FC2ブログ

2023-06

過保護的支配 vol.3 - 2016.04.15 Fri

「過保護的支配」としてそれが顕著になるものは、vol.2の箇条書きにしたところではあげていないですが「親の願望の投影」です。





まず、親の方に「子供を〇〇にしたい」という願望があって、それに邁進させるため一方では支配的になり、一方では過保護になります。


最近多いところでは、例えば”お受験”などです。
(全部が全部そうとは言っていませんよ、誤解しないでね)

親がまず、子供を「名門私立小学校に入れたい」といった願望があるとします。
そのために、勉強などたくさんの要求を子供には課していくことになります。

その人自身の考えは、「子供のために」「子供が大事だから」という強い意識です。
ですから、その受験勉強をさせるのと同じ感情のベクトルで、「子供が大事だから」ということで、様々な「過保護的行為」がたくさんなされてしまいます。

「過保護的行為」とは、本当はその子ができることであってもやって”あげて”しまったりという「直接的過保護」。
「うちの子はできなのだ」と決めつけて先回りして手を出したり、その物事に取り組ませなかったりといった「精神的過保護」など。




こういった傾向は、実際に多く見られるようになってきています。

お受験の勉強や、幼児教室に通わせたりして、そういった子は特にそのような早期教育をされていない子に比べて、先取りした能力を身につけています。

例えば、ハサミ使いや絵描きの上手さだとか、字が読める書けるなどなど・・・・・・。
言葉なんかも、その子の年齢にしてはボキャブラリーが多かったり。使わないような言葉を使ったり。

つまり、ある面では進んでいるわけです。
(発達が進んだり、頭がよくなったというわけではなく、訓練の結果「できる」を持たされた状態になったということですが)

しかし、そういう子たちの中には、生活面の能力がその年齢にしては伸びていないというケースがあることを感じます。

例:着替えができない。できないだけでなく、自分でしようとする意欲自体がない。
  :5~6歳といった幼児なのに、指示待ち。ルーティンから外れたことが起こるとどうしたらいいかわからず、ボーッとなっている、など。


これは、早期教育がそうさせているというよりも、親の姿勢としての”過保護”が、生活力の幼さを助長してしまっているようです。


これだと、”ある面では進んでいるのに、それよりももっと基礎的な部分では幼い”という、アンバランスな成長をさせられてしまっています。




このように、片方で親の願望に子供を沿わせるための要求(過剰になれば支配・束縛)、片や「”幼い・できない”ものとされての過剰な保護」=「自分を信じてもらえない」という扱われ方。

こういうパターンが、「過保護的支配」として影響が大きくなるもののようです。
それでなにごともなくいくケースもありますが、問題を生むことも少なくありません。



実はこの形の子育ては、すでに親の世代が同じ子育てをされてきているのです。

その頃は、その対象年齢がいまのように乳幼児からと言うほど低くはなく、主に中高生もしくは小学生の頃からされていました。


親から「こうなりなさい」というレールをしかれて、子供は「親の期待に応えたい」と思うのでそのために努力し、一方で過保護をされながらなにか親によって自分の頭の上にフタをされているような閉塞感を感じながら人生を歩んできているのでした。

この同じ構造が、現代では顕著に、より低年齢にされるようになっています。
「小1プロブレム」といった問題が出ている背景には、この子育ての構造が無関係ではないのではないかと僕は感じます。



この過保護的支配の特徴は、「期待をかけられること(=願望を投影されること)」も、「過保護に扱われること」も、基本的には親からすると「子供のため」であり、子供からしても「大事さゆえに」と捉えられることです。

それはよくもあり、悪くもあります。


気が強かったり、自分をはっきりと持てている子であれば、適度に親に反発を出したりして、自分で過剰な親からの支配・束縛から距離を置くことができる子もいます。
その子は、ある程度自分でバランスをとることができるわけですね。

しかし、気持ちが優しかったり、親の気持ちに敏感だったり、強い自己を出すことが苦手な子供(ケースによっては大人になっても引きずっていますから子供に限りませんが)の場合、自分の中にその影響を蓄積・抑圧していくことになりかねません。


その影響は多岐にわたります。
精神科医や精神分析医、心理カウンセラーといった人たちは、もうずいぶん前からこのことに警鐘を鳴らしていましたが、あまり子育ての側からその実際とからめて伝えようとする人は多くありませんでした。
しかし、現実に多くの苦しんでいる人がいる時代になっています。

親の持つ「あなたのためだから」が、ときに子供を不幸にしてしまうことが起こっているのですね。

僕は乳幼児の子育てが専門なのでこういった精神分析の方面に詳しいというわけではないのですが、しばしばこの問題は現実に見ているので、多くの人にお伝えすることで子供と子育てする人が不幸になってしまうことを未然に防いでもらえればと思います。


リンク:子供に成功して欲しければ、これだけはするな スタンフォード大の元学部長が語ったこと

↓これらの本。レビューだけでも一見の価値があります。

関連記事

● COMMENT ●

私も、そうです

グサッと来てしまうくらい私の事でした。

母親は、冷たい態度。頼みの綱の祖母は優しいけれど、私に過剰な願望をかけて、何をするにもいつも祖母のレールを歩かされていました。そして、何でもやりたいと言ったことには、危ないとかそれはまだ無理だとか(^_^;)あなたのため。よく言われました(^_^;)
今でも祖母は、元気なので、私の息子をみてくれたりするのですが、ジャングルジムや公園の遊具でこんなに上手に遊んだと話すと、公園の遊具は危ないからまだ早い。と言われます。

母親にもすがれないし、祖母の側に居ると自由がない。

私は母親として息子にどうしてるだろうか。


トラックバック

http://hoikushipapa.jp/tb.php/886-7b64d92b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

過保護的支配 vol.4  「気づき」 «  | BLOG TOP |  » 過保護的支配 vol.2.5  ちょっと「過保護と排泄の自立」へ寄り道

ごあいさつ

ただいまコメント欄での子育て相談は休止中です。 お悩みのコメント下さっても回答を差し上げることができません。 申し訳ありませんが、過去記事、すでにある返信コメントなどを参考になさってください。 多くの相談への返信がすでにあります。関連するカテゴリーから探す、検索を使って探すなど利用してみてください。 多忙になってしまい、コメントへの返信ができなくなってしまいましたが、お寄せいただいたコメントにはすべて目を通し更新の励みになっております。ありがとうございます。

最新刊

よければレヴューも書いてね!

前作!

最新記事

最新コメント

プロフィール

保育士おとーちゃん

Author:保育士おとーちゃん
当ブログはあくまで個人ブログであり、記事の内容および相談・コメントの返信等は効果を保障するものではありません。
ご利用に当たっては自己責任でお願いします。

楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

講演等のご依頼

講演・ワークショップ等のご依頼はFacebookのメッセージ または『保育士おとーちゃんホームページ』 http://hoikushioto-chan.jimdo.com/ よりどうぞ。

カテゴリ

はじめにお読みください (2)
【まとめ】記事 (2)
子育てノウハウ? (81)
子育て日記 (13)
保育園・幼稚園・学校について (120)
日本の子育て文化 (209)
おもちゃ (27)
叱らなくていい子育て (10)
排泄の自立 (11)
『魔の2歳児』 (5)
子育てまめ知識特集 (4)
あそび (41)
おすすめグッズ (10)
おすすめ絵本 (23)
食事について (15)
過保護と過干渉 (47)
満たされた子供 (7)
早期教育 (20)
我が家の子育て日記 (96)
心の育て方 (107)
相談 (86)
子供の人権と保育の質 (90)
その他 (70)
未分類 (24)
講座・ワークショップ (142)
父親の子育て参加について (3)
雑誌・メディア (48)
子育てに苦しむ人へ (27)
保育研修 (3)
note有料記事 (4)
保育について (16)
性教育について (6)
子育てオンラインサロン (1)

保育ひろば

保育ひろば

楽天

FC2カウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

おしらせ♪

当ブログはリンクフリーです。トラックバック・リンクはご自由にどうぞ。 しかし、本文・コメント・その他を含めて著作権は私にありますので、引用・転載する場合は連絡をお願いします。また引用元の記載も併せてお願いします。 なお写真の転載はお断りいたします。

ランキングに参加しています

検索フォーム

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QRコード

アクセス解析