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2023-05

パンツが濡れることで排泄の自立が進むのか? - 2014.12.19 Fri

(現在、子育て相談は休止中です。新たにコメントされてもご返信差し上げることができません)



現在更新中なのが、ワークショップ第一回の要約なのですが、現行のワークショップはすでに第四回まで進んでいます。

そのワークショップ第四回が「排泄の自立について」でした。

その中で、こんな質問が出ました。








 「おしっこが漏れてしまったときに、パンツが濡れることで出たことを自覚し、それで排泄の自立が進むとよく言われますが、それはどうなのでしょう?」



このことは、世間一般では「常識」「当たり前」の知識として知られていることだと思います。
トレーニングパンツなんかは、これを前提として存在していると言っても過言ではないでしょう。


もはや誰しもが当然のこととして受け入れているこのことですが、僕はこれについてもろ手を挙げて賛成できかねます。
むしろ、眉唾ものではないかとすら思っています。



「紙おむつをしていると、出た水分が吸収されて子供は濡れたことを自分で気づかない。
しかし、布パンツやトレーニングパンツ、布おむつなどだと、子供もおしっこが出た際に濡れることを感知するので、それによって排泄を自覚し、そこからトイレでする方へと意識が向かう」

という考え方です。


しかし、これまで多くの子供を見てきた経験からすると、「本当にそうかな?」と思うのです。


確かに、そういうことがないわけではないでしょう。
また、おむつからパンツへの移行期において、そのようなジャーッと漏れてしまう経験をすることが、子供の意識をトイレですることへ向けることもあるのは確かです。


しかし、このことそのものが排泄の自立をお膳立てしてくれるような主要な経験になるとは考えにくいのです。
要素としてはあるにしても、それをしたからといって、ことさら排泄の自立が進むというわけではないと思います。



このことを仮に大人に置き換えて考えてみると、明らかにおかしい箇所が一点あることがわかります。


変な話ですが、大人がパンツのままおしっこを漏らしてしまった場合を考えてみて下さい。

もし、大人がそうなった場合、おしっこが出てしまったと知覚するのは、パンツが濡れてからではありません。

それがわかるのは、おしっこが尿道から出てしまった瞬間(排尿感)です。
もしくは、それに先だって「膀胱がいっぱいで漏れそう」という、相当に大きな感覚が続いているはずです。


大人でパンツが濡れたと感じるまで、おしっこが漏れていることに気がつかないというのは、尿意を知らせる神経がなんらかの原因で麻痺していたり、痴呆などが進んでいてさまざまな感覚の機能が不十分である場合などでなければあり得ません。

このことは多くの方が同意することでしょう。




では、ひるがえってもう一度、子供に濡れたことをわからせる経験を重ねることで排泄の自立を推し進める、という考え方を見てみましょう。


その子供が、すでにおしっこがどのくらい溜まっているか知覚する機能や、おしっこが出る感覚を自分でわかるところまで発達が進んでいるのでしたら、このことはそうそう問題はないでしょう。



ですが、この方法が想定しているのは、おしっこが溜まっている感覚や、実際に漏れてしまう瞬間の排尿感が持てていない子も含んでいます。
むしろ、その段階の子供をトイレですることへと向かわせることが目的になっています。


このようなまったくそれらがない子供に、濡れる経験をさせることでトイレへと駆り立てたところで、おしっこに関する知覚が育っていないのであれば、それは意味がないことなのです。

それどころか、おしっこに対しての知覚がないまま、子供が自覚せずに漠然と大人に言われるがままにトイレに行かされたりしていると、排泄についての過去記事で述べたような、溜める経験をすることでおしっこの知覚が進むということが不十分なまま年齢を重ねることになりかねません。



もし、そうなってしまうと、かえっておしっこの排泄の自立が遠のく可能性すらあります。

年齢が上がっても、昼間は大人に促されたり、時間や生活の節目でトイレへ行く習慣がついているために目に見える失敗がないだけで、おしっこが溜まっているという知覚や排尿する感覚は未発達で、夜間は小学生になってもおむつをしている、夜尿が続いている、といったことが起こりかねません。

睡眠中の排尿は子供自身の知覚にすべてが任されているからです。



大切なのは、「とりあえずトイレでおしっこをする」ということではなくて、子供が自覚的に排泄を感知し、自分からトイレへ行くということです。




「ほらほら、おしっこ漏れると大変でしょ。嫌なものでしょ、だったらもっとトイレへ行くことを意識しなさいよ」

というように、ただ濡らすことだけで排泄の自立を推し進めようとする、この「常識」「当たり前」に言われている方法は、かなり無理のあること。
本質を見誤ったことだと思うのです。



おそらくこれは、なにがなんでも早くにおむつを取らなければと考えていた、昔ながらの子育て観が生み出してしまった、誤った考え方なのではないかと僕は思います。




紙おむつ・紙パンツを使っていても、おしっこが溜まってきたという感覚や、おしっこが出てしまったという感覚は、なんの問題もなく感じることができることです。


濡れなければそれがわからないという状態は、まだまだその感覚の発達が不十分であるということを意味しています。
それはまだおむつからパンツへの移行に踏み切っていい段階ではありません。

にもかかわらず、大人がとにかくおむつを取らなければとトイレへ行くことを強いてしまうのは、子供の発達の見極めを早まってしまっているからでしょう。

大人がおむつを外すことに焦ってしまうと、往々にしてこのような、能力が未発達なままでの先取りに駆り立てられてしまいます。


排泄にかかわらず子供の成長は、見た目の結果だけを出せばいいのではなくて、それが本当に子供自身の力として獲得させることが大切です。
そのためには、大人の目に「できる」姿が見えていなくても、子供にじっくりと力を貯めさせる期間というものが必要なこともたくさんあるのです。
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● COMMENT ●

参考になりました

私の母がトイレトレーニングに自信があるらしく(私の娘のほかに9人いる孫達全員のオムツを1歳半健診までに外したのは母なので)娘が1歳になった頃からパンツに移行しろと言われ続けています。拒否し続けていますが(笑)

だからと言ってどのタイミングでどんな風にパンツに移行すればいいのかもわからないままなので、今回の記事もとても参考になりました。

予約済のおとーちゃんの本が待ち遠しく楽しみです!!早く届かないかな〜(笑)

分かります!

うちの3歳の娘も、保育園でオムツのままトイレトレーニングをして、ちょっと遅いですが、2歳10ヶ月で、昼のオムツが取れました。

今だに、保育園にパンツで行っても午睡前にオムツに取り替えるられてしまいますが、オムツを濡らす事はなく、園でも、外でも、オムツをしていても、トイレでオシッコ、ウンチが出来ています。
休日は、1日パンツです。

やはり、機能が発達してくれば、オムツでもパンツでも、おとーちゃんの言うとおり、大丈夫だと思います。

そう思います

とても、仰ることはよく分かります。
まだまだオムツ中な2歳の息子ですが、お風呂で入浴中、オモチャで遊んでる時に突然「しー。出る」と言って湯船から出て、ジッと股間を見つめたあと、ちゃんと出ます。
もう出そうな感じが分かってるようです。
でも、あんまりオムツしててトイトレって聞かないのは、なんでですかね?

パンツへ移行中です

随分前にハミガキについて相談させてもらいました。
我が娘も、今パンツとオムツを併用中です。
毎日娘に選ばせて、履きたい方を履かせています。
パンツにすることで排泄の自立が進む気がするのは、「おしっこが出た」とわかるというよりは、「オムツを履かずにおしっこをすると服が濡れ、床が濡れ、着替えやお掃除が大変」、というのを身を以て体験する点にあるのではないかと思います。
今までは、「おしっこしたいなーでもそのまましちゃおう」っと、オムツにしていたのが、「今はパンツだから、脱いでトイレでしないと服が濡れちゃうー」と。
なので、娘はオムツだとそのまましちゃってる時も多々あるのですが、パンツを履いている時は自らトイレへ行っています。
3歳2ヶ月。周りの子はほとんどパンツの中、母としては焦る気持ちもあり辛く当たった事もありましたが、ようやく光が見えてきた所です。
これからも、おとーちゃんのブログを参考に仲良し母娘を目指してがんばります。
本が届くのを楽しみにしています。

なるほど~

お父ちゃんさん、こんばんは
そうですよね~。大人での例え、納得でした。
娘も2才7ヶ月になり、またトイレでしてみようかな、といった意志が見られるようになりました。
ちょっと前にもあったのですが、まだ機能的に難しいかな~と見送っていたんですよね…。
見極め、って難しいですね。

今日、初めておしっこが自分からできました!!!

おとーちゃんさん、こんにちは!!
3歳0ヶ月の息子(兄弟なしです)のオムツ、待って待って待ちまくりました(*^^*)嬉しい報告です!聞いていただけると嬉しいです!
あるキッカケから2歳半からトイレでウンチができるようになり、
自分の言葉で伝え、トイレでするという一連の流れは確立したように見えていたのですが、おしっこはさっぱり、という状態が約半年間続きました。おとーちゃんさんの排泄のカテゴリーを読み返したりして、おしっこの強要はせず、お着替えなどの他の生活面での自立を促したり、しっかり心が通い合う時間を長く作ったりをコツコツ積み重ねてきました。もちろん、おしっこのことが気にならないわけでは無かったのですが、この気持ちに蓋をして、とにかく、子ども自身の力を貯める時期だと自分に言い聞かせ、待って待って待ちまくりました。親が言ってからだけ出来るのは本当の成長ではないと頭と心に叩き込んで(笑)そして今日、ついに、ついに、ついに初めて自分からトイレでできました!(正確には、プレ幼稚園の先生に自分でおしっこを伝えることができ、トイレでできたそうなので、私はまだ見てないんですが(^^;;)待っててよかった。本当によかったです。子どもが自分の力で成長していく姿を親は色々言わずに待ってあげる、この事を教えてくださったおとーちゃんさん、本当にありがとうございます!!!!!親の焦りの為に子どもの成長を邪魔するところでした。。。本当に感謝しています。。
まだまだ親の前では甘えが出たりすると思うので、排泄の自立が確立するのはもう少し先だと思いますが、今まで通り、受容や共感をコツコツ積み重ねて子どもの自分の力で成長していくのを見守ろうと思います!!

二児の母さん

>でも、あんまりオムツしててトイトレって聞かないのは、なんでですかね?

本当はオムツの状態でも、子供の排尿の知覚を受けて、そこからトイレへ行かせるということは可能なのですが(僕は保育園ではこの期間に重きを置いて取り組んでいました)、そういうことがあまり一般的でないのは、このトイレトレーニングの目的が「排泄の自立」ということよりも「オムツをとる」ことを第一の目標にしていたからではないかと思います。

おむつなし育児について

いつも過去記事にコメントばかりすみません。
しかも趣旨とは少しずれてしまいます。

どこかの過去記事におむつなし育児についての質問があり、おとーちゃんさんは「知らない」とのお答えでした。
私はおむつなし育児を勧める訳ではないです、今、3歳1か月の娘のオムツが取れそうで取れないのですが、こちらで勉強した通り、本人の内面の成長を促してトイレについては本人の意思に完全に任せています。

さて、私がおむつなし育児またはEC(Elimination Communication=排泄コミュニケーション)を知ったのは、現在5歳の息子がまだ3か月で、ひどいおむつかぶれに悩まされていたころです。
紙おむつや市販のおしりふきはかぶれるので使えず布おむつ、うんちがでるとお湯でおしりを洗い、結構な手間でした。
これはあくまで私見なので、いわゆるECとは少し違うかもしれませんが、
産まれたての赤ちゃんは「オムツが濡れて泣く」のではなく、「オムツが濡れる直前に泣く」のです。
ですから、排泄する前にトイレなりオマルなりで排泄さえてあげれば良いのです。

という訳で、3か月の息子をオマルにささげると、オシッコしました!
うちの子天才じゃないか!?と感動し、日に何度もオマルにささげる日々が始まりました。
最初は、気持ちいいね、すっきりしたね、えらいね~と共に喜び合っていたのですが、そのうち、育児日記に「オシッコ10回、ウンチ5回」などど正の字で回数を記録することに喜びを見出してしまい…
オムツかぶれは改善し、成長と共に肌も強くなって紙おむつも使えるようになり、(もともとトイトレはしたくなかったので)なんだかんだで3歳過ぎてパンツマンになりました。

今3歳の長女、4か月の次女ともにECはしていません。
(次女の妊娠中にこちらのブログを知り、現在過去記事を勉強中で、ようやくここまで来ました)
が、先日、義妹の友人が現在1歳半のお子さんをおむつなし育児で育て、完全に排泄が自立している、という話を聞きました。
それを聞いて思ったのは、
たぶんお子さんとの心のパイプがしっかりしているんだな、わたくんやむーちゃんのようなお子さんに育てたんだろうな、ということです。

子供がいろんな良い関わりをもらって満たされている、その様々な良い関わりの一つに「おむつなし育児」があるのだろう、ということです。
EC(Elimination Communication=排泄コミュニケーション)というのも、あくまでトイトレとは違いますよ、コミュニケーションの一環ですよ、という趣旨だったと思います。

排泄の感覚の自覚の無い子にむりやりトレパンはかせてダダ漏れにさせるというのは、おむつなし育児の対極にある、「悪い関わり」だと思います。
昔は1歳でオムツ取れてた、みたいなのには、布おむつの洗濯が面倒だみたいな部分と同時に、「この子今オシッコ出そう」という母親なり周りの大人の知覚があったと思うのです。
まだ片言の子供の言葉が、周りの大人には通じないけど母親にはわかるみたいなもので、(必要さえあれば)「赤ちゃんのオシッコ出そうな感じ」ってなんとなくわかるものです。うまく言葉には出来ませんが。
過去の私のように、それを自己満足にしてしまってはいけないのですが、
本当に子供に目を向けていれば、一緒に遊んだり歌を歌ってあげたりするのと同様に、排泄にも手をかけてあげられるんじゃないか、そんな風に思うのです。
昔(たぶん今の祖父母世代よりもう一つ上の世代)は家事も重労働、子供の数は多いし今ほど子供に手をかけられなかったということはなくて、
むしろ今よりしっかり子供に目を向けて(=受容して)いたんじゃないかと思います。
だからおむつも早くはずれたんじゃないかと。

そういう私も、まだ4か月の次女のこと、しっかりとは見ていないようです。
おむつなし育児はできそうにないけれど、3人の子供たちと太い心のパイプを築いていきたいです。
長々とすみません。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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