「人と人」の力 - 2016.08.19 Fri
家の中で、娘の元気な声が聞こえる。そんな当たり前のことが、いかに素晴らしいものであるのかを再確認しました。
お医者さんにいけば、症状をやわらげる薬や、解熱剤、二次感染を防ぐための抗生物質を出してくれたりはしますが、アデノウイルス自体を治す薬というのはありません。
これだけ科学や医学が進んでも、そうやって治せない病気などゴロゴロしているわけです。
看病に必要なだけのことをし、そのとき食べられそうなもので栄養のあるものを少しでも食べてもらい、やるだけのことをしたら、親はあとは心配をするか祈るばかりです。
でも、僕はそこに人と人のつながりが生む力があることを知っています。
子供が高熱でつらそうにしている時「お父さんお母さんがついているから大丈夫だよ」と安心させてあげる言葉をかけます。
本当は、その病気に対しては父親がついてようが、母親がついていようが関係ありません。
病気に対しては無力です。
しかし、その子供の心にとってはそのことはとても大きな意味のある言葉になります。
薬を飲ませるときも、「これを飲めば治るからね」と力強く言ってあげます。
本当はその薬は根治させるようなものではありません。
でも、娘は僕や妻に対して強い信頼感を持っています。
それゆえにその言葉を信じてくれます。
すると、それが病気に立ち向かう気力になります。
人間の社会を支える科学や技術は、この約100年ほどでとても大きな進歩を果たしました。
ある面では、それは即物的な価値観を生みだしました。
しかし、人間は依然として「心」という即物的、物理的、また理屈によって解決しない部分のウエイトを、とても多く残しています。
物質的な繁栄、進化の一方で、「人と人との関わり」は薄れる方に進んでいっているかのようです。
しかし、人間はどうしてもそこなしにはすごせない生き物です。
『子育てを「怒り」にしないためにできること』でも触れましたが、現代の人間の生き方がそこから離れてきたことが背景にあって、子育ての難しさが増している部分があります。
いまふと思い出しましたが、『アルプスの少女ハイジ』という物語は、ハイジの成長物語という視点と実はもうひとつの視点があります。
それは、ハイジのおじいさんである「アルムおんじ」が人との関わりを取り戻していくという行間に描かれる物語です。
アルムおんじは元々傭兵でした。
現在でもバチカン市国の警備兵として伝統が残っていますが、あの時代以前スイスは傭兵団が国としてのとても大きな外貨獲得の産業でした。
そしてアルムおんじは数々の凄惨な戦闘を体験し、それゆえに人と関わる方向での人間性を閉ざしていきます。
そこにさらに息子夫婦の事故死が追い打ちをかけ、他者とけっして打ち解けない偏屈さを持つようになり、なかば隠者としての生活をするようになります。
そこにハイジという純真な子供が登場し……、あとはみなさんもご存知のとおりです。
僕自身も人との関わりが得意な方でもないし、うまくもありません。
それでも、多くの子どもと関わってきたことが「人と人として」関わることの大切さを教えてくれました。
でも、これは「目に見えないもの」だから、人に伝えたり、理解してもらうのはなかなか難しいのだよね。
だから僕は、「子育てを楽しむこと」を通して少しでもそれを実感してもらえたらと考えています。
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