WS 第六回 子供との距離感 - 2015.07.22 Wed
隔週で三ヶ月にわたり、長いようで短いようなあっという間の全六回でした。
僕も普段は文章を書くことで、子育てが無理なく、また楽しくできるようなことをお伝えしたいと思っているのですが。
子育てって”正解がない”もしくは、”個々により正解が変わる”ものですから、文章で伝えるのはとても難しい。
具体的な個々のことを書こうとしても、一度にひとつしか書けません。またいくら頑張って書いたとしても書き尽くせるものでもありません。
よしんばそれを書き尽くしたとしても、読む人がそのどれが自分にあてはまるのか適切に判断できなければ意味がありません。
結局のところ、それは限界があるわけですね。
では、多くの人に共通のところを抜き出してまとめ一般論にして書きます。
その場合は、読んだ人がその一般論と、自分のケースとのギャップを自分で考えて埋めなければなりません。
また、一般論とは違う個別の側面が強い場合は、その一般論はあまり役に立たないこともあります。
やっぱりこちらも限界があります。
世間に流布する多くの子育てのお話しは、そこを避けるのですね。
そうすると、抽象論、感情論になります。
平たく言うと、”いい話”にしてしまうわけです。
「あぁ、いい話聞いたな~。大変だけどやっぱり子供っていいものだ。明日からまた頑張ろう!」
そのように、大人の方がモチベーションを取り戻して子育てにまた向き合えることで、うまくいってしまう人もたくさんいることでしょう。
それはそれでいいことだとは思います。
でも、保育士として実際の家庭や子育てを家庭に近い目線で見てきた僕には、こういった”いい話”にしてしまうことで、「あとはなんとか頑張ってね」という子育ての話にもある種の限界を感じます。
なぜかというと、それではまったく子育てが好転していかないケースもたくさんあるからです。
そしてそれは、増え続けているからです。
子育てに関する講演や育児の本の多くは、切り口こそ違えど、この”いい話”を落着点にしています。
子育ての本をたくさん読んできた人ならわかるかと思いますが、
そういう本も読んでいてあたたかい気持ちにさせてくれたり、感動させたり、たしかにいいものなのですが、それらを何冊も何冊も読んでいると、読後は「うん、わかった。じゃあ次はどうすればいいの?」といった感覚を覚えます。
それこそ、たくさんそういうものを読み込んでしまうと、具体的な中身としては0にすら感じてしまいかねません。
もちろん、それによって子育てが好転する人もいるわけで、そういう場合は100かもしれませんから、それらがよくないと言いたいわけではありません。
ただ僕は、いまの時代は、人によってはもっと踏み込んだものが必要になってきていると感じています。
僕は大学などで保育研究を専門にしてきた研究者ではありません。
ただの一保育士です。
しかしだからこそ、僕ができる仕事はそのすきまを埋めることなのではないかと感じています。
子育てする人と、子供と、同じ目線に立って、
「そういうときはこうしてみるといいかもしれないね。それでだめならこういう手もあるよ」
「それはみんなが通る道だから、そんなに悩まなくてもぜんぜん大丈夫だよ」
「うーん、そうか~。それは大変だなぁ。僕もこうすればいいってうまいことはいえないけど、一緒に考えてみましょうか」
そんなことを、地道にやっていこうと思います。
このワークショップでは、話の内容も僕なりに一生懸命「こういうことが必要ではないか」とまとめていってお話しするわけですが、実際のところはそれ以上に、子供がモノの取り合いをしたときの声の掛け方やそれこそ声のトーン、ここは見守って大人が手を出さなくてもいいところ、といったことを実地に目にできることも大きいのだと思います。
子育てのしかたは、文章だけではなかなか伝わらないもので、それよりは講演などで直接の言葉として耳にする方が伝わるし、さらには子供と関わるところを目の当たりにできるほうがより理解できるものです。
昔ならばそれを自然と見て身につける機会が多くあったのでしょうけれども、いまはそれは難しくなっています。
僕自身も保育士の資格を取得したときですら、ただの人でした。
それをその後、保育園で働きながら、そこの諸先輩方や各家庭の関わり方をみて、いいものはそれを自然と身につけ、よくないものは反面教師にしながら自分のものとし、保育の中で実践して、さらに我が子の子育てでもやってきていまがあるのでしょう。
それをお伝えすることで少しでも、子育てが楽しくなった、子供がいることで人生がより豊かになったと思えるようになる人が増えてくれれば、僕としてもとてもうれしいです。
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● COMMENT ●
No title
すると「困るけど2歳ならこんなもんよねー」と、流しつつもイライラしっぱなしだった困った行動が減り、落ち着いてこちらの話を聞いてくれる場面も増えて育児が楽になったのは感動でした!
とは言え元々の私の性格や既に確立しかかっている息子の困った行動パターン(噛み付き・癇癪など)に加えて、第二子妊娠中で心身共に不安定だった事もあって、わた君&むーちゃんの様にはいきませんが…でも少々元気過ぎる所があっても良いか!とも思っています。
先日、第二子を出産しました^^
もう1度このブログを読んで、長男共々いい関わりが出来るようになりたいなと思っています。
長々と書いてしまいましたが、おとーちゃん応援&感謝しています!
急激に暑くなりましたのでどうかご自愛ください。
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おとーちゃんが書かれているように、ワークショップに参加することで「子供がモノの取り合いをしたときの声の掛け方やそれこそ声のトーン、ここは見守って大人が手を出さなくてもいいところ、といったことを実地に目に」できたことは、本当に良かったです。
自分と子供を実際におとーちゃんに見て頂いて、かけて頂いた言葉も、これからの育児の参考・支え・自信になっていくと思います。
ワークショップには興味があったけれども、参加を迷ってしまった方がいらしたら、次回開催時には是非、ご参加してみて頂けるといいなぁ、とも思います。お勧めです!