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2024-03

子育てを「怒り」にしないためにできること - 2016.08.17 Wed

現代の世相を見ていると、多くの人がなんらかの「怒り」に満ち満ちているなと感じることがあります。
人々を見ても、なにかのきっかけや理由を見つけて自分の「怒り」をぶちまけたいという衝動にかられている人も少なくないようです。

公共広告機構のCMにも、「どちらかがやわらかければ、気持ちよく過ごせますよ」といった趣旨のものが最近流れていますね。



さて、前回のところで述べたように、”子育てが思い通りにならないこと”は「怒り」の感情へと変換されやすい性質があります。








保育園というのは、社会構造の基礎の方にあって社会を下から支えている存在です。

そこにはしばしば世のあり方の縮図が見えてきます。

経済的に不景気になり余裕がなくなって、育休に対する風当たりの強さだとか、会社がリストラだとか給与の削減だとか、圧迫面接だとかそういったギスギスした社会状況になると、てきめんにそこに預けるお父さんお母さん、そして子供たちにその影響がかなりあからさまに現れてきます。


いわゆる”クレーマー”が増えているということはよく耳にすると思います。
なかでも、根も葉もないことでクレームをしてくるケースや、非常識な要求をしてくる「理不尽なクレーマー」があります。
これらの「理不尽なクレーマー」で、子育てが安定してうまくいっている人というのは、まずほとんどいません。

元々その人自身が抱えているなんらかの「怒り」があり、さらに子育てで受ける「思い通りにならなさ」が「怒り」に転化された結果、それがクレームとしてどこかへぶつけられることになります。

ぶつけられる先は、無意識に自分に反撃をしないところになります。
保育園は立場上そういうことはしないところですから、しばしばその矛先が向けられます。(これは学校や、レストラン・商店なども同様でしょう)


ですから、こういったクレーマーが生まれる原因は、「クレームにされてしまう問題があったから」以前に、その人自身の子育てが安定していないこと、それが生み出す怒りがあり、それのはけ口として保育園や学校などに向けられてしまうということです。


また、それの背景には会社で過剰な要求にさらされていたり、経済的な悩みや、対人関係の難しさを抱えていたり、家族間のトラブルがあったりすることもあります。
また、その人の人格的な面も関わってくるでしょう。


ここでの施設側の対応には4通りあり、どうしていくのがよいのかというポイントがあるのですが、それはプロ向けのまた別のお話なので、もとのテーマに戻ります。(この問題のポイントは、クレーマーを作り出さないアプローチの方法が施設側の意識次第でできるということです)




ケースにもよりますが、ある意味では「クレーム」は「助けてください」という親からのサインです。
しかし、「怒り」のレベルになってしまうと、助けたいと思っていても手を差し伸べることが、またそれをしたとしてもその差し伸べた手を受け取ってもらうことが、困難になってしまいます。



ですから、「子育ては怒りを生みやすい」ということを、現代では知識としてあらかじめ持っておいてもらって、そうならないように、またそれがどうにもならなくなってしまう前になんらかのアクションを取るという習慣を持ってもらいたいなと思うのです。


いわゆる育児本というのは、その多くが”きれいごと”に終始してしまいますからこういったことに触れるものはそう多くないかもしれませんが、僕はこのことは現代の子育ての必須知識ではないかとすら感じます。





じゃあどうすればいいのでしょうか?
それが今日のタイトルにした「子育てを怒りにしないためにできること」なのですが。

それは「会話」なんです。



「子育てに悩んだ時は、一人で悩まず誰かに悩みを聴いてもらいましょう」

といったことが、例えば保健所が配るような子育ての冊子には書いてあったりします。


また、「○歳児検診」などの質問紙には、「悩みを話せる家族や友人はいますか?」なんていう項目があったりします。

でも、現代は「そういうことができる相手がいない」という人が増えてきています。それがすでに誰が悪いのでもなく構造的な問題として存在しています。
(だからあの種の質問は、そういう人が持てない人にとってはどことなく腹立たしく感じられてしまいますよね)



悩みを聴いてもらうということは確かに大事なことなのだけど、僕が今回ここで述べている「会話」というのは、もっとそれ以前というかたわいもないこと、いわゆる世間ばなしのようなただの「会話」のことです。



どうやら人間には、「会話」をすること自体とても大きな意味があるようなのです。
会話をする中で、話を聴いたり、聴いてもらったり、このプロセスをすることが、さまざまな(特に対人上の)ストレスを軽減していく作用があるようです。


それは高尚な会話である必要も、必ずしも悩んでいるものごとを聴いてもらう必要もありません。
それこそいつも繰り返される決まりきったネタや、たわいもないことでいいようなのです。

(本当のことを言うと、どうやら一番効果のあるのは誰かの悪口みたいだけど、これはまあやめたほうがいいよね。グチくらいまでがいいね)





しかし、現代の人間のあり方は、

「他者と没交渉になることで、他者からの対人ストレスをできるだけ受けないようにしていく」

という方向性に進んで来てしまっています。


子供時代をおくって、学生になり、勤め人になる、そこまではある程度その生き方でもやってこれてしまいます。
周囲の人間もそういうスタイルをしているので、そうそう無理がないわけですね。

しかし、「子育て」という否応無しに対人関係由来のストレスを受ける状況になってしまうと、このライフスタイルで貫いていくのはとても困難になります。

それまでの「他者と没交渉になることで、極力、対人ストレスを溜めないようにする」という生存戦略では、かなわない状況に否応なく直面するからです。


もし、この生存戦略で子育てをしようとすると、子供の無視やネグレクトというところに落ち着きかねません。


このテーマは掘り下げるといろいろなところにつながるので、今回はここらへんで切り上げてまとめますね。





子育ての「うまくいかない」を「怒り」にしてしまわないようにするためには、子育てに関係ないことでもいいので、気軽に人とお話をする機会を持つといいのです。


でも、多くの現代の人が採用してきた生き方は、それをそう簡単にはさせてくれません。それがさらに、現代の子育てを難しくしています。

だから、それが無理なくできるような「場」の重要さが増しています。

(それについてちらっと述べた『失われた感覚  vol.2』では皆さん色々と教えてくださってありがとうございました。なにかしら僕もやっていきますね)




なかには人と関わることがどうしても不得意という人もいるでしょう。本当にだめならば無理をすることはないけれど、でも、できる範囲でいいから人との会話をしてみると、子育ての悩みの総量そのものが減っていくと思いますよ。


もし、これを読んでいるのがお父さんであったら、子育ての主体になっているお母さんのお話を聞いてあげましょう。
その話が、子育てのことであったら、そこで話される問題を解決しようとすることは(場合にもよりますが)必ずしも重要ではないので、論理的に反論したりする必要はあまりありません。
「ああ、そうなんだ~」と受け止める姿勢をもって聴いてあげれば、それだけで解決してしまうこともあります。

問題解決のプロセスが必要なケースであっても、一旦話を聴いて受け止めるという過程をその前に持ってくることで、少し冷静になって話し合いをすることが可能になります。

多くの場合、お母さんが求めているのは、まず第一に「問題解決のためのアドバイス」ではなくて、「自分の気持ちを受け止めてほしい・理解してほしい」ということです。



でも大切なのは、それ以前の段階から(つまり問題があったときではなく、普段から)「会話」の機会をきちんと持っていくことです。
「話す相手がいる」このことは、家庭内で孤立気味に子育てをすることになってしまう現代の子育てにおいては、とびっきり重要な事です。

普段からのやくたいもない会話でいいのです。
現代は、なかなかお父さんが子供に直接関われる時間は減っています。
でも、夫婦でそういう時間を持つことは、間接的にとても子供の育ちに大きな影響を与えていきますよ。





これに関連して「”世間ばなし”というスキル」というテーマについても考えています。
これについても機会があったら書いていこうかな。



ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、僕はホームページの方から、子育てのメール相談、対面相談を受け付けています。
講演や執筆などで多忙なときは、受付を閉めきってしまうこともあるのですが、ただいまのところは「○件まで」と制限せず受付中です。
秋になりますと、講演シーズンに入ってしまいますので受付を停止してしまうことがでてくるかもしれません。
以上、ご連絡までに。

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● COMMENT ●

私は出産を機に仕事を辞めましたが、続けていたら毎日いかにさっさとご飯を食べさせて寝かせるかしか考えられなかったと思います。
仕事が終わってロクに買い物もせずに保育所にたどり着くのが早くて7時。家に帰って夕食の支度をして食べさせてお風呂に入れて寝かせたら何をする間もなく自分が寝る時間でしょうねぇ。
仕事をしながら育児をされている方、本当に尊敬します。
他愛のない会話をする余裕が、精神的にも時間的にも体力的にもないというのが多くの方の現状ではないでしょうか。
つくづく日本の労働環境は家事育児一切を専業主婦に任せてきた昭和のお父さん向けだなぁと思います。

一説によると、日本人の殆どがACだと言われていますからね・・・。
怒りを人にぶつける、というのは自分でいっぱいいっぱいな状態なんですよね。
それによって人がどう思うかすら考える余裕がない、という。
だから親になる立場の人間は心のケアをなるべく早くしておいた方がいい、ということでしょうね。
なかなか難しいテーマですよね。
本当はものの見方を少し変えるだけですごく楽になるんだと思うんですけど。
よく支配の記事でも書かれていると思うんですが、人間って自分を変えることは出来ても、人を変えることは絶対に出来ないんですよね。
たとえそれが血肉を分けた我が子だとしても。
似ているから投影し易いんですけど、自分ではない、他人ですから。
そこを意識すると割と「怒り」っておさまりました・・・私の場合。

ヨコですけれど、(おとーちゃんさん、すみません汗)
いのうえさんが最後におっしゃっていた、日本人の働き方について!

なんか子育てしているからなのかな、男女平等ってほんとなんなんでしょうね??
男女平等に働くって不可能じゃないかと最近思います。
私にキャリア志向がないからなのか、夜中まで女性が働く意味って何?って思ってしまいます(汗)
会社って男性社会ですけど、女なのにそこで男に負けないように働いて、家に帰って家事して育児して。
多分旦那にも色々ダメ出しして家の中に男が二人、みたいな感じになり夫婦仲もあれ?ってことになり(極端ですかね?でも結構多いと思います)

女性が輝く社会?そもそも輝くとはなんでしょうかね?男みたいになって働くってことなのか?
皆が幸せを感じる社会にしていきたいですけど。

・・・あら、これも私「怒り」を感じているのですね(笑)
長々すいません~!!!

るまさんへ

じゃあ、家事や育児や介護を男性も分担して、融通の利く働き方ができるようになればいいのかと考えると、それは実際問題できないような気がするんですよねぇ。
日本の企業の競争相手は日本より労賃の安い海外企業。それに勝つためには彼らより付加価値の高い商品を出していくしかない。→もっともっと働くしかない。
なんだかもっともっとの資本主義経済が世界的にどうにか変わらないと、余裕を持って生活できる日は来ないんじゃないかと思えてきます。
コメントが本題と大きく逸れました。
おとーちゃんさん済みません。

男女平等

スウェーデンでしたっけ、
どこでしたかの国の男女平等は、奥さんも旦那さんも、仕事から午後6時には家に帰ってきて二人で家のこと、育児のことをこなすとか。
それなら確かに平等です。
日本も、残業ありきではなく、定時帰りありきの考えにシフトしないと…色々なところに無理が生じてます…。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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