「息子と僕のアスペルガー物語」 - 2015.03.14 Sat
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」 -テレビ制作マンが語る発達障害との戦い-
発達障がいに対する視点を当事者の側から与えてくれます。
以前にも書いたことがありますが、発達障がいはそうでない状態と必ずしも線引きの出来ることではありません。
似たような特徴が、どんな子にもある年齢に一時でることがあったり、弱く出ていることもあります。
子供のそういった姿に対して、理解のない自分の主観的な立場からだけで対応をしようとすることは、その子への正しい援助ができなくなってしまう原因になります。
このように当事者の視点から語られる内容はとても保育の参考になります。
読みやすく、またある種のドキュメントとしてもおもしろく読めます。
直接子育てに関してではないですが、こちらを拝見していて興味深かったことが、
「人間関係を円滑にするためには、思っていることをそのまま言ってはならない」
のくだりです。
筆者は、他者の感情を推し量って会話をすることが困難な性質なので、相手が傷つくようなこと、不快に感じることをそれとわからずにしてしまいます。
そのため、人に嫌われる経験を経て、どのように人間関係を維持できるか、観察と熟慮の上に編み出すのですが、それが「思っていることをそのまま言ってはならない」でした。
こういう話を聞くと改めてわかるのだけど、普段は当たり前にしていることなので、そのようなことにあまり気がつきもしません。
しかし、確かにそう言われてみると、人との関係の中で本音は言わずにやり過ごしていることって少なくないのでしょうね。
そういうことでもやっぱりストレスはあって、それを知らず知らず娯楽をしたり、息抜きをしたり、お酒を飲んだり、愚痴をこぼしたり、スポーツの応援に熱狂したりすることで、実はみな解消しながら生活しているのでしょうね。
それが大して害にならないことで収まっていればいいですが、そのようなストレスが、他者への大きな怒りに転化してしまったり、途切れることのないイライラになってしまうと、これは本人にも、周囲にも大変です。
人間の心のメカニズムは興味深くもあり、また難しくもありますね。
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● COMMENT ●
No title
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以前クラス運営についてアドバイスを貰った保育士です。あのときはお世話になりました。
勤める園は変わりましたが、その後もなんとか保育士を続けております。
今回の記事、私も食い入るように読ませていただきました。
発達障害を持つ人にとっては、私たちが何気ないと思うことでも大問題になる…。頭では分かっていたつもりなのですが、それがこのような形で綴られているのを見ると…やっぱり難しいのだなと考えてしまいました。
私もまだまだ未熟者ですが、そのことで苦しんでいる子どもや保護者の手助けが少しでも出来るよう、もっと研鑽をつんでいきたいと思います。
ところで、発達障害に関しては一つおすすめの書籍があります。
沖縄の琉球新報という新聞で連載されていたものを纏めた『天才児 ひなとかのんのおひさま日記』というものです。
発達障害である双子の娘をもつ母親が、日々のエピソードを漫画で表現しながら、自身の体験談や発達障害に対してのアドバイスなどを記載しています。
ユーモラスで面白く読めてしまうだけでなく、実際に肌で感じた対応の難しさや工夫などを具体的に捉えていて、とてもしっかりした内容になっています。
本土なら取り寄せやネット通販で入手することが出来ますので、興味がおありでしたら是非手にとってみてください。
私もこちらの連載、熟読していました。ずっと休載されていらっしゃっていますが、過去記事を何度も読み返しています。
というのも、夫もそこまでのレベルではありませんが、アスペルガー的兆候があり、著者の奥村氏と同じように自分のその特異性を活かした専門職についています。(色々問題はありますが。。。)
4歳の息子については3歳児検診の際に専門の病院を受診することを勧められた経験があります。
息子は数字や電車、日常生活の些細なこと、手順に関するこだわり方が、ちょっと度を超えているというか。。。
「僕と息子の〜」を読んでいると、シンクロするところが多く、私は胸が苦しくなります。バリアフリーをはじめとした身障者も健常者もすべての人が使いやすいユニバーサルデザインの建築があるように、子育てもアスペルガーなど発達障害のいかんに関わらず、すべての子どもにとってあるべき子育て、つまり自己肯定感、一人の人として軽んじないで接する、、、そういったユニバーサルな子育てが我が子には必要だと分かっていても、それができずに支配による子育てをやってしまうことに対する自己嫌悪や、アスペルガーの兆候がある我が子だからこそ、自分のような子育てでは駄目だ、でも出来ない、という葛藤があります。
でも、著者の奥村氏が成長の過程で、いわゆる空気を読むことを覚えて社会生活を営んでいらっしゃっる姿、息子さんのほか、その他の登場人物の方々への温かな眼差しを感じて、自分の子どもの将来に関して救われる気持ちになります。
驚きました
父は双極性障害なのですが、それだけでは説明できない違和感があること、集中してしまうと何も聞こえなくなること、空気を読まずに発言するとこ
母がよく暴言をはくこと、そして悪気がなさそうなところ、すぐにパニックになること。
もちろん、2人ともいいところはあるのですが、どうしても付き合いきれない部分や、愛情を子どもに感じていないように受け取れるところがあるのが、長年の悩みでした。それがこのコラムを読んでいるうちに、長年の悩みに光が差したようです。
発達障害のことを学んでいけば、両親と過ごす時に感じるストレスが減るかもしれない。毒親だと、親のことをさげずむよりもずっと気持ちが楽です。このコラムを紹介して、いただき本当にありがとうございました
No title
たぶん私も思っていることをよく口にしていたので、小学~高校卒業まで楽しくない12年間を過ごしてきました。
当時は周囲から嫌われていることについて悩んではいたものの、なぜ嫌われていたのか理由がわからずにいました。
社会人になっていろんな人に出会い、いろんな経験をして、やっと余計なことまで「見ざる・言わざる・聞かざる」で、対人関係を大切にしてきました。
今は女の子(5歳)と男の子(2歳)の母なので、ママ友との付き合い方に気を付けているところです。
おかげさまで周囲の人にも恵まれ楽しい毎日を送っています。
言葉とは、友好にする道具ですが間違った使い方をすると逆恨みとか怖いですね。。。
本当に口は災いの元ですね。。。
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こんばんは。今回のお父ちゃんさんの記事にとても共感しました。
自己肯定感や、子育てのことを考えているときに、「へりくだったり、相手をたてたりとかって、実は全部子供にはわかりづらいんだなあ。でも、それにどっぷり慣れてるのに、子供には軸を持ってわかりやすくって難しいなあ。」と思いました。
私は自己肯定感が乏しかった(軸がない)上に、自分のことは全てを後回しにして息子や主人を立てることをして、結果甘やかし、弱い大人になったり、あれやこれや大変でした。
事実を正しく認識、理解する能力(自己肯定感、軸)が乏しいのに、ずっと人生のなかで、真面目にへりくだったりとかをしてきたので、自分がなんだかわからないようになってしまったんだなあと思い、今は事実を正しく認識(例えば、ある主張をしたい自分にそれは、そんなにずうずうしいものではなく、ちゃんと言ってよいことだ、と理解しなおす。や、自分は今日予定は全てできなかったけど、基本の部分はちゃんとやれた。など)することを練習してます。
日々、そういう風に事実を正しく認識する練習をしながら暮らしていくと、本当に、思っていることをそのまま言えることってほとんどない、というか、この国ではほとんどの場合で思ってないことや、思っていることと逆のことを言わなきゃなのだ。って感じます。
いつも、思っていることと違うことを言い、自分を大切にする表現は慎まないとなのに、でも心のなかでは自分はダメではないと思うことが、当たり前で常識だったとは知らず、最近やっと気が付きました。
これからも楽しみにしてます。
お返事は不要です。