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2023-03

子育ての「うまくいかない」は、必ずしも「愛情不足」ではない - 2015.02.12 Thu

僕はこれまでにも何度か、子育てを「愛」や「愛情」という言葉ではできるだけ語らないようにしているというお話しをしてきました。









子育てが安定してうまくいっている状態であることと、愛情があるかないかということは、実は確実なことなど何も言えないのです。
逆もまたそうです。
子育てがうまくいっていないから、愛情がないなどということも断定できるものではありません。

子供への愛情はたくさんあるのだけど、子育ての状況が行き詰まり手を上げて虐待状態になってしまっている人もたくさんいます。



別に、子育ての中で「愛情」という言葉を使うことが悪いわけではないでしょう。それを述べる人を責めるつもりもありません。

でも、僕は子育てにおいて使われる「愛情」という言葉によって、傷つく人、自分を苦しめてしまう人がたくさんいることを知っているので、それを使うことにはとても慎重になってしまいます。




僕は、いまの人の子育ての「うまくいかない」は、実際的な関わり方や子供への見方がわからなかったり、先入観によって適切で無いものになってしまっているがゆえに、引き起こされていることが非常に多いのだと感じています。


『支配しなくても子供はまっすぐ育つ vol.4』


つまり、↑こちらの記事で述べたような「ボタンの掛け違え」が起こってしまっているわけです。



子供の育ちは「積み重ね」で出来ています。

子育てがにっちもさっちもいかなくなってしまっている人が、どのようにしようとしているかというと、その状態からなんとか「正しい状態」「理想的な状態」「人に否定的に見られない状態」に持って行こうと考えてしまいます。


でも、本当ににっちもさっちもいかない状態から、いきなり正しい理想的な状態にすることはできないのです。


もし、みなさんがシャツや、コートのボタンを掛け違えたらどうしますか?
当然、掛け間違えたところまで、ひとつひとつ外して戻って、またあらためてボタンを掛け直していきますよね。


子育てがどうにもならないという場所から、「正しい子供の姿」に持って行こうとすることは、子育てを前進させようとすることです。

その子育て前進させて子供に正しい姿を持たせるために、大人はさまざまなアプローチをして子供のいまある姿を改変しようと働きかけます。

具体的には、叱ったり、怒ったり、叩いたり、疎外を用いたり、ということが実際のところ多いでしょう。



でも、本来積み重ねで形作られている「子育て」というものを変えて行くには、遠回りなようだけれども、前進ではなく後戻りをすることが必要なのです。

シャツやコートのボタンの掛け違えを直すとき、それ以外に方法はありませんよね。



「しつけが足りない」「甘やかすからだ」「叩いて教える」
そのように子育てにカンフル剤を打てと主張する人は大変多いです。

なかにはそれで改善し安定化していける子育てもあるのでしょう。

でも、いまの時代の子育ての難しさは、なかなかその方法では解決しなくなっているのだと感じます。



では、どこまでその子育てを戻せばいいのか?

僕は子育ての出発点は、いつでも「受容」だろうと考えています。

受容が足りているならば、それはそれでいいでしょう。
でも、だからといって受容に、受容の追加をしたから悪いということなど少しもありはしません。

ダメ元でもいいから、受容に戻ってみればいいと思います。



受容はたっぷりされているのに、ちっとも子育てがうまくいっていないというようなこともあります。

例えば、過保護や過干渉などで、子供と大人の間の「信頼関係」が低いものになっているときなどはそうです。

こういう人は、そこでの関わり方を見つめ直してみればいいでしょう。

その人にとっては、そこにボタンの掛け違えがあったわけですね。

ですから、そこに戻ってもう一度かけ直していくことで子育ての安定化が図れるはずです。



子供も違うし大人も違う、「子育て」には本当のところモデルケースなどないのです。

子育てがうまくいっていないと、周りと比べて我が子の子育てを劣っていると比較して考えてしまいたくなります。

でも、それは多くの場合苦しめるばかりで、あまりプラスにはなりません。


「自分の子育てはいまこの状態」
そのことを否定することなく、出発点としてみましょう。


その上で、
「今日は昨日よりは子供を怒鳴りつけなかった」
ということがあれば、そこをプラスに考えていきましょう。

世間で言うところの「正しい子育て」「うまい子育て」と自分の状況を比べてしまったら、その状態はいつでもマイナスです。

「あーあ、怒鳴ってはよくないのに、また怒鳴ってしまった。私はなんてひどい親なのだろう」
このように考えていたら、子育てを送ることは大変つらいものになってしまいます。しかもそれは出口の見えないものになります。


人と比べても意味はありません。
それよりも、自分の昨日や過去と比べて、どんな些細な一歩でもそこをプラスに見ることで、本当の意味で子育てを前進させていきましょう。



上の記事のコメントでは、
ご自分のことを、「犯罪者」、「だめな大人」、「悪い大人」と言っている方が何人かおられました。

僕はその記事中で(過去記事も含めても言えますが)、そのように子育てがうまくいっていない人を指して「だめな大人」であるとか「悪い大人」であるとかに類する言葉を使ったことは一度もないはずです。
それは、文脈としても同様です。


でも、自分の子育てに対して自分で「マイナス点」をつけてしまっている人は、もともと自分で自分を責めている気持ちがあるので、僕がうまくいっていない例をあげたときに、それを自分が責められているととってしまうのでしょう。



子供を相手にすることでもっともいいことのひとつが、子供には未来が大きく開けているということです。

なので、間違ったとしても戻ればいいし、人より遅いからといってそれが必ずしもその子供の結果を決めてしまうわけではないのです。

世間の基準ではなく、自分の基準で、戻ってでも少しずつでも進めばいいし、ときには今日一日いいところがなかった、後戻りするばかりだったという日だってあることでしょう。
それでも、子供には未来がありますから、明日でも明後日でもいくらでもそれは取り返しがつくことなのです。


だから、子育てがうまくいっていないとしても、自分を責めることなく、もちろん子供も責めることなく、「出来ない状態のいま」を出発点として、そこから1ミリでも前進したのならば、そこを見て子育てしている自分を褒めてあげて下さい。



「偏差値70の人の偏差値をさらに上げることは大変だけれども、偏差値30の人の偏差値をあげることはたやすい」
などと言われますよね。

なぜなら、偏差値30の人はどこか前の段階でつまづいてしまっているところがあるからです。
そのつまづきに戻って、そこからコツコツとやっていけば、必ず偏差値が伸びるというわけです。






マレフィセントさん

相談は休止中ではありますが、偶然にもちょうど記事にしようとしていた内容とお悩みが近いようだったので。
子育ては一人で全部抱えようとする必要はないのです。
大変なときは人の協力を求めていいのです。
自分一人を悪者にしては自分ばかりが辛くなってしまいます。

自分がどういう状況になってしまっているか、(叩いたり、暴言を吐いたりが悪いとわかっていても止められない、自分自身それがとても辛い、自身の生育歴の中で排除されてきていたのでうまく関われる自信がないなど)
伝えながら、助けを求めてみるのも手です。
もしかすると、子育ての問題としてよりも、ご自身のカウンセリングなどにいってみることがプラスに働くかもしれません。自分の感情が自分でコントロールしきれない状態というのは、大人であってもとても辛いものです。


家族がだめなら、友達、保育園、行政の子育て支援や、児童相談所などなど、本当に役に立つところに出会えるとは限らないかもしれませんが、ダメ元でも当たってみるだけ当たってみるのも無駄ではないかもしれません。
「捨てる神あれば拾う神あり」ということもあります。


また、自分を責めないで、無理をせず、過剰な我慢をせず、ということも大切です。
本文にも書きましたが、自分の「出来ない」ところの否定を重ねるのではなく、いまあるところからスタートして、そこを見ていきましょう。

できるときにくすぐりからはじめてみましょう。自分がその気になれないときは、お父さんにしてもらってもいいでしょう。



>頑張ってよい関わり

目指すのは「頑張って」よい関わりをすることではありません。
自分自身として「無理のない」関わりを続けられることです。
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● COMMENT ●

おとーちゃんさんの言うような子育てを目指そう...という出発点から間違っているのかもしれませんね。
おとーちゃんさんの子育て論やお子さんとの関係があまりに素敵で、そんなふうになりたい!と思ってしまうところがあります。
でも違うんですよね。だって私はおとーちゃんさんではないし、うちの子はにいにでもむーちゃんでもないんですもんね。
「頑張って」おとーちゃんさんみたいにになれるよう目指すのではなく、
私と息子のいい関係を築いていくために、おとーちゃんさんの方法を使う
というのが目指すところでした。
手段と目的がごっちゃになる、よくある話です(^_^;)
減点法という記事が過去にありましたが、子どもの姿だけではなく育児自体も減点法はよくないですね。
おとーちゃんさんを100点とするので、辛くなっちゃいますから(笑)

イライラがどうしても爆発しちゃうことがあるんです。大体月に一回くらい...
この前も爆発して、パパに抱っこされて泣いている息子の姿を見れず、別室で泣きそうになったところで、
いやいや、今私はどうしてもイライラしてしまう時期なんだから、今はパパにしっかり受容してもらおう。私が無理だから、パパでバランスをとればいいんだ。落ち着いたら、またぎゅってしてあげよう。
と思うことができました。
以前までならこんな考え方絶対出来ませんでした。ただ自分を責めて、ダメな親だと泣くばかりでした。
完璧になんてとてもできませんが、少しずつおとーちゃんさんの子育て方法を積み重ねてこれたおかげだと思います。
これからもやっぱり爆発したりよくない関わりをしてしまうことも出てくるとは思いますが、
子どもも私も、進んだり戻ったりしながら積み重ねていきたいと思います。
いい記事をありがとうございました。毎回気付きをもらえて感謝しています。


もしも可能であるならば...
おとーちゃんさん自身の、子育てにおいて大変だった経験、どう乗り越えたか、
具体的なエピソードがあれば、お聞きしてみたいなと思っています。
あんまり大変と思ったことがなかったと最近書かれていた気もしますが(^-^ゞ
何かあれば、ぜひ。リクエストしてみます。
気が向かなければスルーしてください(笑)

イヤイヤ期

はじめてコメントいたします!
最近今月末に2歳になる息子に手を焼いています。
今回の内容に心救われました。
イヤイヤ期でなにするもイヤ!オムツ、歯磨き、着替え、お風呂
外出すれば帰りたくない!チャイルドシートに乗りたくない!
外出恐怖症です。。。

イヤイヤをおとーちゃん流に乗り越えられる時もあれば、我慢できず怒ってしまって反省。。。こうすればよかったかな?もう少し付き合ってあげるべきだったかな?と考え!ダメダメだぁ。と思っていたところ、今回の内容を読んで心が楽になりました!
昨日の自分、最近の自分と比べればいいんですよね!

おとーちゃんのブログを読んでから、息子とのやりとりが楽しいです!まだ言葉を話せませんが、私の言ってることに納得してくれることが多くなってきている気がします。(時間入りますが、その瞬間嬉しく思います)
これからたくさんの共感をして、クッキーの箱をいっぱいにしていきたいと考え思います!

ありがとうございました。

おとーちゃんさんさま、お忙しいのにも関わらずコメントを頂き恐縮しております。
相談は休止中と知りながらもしたのは、何方かに「ひどい人間」だと罵られたかったからです。そうすれば、自分の行動を制止できるかもしれないと期待したからでした。

元々、一つ失敗したり不幸なことが起きると自分を全否定する癖があります。1か10かしかないとよく言われます。

娘とは穏やかに過ごせる時間の方が大半ですが、一度感情的になると‥。
育児云々元より、今日の自分ができたことを認めてゆっくり進んでいけたらと思います。積み重ね、ですね。
戻ったり進んだり、それでいいんですね。完璧じゃなくていいんですね。
心が楽になりました。本当にありがとうございました。








親自身への受容

過去記事でのコメントへの回答で、私が救われた言葉があります。
「子供の中に、小さい頃のあなたがいるって想像してみて」
それは自分の子供を満たすことで、過去の自分も同時に満たして、昇華していくことが出来るといった考えだったと思います。(記憶があいまいなので勘違いだったらすみません)
子供を受容することは親にとって消費ではなく、自分の受容の空白も埋めていけることなのかな、と。それに気付いたとき、支配・制裁型だった私の子育ても、何か変われた部分がありました。
実践的ではないかも知れませんが、とても感動した言葉でした。
こちらの記事で、また救われた気がします。いつもありがとうございます。

こんにちは
「支配しなくても子供はまっすぐに育つ vol.4」
の記事のコメントで自分のことを悪い大人と書いたものです。

お忙しいところ、コメントを読んで頂いてありがとうごさいます。
いつも、より良い子育ての為に熱心に記事を書いてくださっているというのに。感情に任せてコメントしてしまいました。

少しずつ、娘との関わりも良い方向に行っていると信じてます。「子供には未来が大きく開けている」という言葉に救われました。
先輩ママさんからよく、あっという間に大きくなるよと皆さん同じように言われます。
今の娘のかわいさを見逃さないように、娘が笑顔でいられるように、関わっていきたいと思います。
ありがとうございました!

違いをぜひ!

いつも、楽しくブログを拝見させて頂いています。

一つお願いがあります。
受容や尊重と甘やかしの違いについて、書いて頂けませんか……?

職場でも、《受容する・尊重する、と、何でもかんでも子どもの思う通りにするのとは、ちょっと違うのでは……?》とよく話しています。
正直、私自身、その違いを説明するのは難しくて、感覚というか勘でそれを見極めている感じです。

お手すきの時がありましたら、ぜひお願いしたいです。

ゆずさんへ

既読かもしれませんが
以下の記事が参考になりそうですのでご紹介します

受け止めない甘え Vol.1
http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/blog-entry-454.html

相談 親が嫌でなければどこまでも要求を聞いていてもいいのか?
http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/blog-entry-636.html

「いいなり」の構造
http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/blog-entry-292.html

ありがとうございます

先日おとーちゃんさんに、メールで相談にのって頂いた「話すのが大の苦手」な母親です。お礼がしたくメールしました。お忙しいと思いますのでいつか読んでください。
おとーちゃんさん、先日は本当にありがとうございました。
親の自己否定が子供の育ちにいかに、良くないか理解出来ました。
「親の個性を自身が受け入れる方向性」を提案していただいてから方向転換を試みています。
すると府に落ちる情報が集まるようになり、
子育てに関しても自分の間違いに気付けました。
以前よりも少し明確にスタートに立てた気がします。ありがとうございました。
おとーちゃんさん、寒さの折これからもお身体大切にしてくださいね。

 


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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