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2023-03

「かわいい子に育てる」 vol.5  子供自身を伸ばす - 2014.12.05 Fri

支配や管理で子供の姿を大人の思い通りにするのではなく、「子供自身を伸ばす」というのはどのようにすればいいのでしょうか?









僕はこの「子供自身を伸ばす」ということを伝えるときに、食事中のコップのお話をしています。



〇コップのお話
食事をしているとき、子供はしばしば手やヒジでコップをひっかけて倒してしまうことがあります。

大人はそうならないようにと、コップを子供から遠いい位置へ置いたり、ぶつからない位置へと動かしてしまいます。
多くの人がそういう対応をしていたり、したことがあるのではないかと思います。


それが必ずしも間違っているわけではありませんが、これは「コップを倒さない」という結果を大人が作り出してしまっているだけで、子供自身に「コップを倒さないように気をつける」といった成長を得させているわけではありません。

これは「子供自身が伸びている」というわけではないのです。
ここに大人の対応ひとつを変えるだけで、「子供自身を伸ばす」関わりをすることができます。


子供という相手があるわけですから、その子の年齢や発達段階によっても対応がちがってきますが、僕は例えばこのように対応しています。


1~2歳未満くらいの子供が、コップにぶつけそうで危なっかしかったら、
「そこにコップがあるとぶつけて倒してしまいそうだから、ここに置いておくね」と一言断ってコップを動かします。

これはまあ一頃言葉をかけている点が違うだけで、上に挙げた多くの人がしてしまっているケースとそう変わりませんね。
この段階でしたら、食べることに集中させることのほうが大事なことなので、コップのことをあまり気にかけさせなくてもいいかと思うからです。
発達段階が進んでいる子であれば、この年齢でも以下の対応でもいいでしょう。


もう少し年齢や発達段階が上がって2~3歳くらいの子供に対してだったら、
「コップがそこだとぶつけて倒してしまいそうだから、ここに置くといいよ」と適切な場所を指で示して、子供自身に場所を置き直させてみます。


さらに年齢・発達段階が上がって、なおかつ上のような自分で置き直させたりという経験を積んできた子に対してであれば、
「ヒジでコップを引っかけそうですよ」とだけ声をかけて自分で考えさせてみます。

そういう経験を積み重ねてきた子であれば、「そこ、気をつけて」と簡単な言葉と目配せで、自分で直すようにもなります。

それがもっと慣れてくると、大人の表情や目配せだけで気がつくようになります。

これらの経験がしっかりと蓄積されれば、最終的には大人にうながされたり、指摘されずとも、自分で考えて子供自身が気をつけて倒さないようにするという「育ち」を持つことになります。




大人が、問題や失敗の起こらないようにしてしまうことは簡単です。

ときに、うっかり倒したらやけどしてしまうような熱い飲み物だったりした場合はそういうことも必要でしょう。

しかし、子供の「育ち」を考えたとき、子供自身の力として獲得させる方向で関わる意識がないと、子供の育ちはほとんど進歩せずとどまったままともなりかねません。



では、この「子供自身を伸ばす」という視点で前回のところで例にあげた、お店で騒がしくしてしまって大人が「うるさいっ!」と制止した場面をみてみましょう。


「ここはお店だから騒いでは困りますよ」
「周りを見て下さい。ほかのお客さんがいるのだから大きな声を出したら迷惑になります」
「ここは家の中とは違いますよ。考えて下さい」

といったアプローチをすることで、子供に自分で気づき・考え、行動を律する力をつけて、伸ばしていく積み重ねをすることができます。
ただちにそれが達成されるわけではないかもしれません、でも小さくとも積み重ねをしていくことで、だんだんと子供自身の力として身につけていくことができるでしょう。



子供の中には、気持ちに十分な余裕があり、察しのいい子であれば、よしんば「うるさいっ!」といった関わりをしたとしても、精神的に抑圧されることもなく自分で、「大きい声を出して周りに迷惑をかけたから、叱られたのだ」というように理解し、どういった行動をとればいいかを自分から理解し身につけられる子もいることでしょう。

しかし、それは発達段階が低いほど難しいことだし、そのような子供であっても支配的に関わるのではなく「子供自身を伸ばす」アプローチで身につけられるのであれば、なにも支配的に関わる必要もありません。


逆に、前提としての受容が足りていなくて気持ちに余裕がなかったり、それまでに大人の「いいなり」などが積み重ねられていて、わがままな行動が常態となってしまっているのような子供の場合では、自分で気づかせ、考えさせる「子供自身を伸ばす」というアプローチをしたとしても、ただちには響かないという子もいることでしょう。

これはそのときのアプローチ以前の問題があるので、そちらについての配慮が別に必要になることです。



このような「子供自身を伸ばす」という関わり方に気がつかず、大人が正しい結果だけを子供に出させるようなことが、知らず知らず子育てのなかでたくさんの当たり前となってしまっています。

大人が子供を支配したり、管理することで、正しいとされる行動をとらせてしまうことは、しばしば子供自身の「経験」を大きく奪ってしまうのです。

それでは子供は自分から学ぶことができずに、いつまでたっても大人から抑えつけられたり、規制されるような行動ばかりをとることになりかねません。

人によっては、脅したり、子供の気を惹くものでとりあえず問題行動がでないようにとどめおくような対応をしたり、お菓子などで釣ったり、または「いいなり」になることで子供の気になる行動を小さくしようとしたりという、後ろ向きの関わりになってしまいます。

そのようにならないためにも、子供に適切な経験を持たせ、子供自身の力として伸ばしていってあげることが大切なのです。


こういった子供の力は、その場だけのものではないのです。
子供がひとつひとつの行動を自分で気づいたり考えたりすることが、精神的な自立をうながしたり、その子自身の社会性などにも影響を与え、全般的な成長を押し上げていきます。

ですから、その場その場を大人の力で「正しい姿」を作り出すだけでは、子供の大きな成長にはつながりません。
子供自身にさまざまなことを経験し獲得させるのが、「子供自身を伸ばす」ということなのです。


次に、そのためのさらに具体的な関わり方を述べていきます。
つづく。
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● COMMENT ●

このように文章で読むととてもよく分かります。その通りだなぁと思います。
上の子が赤ちゃんの頃からずっと2年半ほどおとーちゃんのブログを読み続けてとても共感し、また考えさせられています。

それなのに!実生活ではなんとその通りに実践出来ていないことか…。日々2歳と1歳の娘に口うるさく抑圧的な指示ばかりしているような気がしています。特に上の子はひねくれた態度を取ったりすることが増え(年齢的なものも多少あるでしょうが)私のガミガミで子供たちの素直さを奪ってしまっている気がしてなりません。

具体的なお話の続き、楽しみにしてます。

その通りだと実感します。

いつも記事をありがとうございます。
先回りやら管理やら、こうして書いてくださると実際やっちゃってるなーと実感します。
具体的に考えさせる方法を書いてくださっているので、より深く理解できました。

子供はいま4歳ですが、2歳あたりはこちらのブログを拝見していたにもかかわらず私の対応がひどいものだったので(まさに威圧と管理)どんどんひねくれていったことを思い出します。
いまは園に通っていることで私に余裕が生まれたこと、娘の会話力が上がったことで、おとーちゃんが教えてくださる内容が実践できているので本当に素敵な子に成長してくれていると思います。

自己肯定感を高めてあげたいのに押さえつけるしかないと思っていたような気がします。そしてそれが本当に辛かった!
今後も記事を楽しみにしております。

具体的な関わり方楽しみにしてます

大人の、というか、私のその場限りの対応ではダメなのだと、実感しました。

自分の行動を見なおしてみると、余裕があれば、やさしく「◯◯だから◯◯しようね」と言ったり、余裕がなくなってくると「◯◯しなさい!」と怒鳴ってしまったり、その時々で対応がまちまちです。
(夫はというとまた極端で、私よりも威圧的に怒鳴りつけるか、これもまた反対に物で釣ろうとすることが多いです。)

子供はというと、親のよくない対応もありますが、一緒に楽しむことも多いためか、素直にかわいく育っているとは思います。

ただ現在5才で、だんだんと何度言っても言うことを聞かなかったりすることもあり、余計こちらがイライラしてしまい怒鳴ることも多くなってきました。

夫にはたまにですが、私のやり方はあまやかし過ぎで子供がワガママになっているからもっと厳しくすべきだ、と言われることがあります。
厳しくしてもそれは一時的な解決にしかならない、と答えるのですが、では今の対応でよいのかというと自信を持って答えることができずに、やはり迷いがあるのだなーと自分でも思います。

子供自身を伸ばすにはどう接したらよいか、続きの記事とても楽しみにしています。

楽しみにしてます

次の記事も楽しみにしています。

書籍も待ち遠しいです!

何よりも主人に読ませたくて。
育児に関心はあるのですが、ブログ記事を読まない人なので、おとーちゃんの記事をかいつまんで、話をしています。

書籍というまとまった形になると主人も読めると思うので。
主人曰わく、「電子書籍もでれば通勤中に読めていいなあ」とのこと。
あくまで希望ですが…。

本を出すというのは大変な作業と思います。お身体ご自愛ください。

保育園にて

ついに、アマゾンで予約販売がでましたね!!
さっそくポチリました。楽しみにしています!

保育士試験を独学で合格し、保育園の1歳児クラスで働いています。
静かに食事を食べるこども。元気にはきはき挨拶する明るい先生方。
でも、外からは決して見えない中の状況は、「支配と管理」です。
保育の学校では支配や管理を学んでいるのでしょうか?まさか…。
胸が痛くなる毎日です。私はこどもたちの心のオアシスになるべく、奮闘しています。
おとーちゃんの書籍が「ちいさいこどもを育てる保護者向け」であろうとおもいますが、おとーちゃんの経験や理念が集団保育にも生かされますよう、集団向けの保育書もぜひご執筆いただきたいと思います。
1歳児の集団を、あたたかさと導きのなかで、支配・管理なしで、保育するのは、どうすればいいのか。
おとーちゃんの保育園ができればそこで働かせてくださいね。

本、でたのですか!?

こんにちは!
横ですみません、こたつ猫さんのコメントを見てAmazonをチェックすると、確かに予約販売になっていましたが、そちらで間違いないのでしょうか?

おとーちゃんのブログで予約開始など何も告知されていなかったので(私が見逃していただけだったらすみません)、少し不安で・・・。Amazonは手続きさえすれば、だれでも販売できるので、おとーちゃんを装った詐欺だったらこわいなあと。
※もちろんこたつ猫さんを疑っているわけではありませんよ!

もし、おとーちゃんのものなら早速購入したいので、できればおとーちゃんのブログからリンクなどで誘導していただけると嬉しいです!

忙しいのにすみません!

予約販売の本は違う気がします。

こんにちは。

Amazonを私もみてみましたが、経歴で違う気がしました。

おとーちゃんが予告されるはずだと私も思うので、予約販売のをぽちっとするのは待ってみてはいかがでしょうか。

何度もすみません(汗)

高齢新米ママさん、ありがとうございます!

しかし今見たら楽天ブックスなどいろんなサイトで予約販売されていました(汗)
Amazonも、マーケットプレイス(個人や他の店)出品ではなくAmazon直販売でしたので、本物かもしれません(汗汗)

お騒がせしてすみません!

しかも、てんぱって先程違う記事に本に関する再コメントしてしまいました(T_T)本当すみません(T_T)(T_T)

子育てでもよくテンパるわたしです(T_T)笑

しかし、やはり念のため告知をしていただければ嬉しいです。お忙しいのに本当すみません(T_T)



私も再度確認してみました。

こんにちは。
確かに、これかなというのが見つかりました。
でも、やっぱり、告知を待つのが一番だと私も思います。

タイムリーな記事でした。ありがとうございます。

いつもブログを読んで勉強させて頂いています。
今回の記事が今の自分にとってもぴったりだったので、久しぶりにコメントさせて頂きます。

以前海外でのバイリンガル教育について相談させて頂き、その節は丁寧なお返事ありがとうございました。
娘は2歳8ヶ月になる1月から週に3日保育園に通わせる事にしました。
おとーちゃんのブログを参考に受容はしてきているつもりですし
もちろんフォローは必要だとは思いますが、子供の力を信じて始めることにしました。

最近、オムツを外す事を真剣に考え始めてトイレに誘ったりしてるのですがなかなか上手くいかず
おとーちゃんが排泄の自立で書かれているように
私の過保護過干渉による全般的な経験不足による幼さも理由の一つかと考えていました。
保育園に通わせようと思ったのも英語環境のみならずそういった面での成長も期待していたのかな、と。。。
でも今回の記事を読んで目を覚まさせられました。
結局は一番長く時間を過ごす親がそういう姿勢を持って接しないとだめですね。
「生きる力」を身につけて自分で考えて自分で人生を切り開いて行って欲しいという私の娘への願いは
今の私の娘への接し方で大きく左右されるのだと改めて気を引き締めました。

具体的なお話、とても分かりやすいです。ありがとうございます。
何事も自ら経験しなければ身に付かない、と頭では分かっていながら
先回りして(親自身が)面倒にならないように「管理」してしまっていたと気付かされました。
本当にありがとうございます。
娘の成長度合いに応じて段階を踏んで自分で考え学ぶ状況を経験させてあげたいと思います。

続きの具体的な関わり方の記事も楽しみにしております。
書籍も実家に送って転送してもらうつもりです♫

ブログでの相談を休止なさったのは残念ですが
今回の書籍化やワークショップをきっかけに
おとーちゃんの考える子育て理論がより広められる活動にシフトなさる事で
ひとりでも多くの子供が心身共に健やかに育つことを願っております。


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