「疎外」 -支配と束縛の子育て法- vol.3 - 2015.04.20 Mon
何にと言うと、”子供を大人の思うとおりに動かすこと”です。
大人の思い通りに子供が動くことで子育てが達成されていると考えている人には、それは大変好ましいことのように感じられることでしょう。
しかし、子供の成長という面では、実は子供の何ものをも伸ばしてはいきません。
なぜなら、子供のまっすぐな成長のためにとても大切なふたつのことを、どちらも奪ってしまうからです。
今回はそのことについてお話ししていきます。
”とても大切なふたつのこと”とはなんでしょう?
ひとつは、親を頼る気持ち。依存心です。
子供は、親に受け止めてもらったり、助けてもらったり、守られていると実感することで、安心して成長の歩みを前に進められます。
僕が常々述べている、「受容」もこのひとつですね。
そのなかで、自信や、自己肯定感、ものごとに取り組むモチベーションを育んでいくのです。
大事なのは、それらが自分の力として身の内に蓄積されることです。
やらされてするのと、自分からするのでは、結果は同じだとしても中身は全然違うものです。
ですから、子供が親に甘えたり、頼ったり、弱さを見せて慰めてもらったりすることは当然のことであり、また成長に欠かせないことでもあるのです。
しかし、「疎外で言うことを聞かせること」が子育てだと考えて徹底してしまう人は、こういった子供が親に甘えたり、泣きついたりすることを許容できません。
そのような、甘えや幼さに対しては、冷淡さや厳しさで返してしまいます。
一個や二個のものごとに対してだけ、疎外をつかって行動させられたというのであればさして影響はないかもしれませんが、これを成長の間長きにされたり、育ちの基礎である低年齢のときにされていれば、子供の育ちにどうしても必要なふたつの内のひとつがもらえずに、その子は人生を歩んでいかなければならなくなってしまいます。
ふたつめの”大切なこと”は、親に反発、反抗することです。
かつて、第一次反抗期、第二次反抗期と言っていた、2~3歳くらいのイヤイヤ期、思春期の親へ反発する時期はもちろんのこと、それ以外でもしょっちゅう子供は親の思い通りにならない行動をとったり、納得できないことにゴネや泣きを示すことで、成長に必要な大切なものを身につけていきます。
そうやって、自立心や自我、主体性、社会性などの心の成長を得ていくのです。
これは子供が成長していく上でどうしても必要なことです。
これが適切に得られなかったために、ニートやひきこもりといった現代の大きな問題におちいってしまっている人だって少なくないことと思います。
しかし、「疎外」はこの親への反発や反抗をできない状態に子供を押し込めてしまいます。
『条件付きの肯定はいらない』で出てきたA子の事例を覚えているでしょうか。
A子は、親に反発することができないのです。親にダダをこねて見せることすらも自分からはあまりできません。
それは当然で、親からの好意や肯定、関心をもってもらうことが欲しいのに、そのようなことをしたらただでさえ少ない自分に向けられる「肯定」が余計に減ってしまうことを経験的に理解しているからです。
なので、なんらかの理由をつけて親からの関心・好意(もしくはそれに似たもの)を引き出そうとします。
ちょっとした怪我でもその10倍くらい痛がって見せます。
他児とトラブルになったことなど、いかにひどいことをされたかを親に伝えます。本当はA子から突っかかっていっているのだけど・・・。
さらに、親以外のところで、その我慢を噴き出させていました。
受け止めてくれる大人の前で八つ当たりをしたり、なにかと理由をつけてゴネを出したり。
他児に突っかかることで感情のはけ口にしたり。ですので、必然的にトラブルも多くなります。A子から手を出すばかりでなく、そのように始終ピリピリした雰囲気をまとっていますから、周りの子も警戒して手を出されることも多くなります。
そのような情緒や精神状態にいることが多いので、その子がいい部分を持っていても、それを出せる余裕が失われてしまいます。
すると余計にネガティブな行動がでて、それを頭ごなしに押さえられれば余計に自己否定感を募らせ、さらに余裕を奪っていってしまいます。
これは悪循環です。
しかし、疎外を使う人は、子供がそのような難しい姿を出すことが自分の関わりに元があるとは考えられません。
ですので、もし子供が言うことを聞かない姿が出てきたら、さらに疎外や冷淡さを見せることで子供を思ったとおりにしようとしてしまうでしょう。
この大人の関わりも悪循環になっています。
ちょっと話が脇道にそれてしまいました。もどします。
このように徹底した疎外を子供にしていくことは、子供からその大人に対して反発するという、子供が成長する上でとても重要な経験を奪い取ってしまいます。
子供を疎外などを使って、「いい子」や「言うことを聞く子」にしてしまうことで満足を得る人は、子供が反発や反抗をしないことを、子育てがうまくいっていることだと考えている場合があります。
しかし、それはそうではありません。
本当にその人のことを信じ切れないから、反発や反抗ができないのです。
よく、2~3歳のイヤイヤ期を持っている親は、子供が反発してくることを怖れていたり、よくないことだと考えている人もいるのだけど、それは逆です。
「どれだけ反発してもこの人は自分のことを見捨てないんだ」という大きな信頼感をその大人に持っているからこそ、子供は安心して反発できるのです。
「この人に反発したりして、気に入られなかったら自分の居場所がなくなってしまう」そのように子供が感じていたら、とても恐ろしくて反発などできはしません。
反発が出せるのは、子供の親に対する絶対的な信頼感の証なのです。
ですから、子供の反発を怖れる必要などないのです。
むしろ、我が子がそのように自立の階段を自力で登っていることを喜んでいいことです。
このように「疎外」を多用して子育てをしていくと、子供の成長に必須なふたつのこと。
大人を頼ったり求めたりする気持ち、それからそれと対になっている反発、反抗する気持ちの両方を押さえつけて、その経験を奪ってしまいます。
「受け止めてもらえない、そして、反発もさせてもらえない」
これをすると、その子供の育ちに必要なものが得られません。
周りにそれ以外の身近な養育者がいて、その人がそのことを肩代わりしてくれていればいいですが、近年ではなかなかそういう状況が望みにくくなっています。
つづく。
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>子供が親に甘えたり、頼ったり、弱さを見せて慰めてもらったりすることは当然のことであり、また成長に欠かせないことでもあるのです。
良かったです。
年中に進級し、クラス替えで仲の良い子達と別れてしまった娘が、このところ「幼稚園行きたくない」「泣いちゃう」「明日休む」と寝る前になると言ってくるので、話を聞いたり慰めたりしていたものの、あまり優しくし過ぎると余計に甘えてしまってかえって良くないのかな?とすこし迷っていました。
娘も頑張っていると思って、この時期は寄り添ってあげようと思います。
一方で、私は割と強い大人タイプで「ダメなものはダメ!」と譲らないことも多いです。また親の都合で怒ってしまったり、時々疎外も使ってしまっているかもしれません。
2歳頃はかなりのイヤイヤっぷりを発揮していた娘ですが、4歳の今は以前よりかなり聞き分けが良くなったなーと思っていました。
でも最近、娘が悪いのではなく完全に親の都合で「○○しないで」と言った時、以前なら「やだー!○○する!」と言っていたのに、私の顔色をみて「…やめとく」と言い、その時「あれ、まずいな。私相当怖がられてる?」とこちらが不安になってしまいました。
反発は信頼の証なんですね。私が直感的に不安になったわけです(^_^;)
「いい子」な発言も最近増えてきたかも…これは疎外というより条件付きの肯定寄り?「譲ってあげたの?優しいじゃん〜」とか前に褒められたから、また褒められたいという感じのいい子発言は。
子供自身の思いやりの気持ちから、という時もあるのでしょうけど。
悩み相談されていないの承知しているので返信不要ですが、つい長々と書いてしまいました。
繊細な所もありつつ、元々好奇心旺盛で天真爛漫だった娘の良い所を無くさないようにしたいです(>_<)