条件付きの肯定はいらない vol.4 - 2015.03.24 Tue
また、最後にDVやモラハラなどの話を出してしまったので、その印象が強くなってしまったかもしれませんが、そういったややレアなケースでなくとも、親から、「いい子」でいることや、お兄さんお姉さんでいることを望まれていたり、父母が厳格であったり、勉強が出来ることを期待されてきたといった普通によくあるケースでも同様の、「親の期待に応えることが自分の人格の支柱になっている」という生育歴は作り出されます。
この生育歴を持って、子育てのスタートラインに立っている人は多いです。
さらに、これまでの日本の子育てが「しつけ」を特に重要視してきましたので、多少なりともそういった、「親である自分の期待に応えない我が子」に直面したときのストレスはより大きなものとなります。
ストレス程度の問題で済んでいればいいですが、前回見たように、子育て以前の問題(自己の生育歴に起因するものが、我が子の子育てに直面して顔を出すもの)から起こってくるしんどさは、悪循環を生むし、子育てを頑張っても容易に解決しないために、より難しいものとなってしまいます。
僕は子供への関わり方や、子育ての方法をお伝えすることはできるのですが、こういった親の心の成り立ちにその原因があるケースに対する、明確な解決方法は持ち合わせません。
これは僕に限らずその他の子 育ての情報もやはり同様でしょう。
なぜなら、それは本当はその子の子育ての問題ではなく、子育てする人本人の心のあり方の問題だからです。
程度が軽いものであれば、「くすぐり」や「先回りした関わり」「受容を最初に持ってきて子育てすること」など、子育ての無理を減らす・ストレスを小さくする具体的な関わり方を示すことで、子育てを安定させていくことはできるとは思います。
しかし、どれだけそういった働きかけをしても、子育ての安定化や、親子の良好な関係にいたらないケースもあります。
今回は、そんな事例を紹介してみようと思います。
女の子(以降、A子とする)。産休明けの0歳児から保育園に入園。きょうだいはなし。
日々の保育時間は、ほぼ園の開所時間~閉所時間という12時間近くにわたる長時間保育。
父親は、ときどき登園時に、保育園に連れてきたりといった育児参加はしているも、さほど積極的というほどではない。また、子供の養育や日々の生活に関してもあまり自分の意見を持たず、母親にまかせているといった感じ。
母親は、いわゆるキャリアウーマン、相当に勉強をしてこなければ入れないだろうとすぐわかる一流企業に勤めている。
子供と一緒にいるときは、温かく関わったりするよりも、自分に迷惑をかけないこと要求する雰囲気を全面に出している。ベタベタとした関わりはせず淡泊なタイプ。
A子は、年齢にしては身体が大きく、行動面もそこそこしっかりとしているので、年齢以上のことを要求されてしまうところがある。
0歳の頃から、長時間の保育に加えて、家庭でも甘えや感情を好意的に受け止めてもらえないことが重なっていて、爪噛みや他児への噛み付きなどが慢性的に出ていた。
1歳後半くらいから、ちょっとしたトラブルや、転んだりぶつけたといったことをきっかけに、感情を爆発させることがしばしばある。
また、突然部屋の隅やカーテンの陰でシクシクと泣き出したりする情緒の不安定さがあった。
休日明けの週初めなどは、特に情緒不安定になっている。
休日の過ごし方などを聞くと、大人本意で連れ回されているといったことが多かった。(親の社交に付き合わされて夜遅くまで外出したりなど)
ふだんも、保育園を延長番の時間に迎えに来て、夕飯を外食で済ませて家に帰って風呂には行って寝るといった日も多い(家庭で過ごす時間が著しく少ない)。
また、降園後に友人宅にいってそのまま遅くまで過ごすといったことが乳児期から続いており、情緒が安定しない原因のひとつとなっていたと考えられる。
簡単に言ってしまえば、大人中心の生活スタイルに乳飲み子のときから合わせられているという生育歴を送っていた。
その間、親といるときは極力「いい子」でいて、親の期待に応え、我慢したものを無意識に親の前以外で出していた。
母親に対して、わがままやゴネ、甘えを出すと、怒られたり叱られたりということはそう多くないが、疎外によって冷淡に対応されるので、知的な理解の進んでいるこのA子はそのようなかたちでは出せなくなっていた。
1歳児クラスの時点で、噛み付きやひっかきなどのA子の荒れた行動やキレ、チックなどの心身症、情緒の不安定さは、はっきりとこのままではまずいというレベルを示していた。
噛み付きなどがあることもあり、折にふれて母親とはA子の様子について話をしたり、面談をする。
母親からも、「心配しているんです」、「困っています。どうしたらいいでしょうか?」といった言葉が出てくる。
それに対して、乳児期からの長時間保育はそれだけで子供にも負担がかかっていること。家庭でのんびりと安心して過ごせる時間が必要なこと(1歳の頃から家庭で出来る早期教育の勉強をさせられていた)。甘えや頑張っている気持ちを受け止められないと、情緒の不安定さが引き起こされること。
くすぐりをしたり、一緒に遊んで楽しい時間を持ったりすることで安定させていけること、などを伝えていった。
こちらから押しつけがましく話をしているわけではなく、「どうしたらいいでしょう?」という母親の相談を受けてから伝えているのだが、どうにも、その母親の口調ほどには、実際の行動にはあまり反映されておらず(忙しくてできないといった感じではなく、その気持ちが薄いという様子)、同様のことが何度も繰り返された。
印象としては、話を聞いてもらったことで満足してしまっている様子や、子供のことを心配している親というポーズをとっているような様子がうかがえた。
そのような中であまり改善は見られないにしても、このA子の担任保育士が専門性があり受容のできる保育士だったので、表面的にはある程度のバランスを保ちながら年齢が進んでいく。
そして、3歳になった頃から、さらに習い事が増加していく。
つづく。
- 関連記事
-
- 条件付きの肯定はいらない vol.9 子供は世界で一番の味方 (2015/04/08)
- 条件付きの肯定はいらない vol.8 (2015/03/31)
- 条件付きの肯定はいらない vol.7 (2015/03/30)
- 条件付きの肯定はいらない vol.6 (2015/03/29)
- 条件付きの肯定はいらない vol.5 (2015/03/25)
- 条件付きの肯定はいらない vol.4 (2015/03/24)
- 条件付きの肯定はいらない vol.3 (2015/03/22)
- 条件付きの肯定はいらない vol.2 (2015/03/20)
- 条件付きの肯定はいらない vol.1 (2015/03/17)
- 「息子と僕のアスペルガー物語」 (2015/03/14)
- どうして勉強ってするの? (2015/02/10)
● COMMENT ●
No title
トラックバック
http://hoikushipapa.jp/tb.php/764-ddb927b7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
うちの子は2歳3か月になり、まだ言葉は単語をぽつぽつぐらいですがこちらの話は大分伝わっているようで成長がとても嬉しく、よく笑う顔がとても可愛いなーと感じます。穏やかに関われるようになれたのは保育士おとーちゃんさんのおかげです。
でも、素直に話を聞いてくれる子どもに対して最近は、うちの子はあれもできるこれもできる、こんなに優しい子なの!
みてみて、うちの子本当にいいこなんだから!
……と、思ってしまう自分がいることに気がついて、自己嫌悪してしまいます。たまに、いつもできていることができないときに、
そっかー、いまやりたくないのかーといいつつ、内心がっかりするみたいな流れもあります。がっかりしている自分が嫌で、嫌だけど普段できてるのになー、という気持ちになってしまいます。
子どもに期待したくないです。プレッシャーになりたくない。
困る!と伝えた時に、キャー!と奇声をあげるのも、関わりかたがやっぱりどこかよくないところがあるからなのかな。
すみません、育児相談受け付けてないのに相談の流れになってさそまいました。
言いたいことがうまくまとまらないのですが、ありのままを受け止めるって、難しいですね。できる姿が嬉しいし、気がつくとこれもできるかな?あれもどうだろう?とどんどん増えていってるし。
毎晩、何かができるとか何かができないとか、そんなことは関係なくあなたが大好きだよと抱っこしながら話してます。
日中の、その場その場での、あれこれがチャラになるとは思わないけど、心からの言葉です。伝わってるといいな、と思います。