「かわいい子に育てる」vol.7 失敗を恐れない - 2014.12.27 Sat
「子供自身を伸ばす」の続きです。
前回は子供自身を伸ばすための
◆「見通し」を持たせる
でした。
その続きになります。
◆失敗を恐れない
「ダメ、ダメ」「危ない、危ない」などの過干渉の代表的な繰り返し言葉は、しばしば、子供に失敗をさせないための牽制の言葉として使われています。
例えば、大人の意に反して走ってしまう小さな子に対して、「危ない、危ない」とその行動を規制するためのアプローチとして使います。
ここでの「危ない、危ない」という言葉は危険が迫っている割にはずいぶんと悠長です。
本当に危険ならば「危ないっ!」と大きな声で大人が本気を込めて発されているはずですね。
つまり、この「危ない、危ない」という声がけは、実は危険を伝える言葉としては使われていないわけです。
では、どういう意図で言われているかというと、「その行動はあなたがなんらかの失敗をする可能性があるから、おやめなさいよ」という、あまり拘束力のない「大人の側からの指示」、として結局のところあるわけです。
この「危ない」にしても「ダメ」にしてもそうなのですが、強い言葉を使っているわりには、とてもあいまいなメッセージになっています。
このような関わり方が、普段から多用されている根底には、大人の方に「失敗させてはならない」という「転ばぬ先の杖」意識があるのだろうと思います。
最近あまり使われない言葉で言えば「老婆心」というものになるでしょうか。
子供に、この先回りをして失敗をさせまいとする行動を取る人は少なくありません。
僕は子供自身を伸ばすためには、大人があらかじめ失敗の芽を摘んでいくようなアプローチというのは好ましくないと感じています。
確かに、失敗の可能性のあることを最初からさせなければ、そのとき子供は失敗をしません。
ですが、それはそのときだけのことで子供自身の力となっているわけではありません。
もちろん、本当に危険なことならば、それをさせないことは大人の役目ではあります。
しかし生活の上の多くのことにまで、大人が子供の「転ばぬ先の杖」になってしまえば、子供は自分でいろいろな経験をしないまま成長していくことになってしまいます。
これでは子供自身が伸びているわけではないので、その根本的な問題が解決したことにはなりません。
小さな子と外出するのに、子供が騒がないようにとおしゃぶりをくわえさせることで解決してしまっていたり、刺激の強いテレビゲームなどでその場を凌いでしまうというような発想も、同様に子供自身を伸ばす経験値を最初から蓄積させる機会を大人が奪ったまま年齢だけが加算されていってしまいます。
1,2歳の子ならば「危ない、危ない」、「ダメ、ダメ」でどうにかなっていたかもしれませんが、その子が4歳、5歳になったときには、もうそれでは抑えきれません。
だから、そのときになってしまうと、強く怒ったり、叱ったりという「支配の関わり」をしたり、大人から見たときの大変な姿が出ないよう、テレビゲームなどで子供をコントロール(管理)する必要が出てきてしまいます。
子供が子供自身としての力をつけられる経験を、大人が適切な関わりによって幼少期から得させてこなかったために、ゆくゆくは子供に強い支配や管理をしなければならなくなってしまうのです。
小さい内から子供が自分で様々なことに取り組み、失敗も成功もするという経験の芽を摘んではならないのです。
そのためには、大人の姿勢として「失敗を恐れない」ということがどうしても必要になってきます。
以前に挙げた、コップを子供が倒してしまわないように大人が黙って置き直してしまうというようなことも、その大人の姿勢の根底には、「失敗をしてはならない」という気持ちや、「子供はどうせできないから」といった子供を見くびった意識があります。
大人に比べれば時間もかかるし、繰り返しが必要だけれども、子供もその発達段階ごとに適切に関われば、大人が思っている以上に様々なことを身につけたり、取り組もうと思うものです。
大人の意識ひとつで、子供のその成長への意欲やモチベーションを奪ってしまうのは大変もったいないことです。
そして、子供は概して大人が決めつけたところまでしか伸びられなくなってしまうものです。
「この子は、きっとこれはできないわね」と決めつけてしまえば、その子の成長はそこが上限となってしまいかねません。
そのラインを超える前に大人が手を出したり、子供が助けを求めてやってもらうことが、その子にとって当たり前になってしまうからです。
それゆえに、そういった大人の態度は「子供自身を伸ばす」という方へは導いてあげることにつながりません。
子供に対して「この子は、きっとこれはできないわね」、こういった姿勢で関わっていると、その子はその行動ができないだけでは収まりません。
さまざまな精神面でもその成長が足踏みしてしまい、「幼い子」となってしまうのを多く見かけます。
大人が子供の「転ばぬ先の杖」になってばかりだと、子供は大人への依存心が高まり、自立へと向かう道筋を見失ってしまい易いです。
今の段階ではできないことかもしれないけれども、子供が取り組もうとしていることならば、できるところまでやらせてみる、壁に当たったり、失敗してみることも子供の大きな経験のひとつです。
「大人の姿勢」、「子供の行動」、「子供の心の発達」
これらは密接な関係を持っていて、子供の成長を形作っていくのです。
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