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2023-06

本当の「できる」とはなにか? - 2016.05.28 Sat

今日見たら我が家のあじさいが満開になっていました。
今年は例年よりも早い気がします。


さて、幼稚園や小学校の保護者会や説明会に出ると、毎回のように感じることがあります。たぶん多くの人は気にも留めていないのではないかと思うのですが・・・・・・。






それは「~~させてください」というフレーズです。
さらに「~~してください」もあります。

例えば、
「お箸を上手に使えるように家庭でも教えてください」
「衣服の脱ぎ着ができるようにやらせてください」
「忘れ物のないように持たせてください」

小学校だと「時間割をチェックして、おうちの方がランドセルの中身を点検してあげてください」など。



これらの「~~させてください」「~~してください」は、”親に”向けられた「〇〇ください」の要求ですね。
それはつまり、親に対して、「あなたのアプローチによって、子供の〇〇な行動・姿を作り出して下さい」と言っているわけです。


これは僕が以前に話した「粘土細工と植木鉢」のふたつの子育てのあり方の、”粘土細工”の立場に学校の先生たちの視点があることを表しています。

それを聞く多くの一般の大人も、「子育て=粘土細工」という先入観を持っていれば、その言葉はなにもひっかかることなく当たり前にストンと入ってくることでしょう。



しかし、僕はここに現代の人が子育てを難しくしてしまうことの一因があると感じます。

学校の先生は、「できる」という状態を子供に持たせることが仕事です。
ですから、そのような考え方、言い方になってしまうことはわかります。
また、それができてくれていないと支障がでてしまうことも。



おそらくは、かつてはそのやり方で済んでいた現実があったのでしょう。

しかし、現代の子育ての形ではそれが思うようにならなくなってきています。
子供が変わっただけではなく、親の考え方・おかれている状況も変わっているからです。


いまの人は、子供に対して丁寧に手をかけるようになっているので、そのように伝えるときちんと一生懸命、親が時間割をチェックしてそろえてはくれます。しかし、それではそれを親ががんばるばかりで、子供自身にその力をつけるようにしてあげることができません。


つまり、過保護になってしまい、子供は自分でやる必要性を感じないまま年齢があがってしまうので、長期的にみるとかえって「できない子」がつくられてしまっています。
目先の「できること」にとらわれるあまり、子供自身の力としてつけることができなくなっているのです。


本当にここで必要だったのは、

「失敗していいから自分でやらせてみて下さい」 なのです。

「失敗して困る経験をさせましょう。原因と結果を自分のものとして経験することで、あとあとまで活かせるその子の本当の力をいまは育む時期です。私たちはその手間を受け止める用意がありますよ」

と伝えられることなんですね。


僕は現代の子育ては「過保護はデフォルト」だと思っています。
子供の数が少なくなったり、子供に手をかけられる余裕、または手をかけなければならないという意識が当然のものとなった現代においては、過保護は「よくないこと」と非難するようなことではなくて、そこがスタートラインなんですね。

だから、そこを踏まえて子供に関わる人はアプローチを考えなければならなくなっています。


幼稚園・学校といった教職員の先生たちは、当たり前のようにこの「〇〇させてください」を使っていますが、長期的にそれが結果として生み出すものの関連にまだ気づいていません。



こんなことがあります。
小学校入学時の説明会に行くと、しきりに上で述べたような持ち物や教科書などの準備を親に要求します。
一方で高学年になったときの林間学校の説明会などでは、持ち物の管理などが自立できていないことを問題視して、自分でできるように自立させることを要求しています。


世間一般の多くの人もそうですし、学校の先生の子供への見方も、「短期的な結果」を出すことで考えていますから、このふたつを関連づけて理解する人はそう多くないのでしょう。

しかし、このようにふたつ並べて挙げれば、それらが互いに矛盾していることに気がつきますね。

これらは大いに関係していて、子供を本当に伸ばす、本当の意味での「できる」を獲得させるためには、
「失敗をいとわない」「短期的な結果を求めない」大人の方の覚悟が必要になることを示しています。




しかし、これはなかなか難しいことです。

例えば、子供ふたりがケンカしたとき、大人は白黒をつけて謝らせ仲直りさせたくなってしまいます。

大人は、「そうすべきである」と考えていると同時に、そうやって目前で好ましい状態の結果に子供をはめ込むと自分が満足・安心できるからです。


でも、子供はそれでは本当の意味での成長を身につけてはいかないことに気づくことができると、大人は自分の望む結果の型に子供をはめるようなことをしない方がいいとわかってきます。

子供がケンカしたら、口も手も出さずに見守って、子供自身にそこでの葛藤を十分に経験させ、その後両者が互いに適切な関係を持てることを「信じて待つ」ことです。
そこに気がつくと、無理やり謝らせるようなことになんの意味もないことを実感できるでしょう。


本当に大人がすべきは、その「仲直りしたい」「その子ともっとうまく遊びたい」といった、心のモチベーションになる部分をそれ以前からコツコツと築いていくことなのです。



さっきの忘れ物の例で言えば、
「忘れ物をしたとしてもなんにも気にしない子」では、子供に失敗をさせたところで好ましい方に育っていってはくれませんね。

「あ、忘れ物をしてしまった。困ったな。恥ずかしいな」

そのように自分から自然と感じられる子供の心を作ることに、本来の大人の力を注ぐべきなのです。忘れ物を大人の介入によって「なくすこと」ではなくね。


このことがわからなく、そして難しくなっているのが現代の子育ての特徴だと僕は感じています。

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● COMMENT ●

「「忘れ物をしたとしてもなんにも気にしない子」では、子供に失敗をさせたところで好ましい方に育っていってはくれませんね。

↑小学生の頃、忘れ物の女王だった私はまさにこれでした。
じゃあどうしたら、
「「あ、忘れ物をしてしまった。困ったな。恥ずかしいな」そのように自分から自然と感じられる子供の心を作る」
ことができるのか・・・
私は「まぁええわ。しょうがない」と思っていて、これは今も同じだなぁ。

上の子は、いまだにパンツにオシッコやうんちをしても平気な顔をしています。
どうすれば、パンツにオシッコやうんちをしたら気持ち悪いということがわかるのか・・・
「パンツにうんちしたらおしりが気持ち悪いやろ」
とか、
「部屋のすみでうんちするのは隠れてしたいんやろ。それやったらトイレは一人きりになれるで」
などと言ってみているのですが心の底ではなんかちがうなぁ、そんなこと人に言われて感じたりわかったりすることじゃあないのになぁと思っています。

いのうえさんのコメントの
>じゃあどうしたら、
「「あ、忘れ物をしてしまった。困ったな。恥ずかしいな」そのように自分から自然と感じられる子供の心を作る」
ことができるのか・・・

わたしもいのうえさんとまったく一緒のことを思いました。
(でも、いのうえさんは、とってもきちんとした方であるイメージを持っていたので、勝手に親近感を持ちました~すみません。)

わたしも忘れ物ひどすぎて、小学校の時、名札を次忘れたら買うといわれたのに、その後も忘れ続けて、名札がたくさん溜まった記憶があります…。
そのころどう思っていたかは覚えていないのだけど、たぶんあまり気にしてなかったんでしょうね。今でも忘れっぽいのは変わりません。今は、恥ずかしいなあと思いますが。

そういう部分の成長は個人差もかなりあるんでしょうか?とも思いましたが、今考えてみると、私は3姉妹の末っ子で、姉によく世話をしてもらっていたようです。
だから、余計にそうなのかな~と。もともとのわたしの気質ももちろんあると思うんですが、おとーちゃんさんが言われる、排泄の自立でも言われている、生活全般の体験が大事っていうのが小学生の私にも当てはまるのかもしれませんね。

喧嘩が下手の子ども

学童保育(1〜6年)の支援員をしています。
喧嘩で「無理やり謝らせるようなことになんの意味もないことを実感できるでしょう」
ここには、とても共感できます。私自身は謝るのではなく、気持ちの伝え合いを大切にしています。
1つ疑問があります。
ここでいう子どもの喧嘩はどのようなものでしょうか?
現在在籍している喧嘩が多い子どもたちは、「アホ」「死ね」「くそ」などの悪口を言う。それを聞いてさらに感情的になる。殴り合い、砂の投げ合いなどが起こる。そこで、支援員が入らなければ、怪我が多発します。そんな現状です。止めなければならない状況です。
仲裁に入って、時間をかけて、支援員が代弁をして、気持ちの伝え合いをした上で、信じて待つことを実践しています。
口も出さず、手を出さずは出来ない状況です。
ちょっとこの文章の趣旨から外れていますが・・・私の現場の現状です。

喧嘩が下手の子ども

・学童保育(1〜6年)の支援員をしています。
・喧嘩で「無理やり謝らせるようなことになんの意味もないことを実感できるでしょう」
ここには、とても共感できます。私自身は謝るのではなく、気持ちの伝え合いを大切にしています。
・1つ疑問があります。
ここでいう子どもの喧嘩はどのようなものでしょうか?
現在在籍している喧嘩が多い子どもたちは、「アホ」「死ね」「くそ」などの悪口を言う。それを聞いてさらに感情的になる。殴り合い、砂の投げ合いなどが起こる。そこで、支援員が入らなければ、怪我が多発します。そんな現状です。止めなければならない状況です。
仲裁に入って、時間をかけて、支援員が代弁をして、気持ちの伝え合いをした上で、信じて待つことを実践しています。
口も出さず、手を出さずは出来ない状況です。
ちょっとこの文章の趣旨から外れていますが・・・私の現場の現状です。

なかなか

おとうちゃんさん、こんばんは
なかなか集団、幼稚園となると、待ちの保育は難しいんですかね。
2年にすれば良かったかな~ってちらちら娘の姿をみて思ったりしています。
まあ、3年でやれる、と見込んでの今なので言っても仕方ないですけどね。

個を伸ばす保育士との出会いは、宝くじに当選するくらいの確率か~?と思ったりするこの頃です。

う~ん

言いたいことは分かりますし、子供に関わるからにはそうあってほしいと思うところではありますが、そこまで先生に求めるのではなく、それを踏まえて親がどう関わるかではないのでしょうか。

小学校では忘れ物をすることから学びに一歩遅れたり、集団生活の中での躓きになることもあり、また、親の過信を戒めるほどではないですが、子供の手伝いを通しての気づきや、コミュニケーションを図ってほしいとか、意図があると思ってます。

保育園では排泄や、食事の援助など、細かに援助がありますが、小学校にまで保育園並みの援助は求められたら大変ですよ。
親の関わりでよいのではないかと私は思います。

感じ方は自分の子供をよく見ていればわかるはずです。その子に合った対応を先生に理解してもらったり、自分の考えを伝えて子育てを自分が主体となって親が関わればよい気がしてなりません。

私立ののびのび幼稚園から隣の公立小学校に娘が入学しました。
「させる」と言われること、多々。
子どもに準備させてください、と、親だけにプリントが出て、しかも、持ち物が全部漢字で書いてある。
幼稚園の時は、絵入りで子どもに手紙が出て一人で用意できる工夫をして頂いたせいか、子供が勝手に準備していたので、戸惑いました。
今でも、日々戸惑いつつ、子どもの言葉に翻訳?して書き直して渡したり、振り仮名を打って渡して、意味を逐一聞かれる度に説明したり、その時々に応じて、変えています。

去年93歳で亡くなった祖父の小学校時代の先生が、クラス40人強の生徒の一人か二人に届けばいいと言う思いで話をしていた、と言われたそうです。
子どもの頃聞いた私は、全員に聞いてもらえなくていいのかな?と思ったのですが、今小学2年生の親として、学校の先生を見ると、子ども全員を何とか平均値までひっぱって行かなくてはいけない、全国規模のテストで結果も出さなくてはいけない、と言う先生にとって厳しい状況なのかなと思います。
先生が、長期的な視野を持って、小学校卒業までに最低限これを習得したら世の中生きていけるよね、もっと勉強したい子にはたまにアドバイスをしてあげたいね、くらいの心で子どもに向き合える、その余裕と言うか、無駄と言うか、そういうところがあったらいいのになあと思います。


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