないとわかるようなことも平気でしてしまう。
結局、支配し押さえつけられているだけなので、どっかでがまんしてたものをふきださずにはいられないのですよね。
支配すれば、そのときは出来るかもしれないけれど、こどもが自分の力と意志で出来ているわけではないのです。
それはほんとの成長ではないし、あとあとまで伸びる力でもありません。
良い子育て、良い保育というものは赤ちゃんに対する関わりをみていればすぐわかります。
赤ちゃんを抱き上げるときなど、後ろから黙って持ち上げたりしていませんか?
大人から大人へ棚越しに赤ちゃんを渡したりしていませんか?
二の腕を掴んで引っ張って誘導したりしていませんか?
何も言わずいきなり、股に手を当てておしっこを確かめたり、ズボンやパンツ、オムツを下ろしてはいませんか?
ほんの一例ですが、このこどものところを自分に置き換えてみてください。
どれをされてもイヤなことですよね。
こういうことは、人間扱いでなく物扱いなのです。
相手が赤ちゃんや小さなこどもであれば、不快感を感じてても何も言えません。
そしてその内こう扱われることに鈍感になっていくか、不満を出せる年齢までためていくしかありません。
これでもこどもは育ってしまうけど、でもいろいろ難しくなったり、本来伸びるべきところが伸びずに小さく育っていくのですよ。
こどもに対する視点を少し考えるだけで、こんなことは簡単に回避できます。
ただ多くの人が当たり前に思ってることだから、その考えることがないんだよね。
こどもへのスタンスしだいで、『遊び』でも『生活』でもこどもを伸ばせる声がけが自然とできてくると思うので、相手がどんなに小さかったとしても考えて見てください。
それだけでこどもの様子がだいぶ変わってくると思いますよ。
実は虐待シリーズの後に、この「声がけ」についての話がきたのはたまたまじゃなくて、関連があったのですよ。
「虐待」も「声がけ」もどちらもこのこどもに対するスタンスが問題だったわけです。
では、きょうはここまで、おやすみなさい~。
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● COMMENT ●
深いなぁ。。
素が屋さん
> でもこれって、理屈じゃなく、ハート(価値観)の部分だから
> 長年で培われたものを変えていくのって難しいですよね。
> 相当の努力と練習がいるかも。
>
そう、結局はその人のハートなんだよね。
だからこそ簡単なんだけど、誰にでも出来るってことじゃなくなってしまう・・。
そこが難しいところなんだよね~。
一般の人なら向き不向きってことでもまあしょうがないけど。
こどもを育てるプロだったらやっぱり、人によって出来たり出来なかったりってことじゃダメなんだよね、でも実際には出来ない人もたくさん・・・><;
でもこれじゃいけないんだよね、プロならマニュアルでもなんでもこういった基本のことは出来るようにしなくちゃね。
> でも、そこに気持ちと労力を割くのが育児だと思うんですよ。
> 今日も元気をもらいました。
> いつもありがとう!
こちらこそいつもありがとう。
本当に勉強になります!
「どんなに小さかろうと、こどもを一人の人間として尊重すること」
本当に大切だと思います。
もうすぐ2歳になる娘に以前は無意識に「ダメ!」「やめなさい」「しなさい」って上から言ってたんですよね・・・。ホント反省 orz
最近では実際書かれていた通り、自分がされたらイヤなこと、言われたらイヤなことを意識してしないよう気をつけはじめて、肯定することをこころがけるようにしてから、ずいぶんと娘の言動が変わってきたような気がします。
今回に限らず、すべてに記事がとても参考になりましたし、考えさせられ態度を改めなければ!という気持ちになりました。
ありがとうございます。
これからもぜひ子育てテクニックご伝授くださいませっ!
また、遊びにきます。今後ともよろしくお願いします。
そう思います
涼香さん、はじめまして
> 最近では実際書かれていた通り、自分がされたらイヤなこと、言われたらイヤなことを意識してしないよう気をつけはじめて、肯定することをこころがけるようにしてから、ずいぶんと娘の言動が変わってきたような気がします。
きっと本当に変わってきているのだと思いますよ。
こどもは自分がどう扱われているかってことに大人が考える以上に敏感です。
涼香さんが、声のかけ方変えてくれたことちゃんと受け止めてるはずですよ。
> 今回に限らず、すべてに記事がとても参考になりましたし、考えさせられ態度を改めなければ!という気持ちになりました。
> ありがとうございます。
>
> これからもぜひ子育てテクニックご伝授くださいませっ!
> また、遊びにきます。今後ともよろしくお願いします。
こちらこそありがとうございます。これからもよろしく。
ちえっつママさん
そうなんですよね、いっくら自分の子を尊重して育てたとしても、周り中がそうでなかったら、結局自分の子もそういう風潮にそまって同じことになってしまうんですよね。
なので、私は他人の子供でも、「その行動はおかしい」と思ったら、その場で注意したりアドバイスしたりしています。私のテーマは「人として」です。←これが基準で、子どもには「人として」すばらしい行いをすれば、たっくさん誉めるし、「人として」おかしな行動だったら、注意(提案)します。親の基準がぶれないのが、子育てしてて大事なことかなーって思ってます。
↑本当に大切なことだと思います。
でもなかなか出来ないんだよね~。
ちえっつママさんはすごい、立派です。
「親の基準」ってのも大事なことなんだよね、いま親のその場その場の感情による対応のギャップに振り回されてる子、ものすごく増えてるんです。
そういう子はなにを信頼すればいいか自信がもてなくなっちゃってるから、いろいろかわいそうなことになってしまってるんです。
No title
物あつかいしてないつもりでも
赤ちゃんは小さいからいつのまにか そうしている場面があったかも。
あー やっぱ ためになるなあ
ありがとうございます
みずきママさん
赤ちゃんに対してだけでなく、こども時代を通して関わってくることなので
これからちょっと意識のはしっこに置いとくだけで違ってくると思いますよ。
No title
興味津々な内容ばかりで片っ端から読んでましたが
1日じゃ読みきれない。。。
保育士さんだけあってどの記事もとっても説得力があります。
これから度々遊びに来て勉強させて頂きます♪
以前育児書を何冊も読みあさっていたことがあり、
そこにも
「子供を一人の人間として扱う」
ことが書かれていました。
その時はなるほど~とわかったつもりでも、
いざ子育てしていると出来ていない気がします。。。
ブログを読ませて頂いて、そうだった!!と思い出しました。
このブログ多くの人に読んでもらいたいなぁ~。
そしたら良い親子関係の家庭が増えそうです。
べっちさん、訪問ありがとう
> 興味津々な内容ばかりで片っ端から読んでましたが
> 1日じゃ読みきれない。。。
> 保育士さんだけあってどの記事もとっても説得力があります。
> これから度々遊びに来て勉強させて頂きます♪
こんな字ばっかりのブログ読んでいただいて本当にありがとうございます。
> 以前育児書を何冊も読みあさっていたことがあり、
> そこにも
> 「子供を一人の人間として扱う」
> ことが書かれていました。
> その時はなるほど~とわかったつもりでも、
> いざ子育てしていると出来ていない気がします。。。
> ブログを読ませて頂いて、そうだった!!と思い出しました。
たしかに育児書とか読んでその気になっても、いざ子育てに面と向かうと自分の持っているものが出てしまってなかなか考えた通りにはいかないんですよね~。
でも、できることからちょっとづつやればいいんだと思うな。
No title
あれも これも 参考にさせていただきます。
今日は 朝から パパと二人で
食事時 おもちゃ手放し 大作戦! でした。
朝は 少し 泣きましたが。 ぬいぐるみなんかも 活用しつつ
「みんなもご飯食べてるよ~」 「ちひろがご飯食べてから遊ぶって~」
などや 教えていただいた事も きちんと 話してみました。
なんと 最後まで きちんと 食べてくれました~。\(^o^)/
最後まで椅子に座って食べてくれる事はありますが。
泣いてしまったら 出来ませんでした。
夜も おもちゃ 少しだけ 渋りましたが ちゃんと離して食べてくれました。
やはり きちんと 話せば 子供は わかってくれます!!
これを 続けていきます!
ほんとにありがとうございました!
ちっぴ~さん よかったね~
>
> やはり きちんと 話せば 子供は わかってくれます!!
>
> これを 続けていきます!
どういたしまして。
しかし、すぐ出来ちゃうなんてすごいね、元々そういう力が育ってたんだよ。
よかったよかった。
でも、外での食事とかで例外を作っちゃうとまた戻ってしまうこともあるから、そのまま「良い癖」にしちゃうといいよ。
食事が座ってできるって実はとっても大事なこと、こういうことがひとつひとつできるようになると、いろんなところで力を発揮していけると思うよ。
はじめまして♪
保育士おとーちゃん さんのブログを読ませていただいて
これからの子育てに参考になることがたくさんあり
とても前向きな気持ちになりました!!
イヤイヤ期に入ったようなので
その対応の仕方に悩んでいた時期でしたし
トイレトレーニングもそろそろかな・・・?という時期です。
これからも何度もお邪魔させていただくことになりそうです^^;
また来ます♪
milk caramelさんはじめまして
> 保育士おとーちゃん さんのブログを読ませていただいて
> これからの子育てに参考になることがたくさんあり
> とても前向きな気持ちになりました!!
こちらこそありがとうございます。
これからもよろしくおねがいします。
> イヤイヤ期に入ったようなので
> その対応の仕方に悩んでいた時期でしたし
> トイレトレーニングもそろそろかな・・・?という時期です。
なるほど、そんな時期なんですね~。
大変なこともあるけど、いろいろ親のことを気遣ってくれる姿なんかもでてきて可愛さMAXの時期でもありますからね~。のんびり楽しんでくださいね。
成長が楽しみです、また遊びにいきますね。
コメントを辿ってきました^^
さっそくお伺いして、ブログを拝見していたのですが、いい情報がたくさん!食い入るように過去に遡りながら読ませていただきました。
なるほど、と納得することや、参考にしたいことがたくさん・・・。
今晩にでもうちのだんな様にも読ませてみよう!なんて思ってます^^
またお伺いして、参考にさせていただきたいと思ってますので、よろしくお願いいたします!
マロンさん
マロンさんいらっしゃい。どういたしまして。
> さっそくお伺いして、ブログを拝見していたのですが、いい情報がたくさん!食い入るように過去に遡りながら読ませていただきました。
> なるほど、と納得することや、参考にしたいことがたくさん・・・。
> 今晩にでもうちのだんな様にも読ませてみよう!なんて思ってます^^
> またお伺いして、参考にさせていただきたいと思ってますので、よろしくお願いいたします!
ありがとうございます。
これから子育て本番ですものね、無理しないで楽しんでね。
だんな様といえば、着物なかなかにあってましたよ~。
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僕はNPOのキャンプスタッフやってますが、
ベテランスタッフほど小さな声で班をまとめます。
声かけがうまいんです。
子ども達をやる気にさせる点で。
そこにはひとりの人間として、
挑戦する気持ちを高めるスタンスやかかわりがあるんですよね。
まさに保育士おとーちゃんの言う視点とまったく一緒。
でもこれって、理屈じゃなく、ハート(価値観)の部分だから
長年で培われたものを変えていくのって難しいですよね。
相当の努力と練習がいるかも。
でも、そこに気持ちと労力を割くのが育児だと思うんですよ。
今日も元気をもらいました。
いつもありがとう!