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2023-06

隠れた貧困 vol.6 - 2015.03.10 Tue

このシリーズも今回で最後です。
なんか気の重くなりそうな内容を長々とすみませんでした。
子育てについて考えていると、こういう問題や、子供たちの生きる社会の平和といったものも無視できないものとなってきてしまうのですよね。


『子宮に沈める』という映画があります。

2010年にあった大阪二児遺棄死亡事件をモデルにしたドキュメンタリータッチの映画です。








まだ印象に残っている人も多いのではないかと思います。
この当時、母親に対してや、訪問したけれども強硬な手段をとらなかった児童相談所の職員に対して、かなりつよい攻撃的な意見がありました。

小さな子供が放置され餓死していったというニュースには、怒りや憤りを感じます。僕もその当時は真っ先にそういった感情にとらわれました。

でも、冷静になって考えれば、水商売や風俗業をしなければならない状況、男性に逃げたり、男性を頼らなければならない状況を生み出したものがあるのではないかと気づくこともできます。

この事件でなくとも、同様に女性が生活のために男性に(不本意であっても)依存しなければならないケースなど、これまでの日本には数え切れないほどあるはずです。



しかし、報道により顕著に取り上げられた部分だけ見れば、なかなかそうはなりませんでした。
やはり母親を責める文脈で取り上げているものが多かったように感じます。

識者の意見でも、包括的な、貧困や母子家庭への援助などを述べる意見はそう多くなく、わりと冷静なものでも、児童相談所の現代での限界について触れている程度だったと記憶しています。



この事件に限らず他の多くの事件に対してでも同様ですが、月日がたってもその事件からの問題意識を持ち続ける人はどのくらいいることでしょうか?

そのとき憤って、怒りをぶつけ、罰が下されて溜飲を下げるだけで満足しているだけでは足りないと僕はと思います。

でも、そういった問題解決のための視点で物事を考えてみましょうといった教育を、義務教育なり高校なりでされた覚えはないので、多くの人がそうであるのも仕方のないことなのかもしれません。



犯罪に対する考え方も、国によってずいぶんと変わってきます。
なかには、犯罪者に対する「罰」という側面を極力切り取って、終始「更正」を旨に報道や、裁判、量刑を行っている国もあります。
そういったところと比べると、日本はまだまだ前近代的な、「罪に対して罰」という意識が強い国であるということがわかります。

一例を挙げますと、少年だけでなく成人に対しても、顔写真や実名や犯罪の詳細を出した報道をしない国があります。
これは、犯罪者に対してもその後の更正による社会復帰を前提としているからです。(また模倣犯を防ぐという意図もあるようです)
そして、当然ながらそのための犯罪防止教育、更正や社会復帰などのシステムにも注意を払って、そもそもの犯罪の少ない社会を目指しています。

このような、考え方の立場に立っている国があることを知ることは、ちょうどいま日本で起こっている議論。「少年であっても重罪を犯したのならば、名前や顔をさらすべきだ」という意見が、現代的な立ち位置よりも、より前近代的な刑罰の概念に近いことを教えてくれます。




さて、こういった状況を改善していくためになにができるでしょうか?といったご質問を頂きました。

僕もこの方面の専門家ではないので、あまり詳しいことはわかりませんが、

ひとつには、今年4月より
『生活困窮者自立支援制度 』というのが実施されます。


これは、これまでの生活相談などよりも、もっと踏み込んだ形で援助することを可能にしているものです。

もし、困っている人がいたら、「こういうものがありますよ」と教えてあげるだけでも助けになるかもしれませんね。
本当に困窮している人たちは、このような情報からも孤立してしまっているからです。


ほかにも、これまでの行政的な社会保障の不備から、実際に困窮している人たちを支援することを目的としたNPO法人などがいくつも活動しています。
これらの活動を援助、支援することも、実際に取れる具体的な手段となるかもしれません。


あとは、基本中の基本ではありますが、選挙で候補者を選ぶ際に貧困問題や社会保障などをきちんと考えている人に投票するということがあります。

選挙になりますと、各政党がマニフェストを出します。
そのなかで貧困対策などを主要な問題と捉えている政党もあります。
そうかと思うと、貧困や、社会保障といった問題の改善には、ただの一行も記載のない政党すらあります。

国民向けのポーズやリップサービスすらしないというのは、存外、政治家も正直なのかとも思いますが、貧困対策などが必要ないと感じる層を主要な票田としているということなのかもしれませんね。


社会の下位層への視点を持たない人であれば、事件や犯罪に対して簡単に「厳罰化」という意見になるのは必然的な流れであることでしょう。


追記 
子供に対してできることとしては、「孤立を作らない」ということがあげられます。
すごいことはできないにしても、挨拶をする間柄の大人がいる、言葉を交わす人がいるといった些細なことが、その子を社会的な側、安全な側につなぎとめてくれるかもしれないからです。

関心、関係を持ってくれる大人がいなくなり孤立してしまうと、その子は社会的な側に居場所を見いだせなくなり、学校などの教育の場からも遠ざかってしまいます。
小さくとも自分に関わりを持ってくれる大人が存在することは、そのような表の社会につなぎ止めてくれる役割をになってくれています。
そういったことが、子供のドロップアウトを防いだり、ドロップアウトをしたとしてもまた戻ってこれる理由のひとつとなるのではと思います。


参考 『福祉が人を殺すときー貧困大国ニッポンで機能しない社会福祉ー』

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● COMMENT ●

良いシリーズでした

このシリーズ、とても良かったです。子育てをしているからこそ、社会のことをもっと考えていかないといけないんですよね。社会に目を向けなくてはいけないんですよね。大きな視点で”子育て”をしていこうと強く決心しました。日本は本当に心配になります。でも、不安だけだった気持ちから一歩前に進むきっかけになりました。たぶん私にもできることはあるはず。。。

この記事の内容についでではないのですが

おとーちゃん教、信者です。まるで宗教のように書いてしまいましたが、いい意味で宗教のようだと感じています。
仏教などでも、お釈迦様のようなカリスマ的存在が、明確な理念をもち、教えの内容は咀嚼されていてわかりやすく受け入れやすい。お釈迦様はいいこと、悪いこと、助言をはっきりと断言し、その内容に自信と責任を持っている。まわりはその教えを学び実行し、一つの組織になっている。教える側と教わる側が一丸となり、高い意識を持って同じ方向を見て目的に向かって精進する。おとーちゃんブログはこんな印象です。子育てに正解はないけど、ある程度のマニュアルや指標がほしい。みんなが求めていた、実例や比喩がわかりやすい参考書です。これからもカリスマおとーちゃんとして、沢山のためになる育児論を発信し続けてください。失礼な表現でしたら、すみません。

まさに

私はシングルマザーですが、今までの人生で社会的弱者と自分のことを思っていなかったし、こうなってみて、世間や社会における自分の立場というか、どうみられているかということを否応なしに感じるようになりました。
鈍感な方ですが、未婚で出産して、直後から、「苦労するよ。」という言葉を未だにですが、言われることがあります。実際、その言葉が本当だなと涙したこともあるし、今も、将来をみても、人からみたら、まさに苦労なんだろうなと思います。
人が足りない。子どもを育てていて、何度思ったことでしょう。とにかく、自分ひとりでは煮詰まってしまうのです。経済的に安定してれば、ある面では安心するでしょう。しかし、それには時間も必要だし、子どもへの気のようなものが、どうしても私にはなくなってしまう気がして。不器用なのかもしれませんが、ゆったりとした気持ちをもって子どもと接したい。でも、パートであっても、心の余裕がなくなるのを感じます。生活保護を考えたことはありませんが、働いても働いても、生活保護の額ほどは稼げません。ずっと、そんな気持ちを抱いてます。だから、人並みに働いてる旦那のいる人が、お金がないって言ってるのがわからない。何を言ってるんだろうと思ってしまいます。シングルマザー、難しいです。変に張り切ることも、かといって、しょぼんというわけではないのですが。

弱者に向けるまなざし

お久しぶりです。
子育てをして感じるのは、日本人の弱者に向けるまなざしの厳しさです。
たとえば、マタニティーマークを不正使用している女性はマタニティーマークを試用している女性の中の1%とかほんとうにごく僅かだと思うのですが、
私は妊娠中にマタニティーマークを使用していて
「そのマークつけると特典があるんだろ?
なんだ、妊娠してたの?不正使用かと思った」
などと言われたりしました。
乳児を連れていて罵声を浴びせられたり、突き飛ばされたこともあります。
今のお母さんはマナーが良くて小さく遠慮している方がほとんどです。
不正に権利を取得したり、マナーの悪いお母さんなんてごく一部だと思うのに、そういう人がほとんどであるかのように「若い母親」を敵視して嫌がらせをする方が多いのです。
これは、生活保護とか障害者の方に向けるまなざしも同様かと思います。
知り合いで車椅子の方がいるのですが、
やはりその方も偽障がい者やごく一部のマナーの悪い障がい者をあげつらってその方はもちろんそうではないのにたくさん健常者に嫌がらせをされたそうです。

実生活でもネットの書き込みを見ても
猜疑心と被害妄想の果てに弱者に嫌がらせをする人ばかりでうんざりします。

ちょっとしたご報告

こんにちはおとーちゃんさま。
以前に何度がご相談させていただいたものです。

この記事とは関係ない内容で申し訳ありませんが、どうしてもおとーちゃんさんにご報告(?)させていただきたいのでコメントさせていただきました。

自分の子育てについて、おとーちゃんさんのブログでたくさんの刺激を受け、子どもに対する向き合い方、今世の中の保育園についての記事など多くのことを勉強させていただきました。おとーちゃんさんから教えていただいた本も読ませていただきました。そんな中で先日から急に夫の転勤が伸びそうだという話が出たことをきっかけに、私自身もう一度保育士として復職したいと思い、就職活動を始めました!

5歳と2歳の子どもがいて、待機児童が多いので、保育園に入園できるかどうかという状況です。休職中だと順位も下のほうだそうで、不安です。個人的に目をつけていた園から突然正規職員で一人空いたと言うお話をいただいて、久しぶりにどきどき興奮したのですが、やはり子どもの園が決まらないと内定は出せないということでした。

小さい子がいる中で復職を目指すって本当に大変だなともう感じていますが、この機会を逃すとまた転勤などでチャンスは訪れそうにないので、あきらめずに頑張ってみます。

復職熱をくださったおとーちゃんさんにお礼を一言申し上げたいのです。ありがとうございました。まだまだ始まったばかりですが、家族で協力し合いながら就職活動頑張ります!以上です。

卒業式

昨日、子供の小学校の卒業式があり、子供は在校生として出席しました。
最近の卒業式の女の子の服装は華やかになり、進学先の中学の制服を着る子はわずか、
今年は袴姿も数人見られたそうです。
おめかしをして晴れやかな日を迎えることは大変嬉しい事だし、見かければ微笑ましく思います。
ただ年々、アイドルみたいな衣装で派手になり、人とは違うものを選び、何だかファッションショーみたいになってるな〜と感じています。
入学式前に制服を着るのはおかしいと言う学校もありますが、親としては経済的に制服を着てもらえると助かるんです。卒業式で着る以外出番ないですからね。
高額なランドセルも、そんな高いもの子供に必要かな?

企業の戦略に安易に踊らされない様に本当に必要な物を与えたいなと思います。


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当ブログはあくまで個人ブログであり、記事の内容および相談・コメントの返信等は効果を保障するものではありません。
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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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