子供の尊重の実践 vol.5 「保育」の実際 - 2016.03.17 Thu
(このシリーズの記事を「子供の人権と保育の質」カテゴリーに変更しました)
この記事は自分が思っていた以上にたくさんの反響があり、ブログ以外のいろいろな方面からもリアクションがありましたが、やはり保育・教育関連からが多かったです。このテーマでの研修依頼のお問い合わせもあり、少しでもよりよい保育のために力になれたのならば幸いです。
保育は現実には、その多くが個々の保育者の”センス”によって行われてしまっています。
その人の持ち前の性格や個性で自然と子供に受容的に関わっていける人もいれば、几帳面にものごとを考えああだこうだと小言ばかり多くなってしまう人。ルールや他者との協調、どちらが正しいといった「正義」を重んじて、子供に厳しくなっていくといった類いの人もいます。
そのやり方が、個々の子供に合っていればいいですが、子供は”多様”ですから、そのような主観だけに基づいた関わり方では、必ず合わない子がでてきてしまいます。
また、保育をするのに向いた個性を持っていて、とても保育がうまいという人もたくさんいるのですが、それではその人限りの技量になってしまって、その人が担任からはずれればそれまでになってしまうといったことも少なくありません。
やはり、プロとして職務で行う以上は、それらを体系的なものとして確立して、後輩に伝え、人材を育てていくといったことが大切になるでしょう。
保育士は、これまでその点に本腰をいれてこなかったのではないかと僕は感じています。
保育士が資格を取って、職務経験を積みはじめる最初の段階はとても重要です。
就職した先の保育施設が、大きな声を出して子供を思い通りに動かそうとしている保育をしていれば、その人はそれが当たり前だと思って、やがてはそれを”保育”として身につけかねません。
「疎外」を使って冷たくあしらうことで、子供を思い通りにしようとする保育をしているところであれば、それをそのまま身につけてしまう人もいます。
本当は少しも子供のためになっていないのに、一般に「子育て」や「しつけ」として流布していることを、「徹底して」「効率よく」しているだけの、専門性の低い”頑張っている素人”的保育を自信たっぷりにしているところもあります。
こういった極端な保育方法を一度身につけてしまうと、そのやり方が「正しいもの」として染みついてしまうので、年数を重ねるほどに軌道修正が困難なものになりかねません。
ですから、保育士はベテランならば必ずしもいい保育ができるとはいいきれません。やはり有能な保育士はつねに学び続けています。
現代は子育てを取り巻く問題がとても多く、しかも複雑になってきています。
これまでの時代のようにその人のセンス任せの保育をしていたら、追いつかない時代に間違いなくなってきています。
(とはいえ、”資質”が非常に重要な仕事であることは変わらない事実ですが)
子供たちの現状を見据える「視点」があり、そこから目指すべき「理念」を設定し、それを達成するための「理論」を持ち、経験と学習に裏打ちされた「専門性」のもとに、それを行える「技量」を高めながら保育に臨む。
それが完璧にできなくとも、そういう方向を目指そうとしている園と、そうでないところではまったく違ってくることでしょう。
お子さんの入園に当たって、いくつもの保育園を見学なさった方の中にはそういった温度差を漠然とでも感じた方はいることと思います。
「子供の尊重」という概念は、それらの一番基礎になることです。
しかし、これを実践レベルで理解することはとても難しいので、その考え方と実際の関わりをつなげられるようにという思いで、今回の一連の記事を書いてみました。
まだまだ少しも書き尽くせませんが、文章がうまくないのでなかなかうまくお伝えすることができません。これからも折にふれて書いていきたいと思います。
↓とりあえず、ざっと頭に浮かんだ書きたいテーマ。
書けたらいいな・・・・・・。
◆よい保育ができる人は、それを「自分の”保育技量”によりできたのだ」と、誇ってほしい。それが保育全体を底上げする”きっかけ”になる
◆子供を尊重した関わりと、尊重になっていない関わりの具体例
◆行事に見られる「子供の尊重」
◆「尊重」によりこれだけ伸びる「要支援児」
◆本当は大人の本音を一番感じている”自閉的傾向のある子供”
◆「子供の尊重」の理解が、保育上の「安全」を高める
- 関連記事
-
- 『今、日本の保育の真実を探る』シンポジウム 報告 vol.1 (2016/09/19)
- 保育には「盗んで覚えろ」は通用しない (2016/09/17)
- 「なめられるな」は保育ではない! vol.2 (2016/07/09)
- 「なめられるな」は保育ではない! (2016/07/05)
- 「保育士」という職について考える (2016/03/24)
- 子供の尊重の実践 vol.5 「保育」の実際 (2016/03/17)
- 子供の尊重の実践 vol.4 子供の姿を”過渡期”としてとらえる (2016/03/11)
- リンク ”参加”と”排除”について考える~公立学校の発達障害に関する意識調査から (2016/03/09)
- 子供の尊重の実践 vol.3 補足 (2016/02/27)
- 子供の尊重の実践 vol.2 ”見えない”ことが最大の問題 (2016/02/22)
- 子供の尊重の実践 vol.1「思考の演習」 (2016/02/13)
● COMMENT ●
楽しみにしています
保育室の鍵
これって普通の事、必要な事なんでしょうか?
保育室おとーちゃんさんのご意見をいただきたくコメントいたしました。
私は玄関だけでも充分では?と思いましたが、子ども達と女性の先生ばかりなので必要なのでしょうか?それとも子どもを管理するため?
息子の園は障がい児は受け入れておらず、3歳児クラス26人で2人担任です。迎えに行った時はみんな大人しく座っていて1人の子がまだお弁当の片付けをしていました。
子どもへの関わり方や、先生から伺う園での様子からは“できる”様にさせる事を大切にしているみたいです。
施錠は安全上必要な事なのか?それとも子どもの尊重と関わる事なのか?
選べる程園が無く、入園させました。息子がこれからお世話になると思うと、質問もしづらく意見など言う勇気がありません。
トラックバック
http://hoikushipapa.jp/tb.php/870-effab734
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
我が子は選択制緘黙で緊張の高い子です。
療育で発散させながら、いつもの保育園では先生方の配慮に感謝しています。
このシリーズ、どのように接すればよいか、ヒントがたくさんあって、有難いです。