クラス運営 厳しくするべきか、やさしくするべきなのか? - 2014.12.01 Mon
いつも勉強させて頂いてます!
以前も質問させて頂いたことがあるのですが、幼稚園教諭をしている、一児の母です。
育休明けで、4月から復帰して、4歳児年少を担任しています。
育休時代から、おとーちゃんのブログに出会い、もうすぐ3歳になる息子は多少甘えん坊のお母さん大好きっ子ですが、可愛くて可愛くてたまらないほど、素直で良い子に育ってくれています。
たくさん愛情とスキンシップをかけて、叱ることもほとんどなく、話をするとしっかり聞いて理解してくれます。
悩んでいるのは担任しているクラスのことなのですが…
子育てと同じように、たくさんの愛情とスキンシップを心がけ、良くない行動も叱るよりは話を聞き、一緒に考える、ということを心がけてきました。
しかし、園児たちは先生大好きにはなりましたが、男の子は特に、スキあらばふざけたり、まとまりにくいクラスになっているように感じます。
他の先生方にも、メリハリをつけたらとか(もっと厳しく叱るとか…)言われたりもして、仕方なく、二学期は私も叱って、今すべきことを伝えるようになりました。
やはり、子育てとは違って、教育現場では叱るしか手段がない場合もあるのでしょうか…。
家庭で叱られ慣れて4年過ごしてきた子たちには、優しい先生というのは少しなめられてしまったりするのでしょうか。。
色んな育ちをしてきたであろう一人でも多くの子に、自己肯定感を持って欲しくて、出来るなら話をすることで変わって欲しい、叱らなくても分かるようになって欲しいと思って、本当に毎日毎日、一生懸命話をして頑張ってきました。
ですが、乱暴なところもあったり、話を聞く時に聞けなかったり、なべなべそこぬけの遊びでもうまく出来なくて負傷者が出るくらいで…
幼稚園で初めて友達が出来た、という子も多いので、経験不足もあるとは思いますが、4月から本当に苦労し続けています。。
クラス担任というのは、厳しくあるべきなのでしょうか?
甘やかさない、毅然とした態度、などは気をつけているつもりなのですが。
厳しい先生だと、子どもたちとの心の距離が遠いように感じるので、出来れば私は優しくあたたかい先生でいたいのですが、それではクラス運営は難しいのでしょうか。。
長くなりましたが、ご意見聞かせて頂けると嬉しいです。
どういう姿勢でクラスを運営していくかということですが、これは相手のあることでもあり、どういうものが一番よいと言えるものでもありません。
このテーマについては、すでに
『子供になめられる Vol.3 支配がもたらす自己肯定感の欠如』
こちらでも関連したことを述べています。
クラスの子供がまとまらないというこの問題ですが、最近とくに多くなっていることを耳にします。それには、いろいろな原因があることでしょう。
対応としても、厳しく関わっていけばいいケースもあれば、厳しくしたところで子供の成長には寄与しないケース、さらにはむしろ悪化させてしまうケースというものだってあります。
では、「厳しく関わっていいケース」というのはどんなものでしょう?
それは例えば、すでにある程度の大人への信頼感や、自分に対する肯定感が形成されており、その基礎に家庭で大事にされているという満たされた気持ちや、そこからくる安定した情緒などが、それなりにでもいいから持てている子供たちであるという場合です。
そのような、ある程度の家庭外での生活や、集団での行動の前提となる準備段階は持てているのだけど、それまでの経験不足や幼さ、家庭での過保護などにより、保育園や幼稚園といった子供にとっての外の世界(家庭外の社会)での適応的な行動というものがまだとれない子供がいます。
このような子供であれば、子供が自発的に自立を意識する家庭外の社会という場で、そこの人間関係で関わる大人である幼稚園の先生や保育士から、ある程度の「〇〇するべき」という強い関わりや厳しい関わりを受けても、自立心を伸ばしたり、そこでの適応的な行動というのを身につけていくことは、そう無理なくできることでしょう。
つぎに、「厳しく関わるだけでは適切ではないケース」をみていきます。
・大人への信頼感が薄かったり欠如している子供。
・受容不足などから気持ちに余裕のない子供。
・情緒が安定できていない子供。
・愛着や母子関係に問題がある子供。
・抑圧が大きく蓄積されている子供。(例えば、過保護・過干渉や親からかけられる願望や要求が大きい場合)
・自尊感情が低く、大人の強い関わりがさらに自己肯定感を下げる方へ向かわせてしまうケース
こういった原因があって適応的な行動がとれなくなっている子供であるならば、単に厳しく接するだけではその子供を健全に成長させていってあげることはできない場合もあることでしょう。
こういう子供に、その不適応な行動を大人が責めて、そこに厳しく接していくと余計にその行動を助長させてしまったり、その場では抑えてもそれ以外の場(厳しくされない場)ではさらにエスカレートした姿を見せたりということもあります。
これでは、子供を適切に成長させたことになりません。
ゆえに、厳しさだけでは万全ではないわけです。
例えばの話、ある子供の母親がその子への関心が薄く、子供の情緒が安定していないとします。
このような場合、その子供は大人への信頼関係というものがあまり形成されていません。
また、自分を大切にしてもらいたいという強い欲求不満を抱えているので、集団での協調した行動などをとる余裕がありません。さらにそういう子は他者への攻撃性が高いです。
自分の感情のコントロールも弱いことが多いです。すぐかっとなったり、激した感情を抑える力が弱いです。
この子に対して、厳しさ一辺倒の関わりをした場合、この子は大人への信頼感をさらに下げ、自分自身を大切にされているという自己肯定感も下げていくことになるでしょう。
それは結局のところ、それらの問題行動を増やしてしまう方に作用します。
しかし、悲しいかなこの子供は、大人が厳しい関わりをしなければならないことをたくさんします。
それゆえに、この子へのアプローチはことが起こってからでは遅いのです。
叱られるようなことをしてしまう以前のところで、その子の自己肯定感を高めたり、大人との信頼関係を高めるようなアプローチに重点を置かなければならないということです。
それにより、あとからくる(どうしても必要になってしまう)「厳しさ」とバランスをとっていくことが大切でしょう。
またほかにも、環境由来の落ち着きのなさというものもあります。
それは例えば、強い刺激に慣れきってしまったような子供です。
最近では1~2歳の頃から携帯ゲーム機などを与えられて多くの時間をそれをして過ごし、そのような刺激にさらされてしまっている子供も少なくありません。
そういう子供は、集団や外の世界での「するべき行動」をとることが困難になってしまっている場合があります。
このような子供の場合、厳しい態度をとるだけではその求められる行動ができない場合もあるのを感じます。
そのあたりは他の要因もあいまって、厳しくすることで身につけていける子もいれば、そうでない子もありまちまちです。
また、この刺激の関連で、個人としては適応的な行動がとれるが、集団になり他者からの影響があるとそれができなくなってしまう子が増えているということを感じます。
これらの子が適応的な行動がとれない「予備軍」となっています。
先ほどの例であげたような、大人への信頼感が低かったりなどの個別的な理由から適応的な行動がとれない子がいると、それに影響されてこの「予備軍」の子供までがそれに追随してしまうケースです。
>男の子は特に、スキあらばふざけたり、まとまりにくいクラスになっているように感じます。
相手のあることなので一概には言えませんが、そのような子供には興味や関心を高めさせることで、まとめていくという方法があります。
とりあえずのその子たちの関心が低くてまとまらない局面はおいといて、それ以前の普段からなにかその子たちが関心を持ちそうなことや、楽しく取り組みそうなものをやらせたり、役割を持たせたりすることで、物事に注力する習慣などを伸ばしていき、そこからだんだんと「すべきこと」にも取り組めるようにしていくというものです。
>出来るなら話をすることで変わって欲しい、叱らなくても分かるようになって欲しいと思って、本当に毎日毎日、一生懸命話をして頑張ってきました。
この点ですが、「できない子」へのアプローチを強化するのではなく、集団を強化することに着目して、むしろ「できる子」を伸ばしていくことで、結果的に子供同士での関わり、そこでの成長を期待するという方法があります。
それは例えば、モノの取り合いや、ケンカの仲裁といったことを、大人がなんでもしきってしまうのではなく、子供同士でそれをできるように育てていくというアプローチです。
集団の母体が育ってくれば、大人が介入するところを減らしていけます。
大人が「厳しい関わり」を旨として、仲裁や叱ったり、言い聞かせたり、理屈を説いたりということを常としていると、子供同士での問題解決をしようという力は育っていきません。
極端な話、大人はできるだけ介入しない方が良いのです。
なので、問題が起こった時の対応ばかりに着目してそれを悩むのではなく、それ以前の土台をちょっとずつ固めていってしまいます。
それをしたところで、大人が強い姿勢を持ってのぞまなければならない機会というものがまったくなくなるわけでもないでしょう。
そのときはそのときです。
でも、最初から大人が子供の行動を抑えつける存在であらねばならないという場面は減らしていけることと思います。
追記
最近では、叱ることで言うことを聞く子であるならば、それはまだましな方と言えるのかもしれません。
大人が真剣に叱っても、それをあざ笑うような態度をとったり、大人に叱られたり怒られたりしてもまったく良い方にも悪い方にすら心が動かないという子供も多く見られるようになってきました。
そういったケースは問題の根っこがとても深いところにあるので、対応がとても難しいのを感じます。
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● COMMENT ●
すきあらば・・・
ありがとうございます!
過去記事からゆっくり読み進めていたもので、今まで記事の方に返信して頂いていたとは気付きませんでした、スミマセン!
確かに、割と教育熱心で専業主婦で、子育てにも比較的余裕がある家庭が多く、愛情基盤はしっかりしている子が多いです。
少子化と核家族化の影響か、経験不足だったり過保護だったりもします。
おとーちゃんさんがおっしゃるように、最初のうちに厳しく適応的な行動を身に付けさせてあげること可能だったかもしれません。
一方で、お見立ての通り、母親との関係から、情緒不安定で攻撃的、衝動的な子がいたり、ゲーム等の遊びが主で、刺激に慣れてしまい、気力や意欲の低い子たちもいます。
おっしゃって下さった通り、厳しくするよりもそういう子たちへのアプローチや関係作りばかり頑張ってしまい、他の子も引きずられるようになってしまったのかもしれません。
集団の強化、なるほどです!
出来る子にあまり目を向けられていなかったんでしょうね。。反省です。
おとーちゃんさんの言葉を胸に、また頑張ります!!
お礼が遅くなりましたが、お忙しい中本当にありがとうございました!
本も買いますね〜〜(*^^*)また期待しています!
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すきあらば悪戯をする男の子・・・まさにうちの子だわと思ってコメントです。
聞き流してくださってけっこうなんですが
うちの子も(来年1月で2歳)ママの顔見て確認して目の前で悪戯をします。
悪戯といっても、全然かわいいものなんですが
きっと保育園でも同じなんだろうなと思ってます^^;
けど、もう・・・なんというか・・・
かわいくてかわいくてしかたがないんです。
ブログを読むと、ますます息子がかわいくてしかたなくて
1歳という特別な時期がもう少しで終わってしまうし
1分1秒も無駄にしたくない!と思いながら過ごしてます。
いやいや期もしっかりいやいや期です。
今日なんて大好きな新幹線までイヤイヤと言ってました(笑)
けど、そのいやいやすらかわいいのです。
ネットでいやいや期をひくと”大変”とか”かわいくない”とか
マイナスなことしかでてこなくて・・・
とにかく、まぁいやいやは激しいのですが
そのいやいやすらかわいいすぎて、困ってます。
いやいやすらかわいいなんて、むしろ向き合えてないんじゃないかと
不安になります。
かわいすぎてどんなに大変でもイライラすることもなく
泣いてもわめいても、もちろん叱りますがメリハリをつけて叱るくらいです。
私がイライラしないかわりに、自由になりすぎてないか・・・
うまくいえませんが、心配になります。
とにかく、可愛いすぎて困ってます・・・。
怒れないとは全然違うのですが・・・。
ブログも参考にしても食育にも力を入れていて
今では好き嫌いなく、春菊などの葉物も
調理次第ではしっかり食べます。
おもちゃんも電池式のは与えずレゴや絵本を中心にしてます。
テレビも基本つけませんが、大好きな新幹線のDVDはたまに見せます。もちろんスマホなんてもってのほか。
その新幹線すら今日は嫌だったらしいですが笑
いや、本当に1歳万歳ですね。生まれてくれて感謝です。
こんなかわいい生き物なかなかいないですよね。
すみません、長々と。聞き流してくださいませ笑
この貴重な息子との時間を、私も思う存分楽しんでいこうと思います。