『言い聞かせる』 - 2010.05.26 Wed
注意するのだけど結局やらせてしまうとか、言っている本人すら最初から「どうせきかないだろう」というような感じの制止の声がけとか。
こういう傾向の関わり方をする親は、押しなべてほとんどの関わりがそういった心のこもってない関わりや、言葉に重みのない声がけといったものになりがちです。
ある事例です。
2歳児クラスの女の子とその母親。
保育園には家のおもちゃを持ってこないことになっている、しかしこどもに言い聞かせられず、毎日保育園になにがしかのおもちゃや、家の物などをもってきてはごねている。
母親はこどもに注意するのだが結局持たせてきてしまう。
挙句の果てに、「おもちゃの1つくらい別に持ってきたっていいでしょ」と保育士に文句を言ってしまう。
ここが不思議なんですよね。
性格が優しかったり、強く言えないというタイプの人がこどもに言い聞かせられないというならわかるのだけど、理不尽ともいえるような文句をつけられる人が、なぜ自分のこどもにはっきりと物事を伝えられないのか。
泣こうが喚こうが、「おもちゃは家に置いておきます!」と取り上げてでもなんでも、それから家を出てくればいいのに。
でも、こどもの泣きとかに負けてしまうのでしょうね。
よく「けじめ」などといいますが、どんな小さい子であったとしても、守るべきルールとかきまりってありますよね。
最近の人はこういうところの線引きがどうもうまくないみたいなんだけど、家から一歩外にでればそこは「社会」であって、家庭の中のローカルルールとは明らかに別に社会のルールっていうものがあるわけだから、そういったことに関しては毅然とした態度で「出来ることは出来る、出来ないものは出来ない」って言っちゃっていいんですよ。
そして、そういうルールに対しては一貫していたほうがこどもは混乱しないので、「時にはいい時にはダメ」みたくするとこどもは大人に対して不信感を持つようになってしまいます。
上の事例には実は背景があって、母親は普段から小言のような注意が多く、その子は大きなストレスを抱えていて、しかもしつけや勉強には熱心だが甘えることができず満たされない思いをつねに持っている。
そして、少しでも目を向けてもらい良い関わりをしてほしいばっかりに、なにかにつけてゴネ、返って「良い関わり」と正反対の関わりしかしてもらえないという悪循環になってしまっている。
その上さらに親の態度に一貫性がない。
つまりこの場合は、口で「持ってくるな」とい言いつつも、態度では持ってくることを黙認してしまっている。
このことは結局、親に対するこどもの不信感を生んでしまう。
言い聞かせられない親が増えてるのはどうしてかな~?と考えると、やはりコミュニケーション力の弱さっていうのが大きいと思います。
そういう親をいろいろ見ていると、こども以前に大人との関わりも苦手そうな人だったり、うまくない人だったりすることが多いです。
コミュニケーション力の不足はニートや引きこもりの原因の一つとも言われていますが、普通の人でもなんかだんだんと弱くなっていますよね。
話しをしていても目が合わなかったり、あいさつできない人だったり、そういう人は自分のこどもに対してもあまりうまく関われないことがよく見かけられます。
また逆に我が強すぎて相手の気持ちを配慮できない人も、やはりコミュニケーションがうまいとは言えませんね。
上の事例はこういうタイプですね。
まあ、現代はなんかコミュニケーションにストレスがともなっちゃう時代ですよね。
なぜなのかはわからないけど、人と関わるのが気がおもくなるときって多くなってますよね。
でも、自分のこどもには自信をもって関わって欲しいものです。
では、どういうときに強く言っていいのかわからないという人のために、こどもと関わる上でのちょっとしたポイントを紹介します。
実は意識しなくとも、ものごとのけじめというのは生活の中でちょっとずつ身につくようになっているのです。
だからそういうところをしっかりやれば、こどもも言い聞かせたときはきちんときける子になります。
例えば、小さいうちから「きちんとする」ことを身につけられるのは「食事」です。
1~2歳からはとくに重要です。
「ごはんを食べるときはちゃんと座って食べます」
「いただきます (ごちそうさま)ちゃんと言ってください」
「食べ物で遊ぶならもうごはん終わりにします」 などなど。
必要に応じて言い聞かせましょう。
食事は、家庭の生活の中で「きちんとする」ことを身につけられるとても大事な場になります。
ただし、食事を「しつけの場」にはしないでください。
たしかに「きちんとすること」を身につけられますが、それは必要に応じてするのであってあえてする必要はないのです。
食事はまず楽しい、暖かい場であることが大前提です。
また、楽しい・暖かい場であるからこそ、そこで伝える心のこもった言葉が届くのだとおもいます。
ほかに言い聞かせる必要のあることは、それは「安全に関わること」です。
自分や他人を傷つけてしまうこと、命に関わることに関しては相手がどんなに小さい子であってもはっきり言っていいのです。
そういった場合、いきなり注意したり、叱るのでなく「なぜそれが困るのか」その理由をきちんと伝えてあげるとこどもは素直に受け止められます。
また、「あなたが傷ついたら自分はとても悲しい」という気持ちも伝えれば、こどももちゃんとわかるし、危険なことを自分で考え避ける子になります。
危険なことをしたからといっていきなり叱りとばしてしまうと、こどもは「悪いことをしたつもりではなかったのに理不尽に怒られた」という印象をもってしまい、素直にうけとめられずその後も自分で危険を避けられる力には育ちません。
また、「公共のルール」というものもはっきりと伝えていいことです。
「レストランやお店では、他のお客さんもいるから小さな声で話してね」
「電車やバスは他のお客さんも乗るから、つめて座るんだよ。走ったり遊んだりする場所じゃないんだよ」
「図書館ではとっても小さな声にするんだよ」
「みんなで使うものだから大切に使ってね」
などなど、必要に応じてその場面で伝え、また常に一貫してそうできるようサポートしてあげましょう。
0歳の子であってもきちんとわかります。
(もちろんお腹が減ったり、眠かったりしてできないこともありますが・・)
しばしば、お店などでこどもに「うるさいっ」と注意する親がいますが、怖い顔をして抑圧してそのときは静かになったとしても、自分で状況を考えて行動できる力には必ずしもならないのであまり意味のないことです。
また、「うるさい」というのは相手の存在を否定する言葉なので、やはりこどもは素直に受け入れにくくなります。
このように最初からするべき理由ととるべき行動を知らせてあげ、大人も一貫した態度をとっていれば、こどもはだんだんと身についていくものです。
一見、叱ったり注意したりすることより回りくどいようですが、結果的には素直な子・物分りのよい子になるのでそもそもくどくど言う必要のない子に育ってくれます。
まあ「良い子」を作ろうとしてやっているわけではありませんが、しかるべきときには「言い聞かせる」毅然とした態度というのはとても大切なものだということです。
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● COMMENT ●
No title
No title
他人に文句言ってします様な方が 子供に言い聞かせる事が出来ない
なるほど~そうですね~確かに居ます!
不思議ですね。
最近は わがままが多くなってきました。
でも保育士おとーちゃんのブログを読んで
きつく怒るのは避けて なるべく説得するよう パパとがんばってます
泣きわめいてしまったらあんまり聞いてくれませんが・・・
この子の将来の為になってくれると信じて(^。^)
みんしゃみーさん
けっこうどの場面でも使いこなしていくっていうのは難しいんですよね。
まあ、すべてが思ったとおりになんてならなくてもいいんだからね~。
ちっぴ~さん
僕なんかは仕事がらどんな泣かれたとしても動じないけど、こどもの反応も人それぞれだから、大変なときは無理しないで臨機応変でいいんですよ~。
でも、大人がしっかりぶれない気持ちをもっていけるってのは、とてもいいことですよ。
だんなさんも子育て積極的なひとでよかったですね。
こんばんは
今回の「言い聞かせる」とっても共感できるお話だったので、ブログで紹介させていただきました♪
アトピーっ子かーちゃんさんはじめまして
>
> 今回の「言い聞かせる」とっても共感できるお話だったので、ブログで紹介させていただきました♪
ありがとうございます。
わざわざ紹介してくださって感謝です。
またいらしてくださいませ~。
No title

私も4歳の男の子と1歳の女の子の母です。
仕事をしているので、毎日保育園にお世話になっています

すごく参考になる記事で、正直ドキドキしながら読みました。
叱る・言い聞かせる・しつけ・・・親のエゴだったり、抑圧だったり、甘やかしだったりの境界線に悩みながら育児に奮闘しています。
けど、どうしても自分のコンディションによって、つい怒鳴ったり、叩いたり・・・
自己嫌悪に陥る事もしばしばです

最近、ちょっとしたキッカケがあり、すぐに大きな声を出したり、手を出すのはやめよう。。
私が改心しなくちゃ!気長に、気長に、言い聞かせる事を心掛けよう!
と、心に誓ったばかりです。
親の一貫した態度、大切ですよね

あたしにもダンナにも欠けている所だと思います。
気をつけなくちゃ。。。
ありがとうございました

hanemama さん
ほんとに子育てって楽しいことばっかりじゃないですよね。
うまくいかないと思うことのほうが実際のところだと思います。
それでもこどもが可愛いと思えるなら、きっとそれで大丈夫なんだと思いますよ~。
少しでもお役に立ててよかったです。
よろしかったらまた来てくださいね~。
No title
いつもタイムリーな話題をありがとうございます。
まさに今、その「言い聞かせる」という場面が多くなってきてます。
今まであまり意識しないできたのですが、やはり2歳、成長期です。
すごいです。そういう機会が増えました。
言い聞かせるのって本当に難しい・・・と実感しているところです。
泣かれるとついつい妥協してしまいそうになるのですが、心を鬼にして・・・
でもあんまり泣かれるとこれって抑圧ポイントちゃり~ん・・・?とかもういろいろ考えちゃって・・・。
でもそうやって悩んで考えて少しずつよい対応ができるようになってきたかな・・・と最近自分の成長に気づきました。
娘も、私がゆっくり言い聞かせると納得してくれるようになって少しずつその時間も短くなってきたように思います。
今思ったのですが、2人で一緒に成長してる感じです。
さっちんさん
今回の言い聞かせと同じように、成長期の際も出来ないものは出来ないと言い切れる親の毅然とした態度はやはり必要になることもあるかとおもいます。
いろいろ大変ではあるけれども、投げてしまったり、押しつぶしてしまうのでない、きちんと向き合った様々な積み重ねで親子間の信頼関係、価値のある言葉を常に保っていくうちに、こどもはごねたりぐずったりせずに満足する自我というものをきっと獲得できると思います。
ほんとに、その2人で一緒に成長できるっていうことがなにより大切なのだと思いますよ。
食事マナーについて
もうすぐ二歳になる息子がいます。
息子はご飯を食べる時、終わりに近づいたり、おそらくお腹がみたされた?らお茶などで遊びだします。お茶をご飯のお皿に移して遊んだりします。でもそのお茶に浸ったご飯を食べたりする時もあるし、りんごなどをお茶にディップして食べたりなどするので好きなのかなとか、あまり怒ったりすると余計に機嫌が悪くなってぶちまけたりするので基本的に見守っているのですが、(あまりにひどかったりこぼしたりしたらもうとりあげてます)やっぱり食べ物をきちんと食べずに大人から見て遊んでいるように見えたらもう食事を終わらせるべきですか?それともそれが本人の食べ方なのでしょうか??
最近癇癪を起こしたり、ほんの少しのきっかけですぐ大泣きしたりするのでイヤイヤ期到来したなくらいに思っていたのですが、おとーちゃんさんのブログを見て、お子さんがとても良い子に育っているみたいでやっぱりうちは激しい方なのだと思い悩んでます。来年には2人目が産まれるのでますます大変になりそうなので心の余裕がほしいです。。
たかさん
こういったことは「自分本位」でいいのです。
親として自分がそれを好ましくないと感じるならば、それはやめさせればよいのです。
それが「その家庭のあり方」になり「私の子育て」になるのです。
子供はそれに適応していきます。
でもそこに一貫性や自信がなければ、子供はいつまでたっても「その家庭のあり方」がわからず、振る舞いの基準がみつかりません。
つまり、子供の姿も大人の望ましいものから離れていってしまいかねません。
>余計に機嫌が悪くなって
しかしこれはよくありません。
子供の顔色をうかがうように大人が対応していってしまったら、子供の行動を大人がコントロールすることはできなく・できにくく育っていってしまいます。
子供の機嫌がわるくなるから言わないのではなく、それはしていいことだからやらせると大人が思えばさせればいいのです。
それは我が家のルールにはないと思うのならば、子供が泣こうが喚こうがさせないというのが、子供に対しても誠実な大人のあり方だと僕は思います。
そしてこういった一貫性をもった大人のあり方というのは、行動面だけでなく子供の情緒面にまで大きな影響を及ぼします。
>お子さんがとても良い子に育っているみたいでやっぱりうちは激しい方なのだと思い悩んでます。
もし、我が家でも大人がひよったり一貫性のない態度をとっていたら、いまからですら子供の情緒・感情の出し方というのは激しいものになりかねません。
その子その子のもともとの性格というものもありますが、大人の対応如何でも子供の姿は変わってくるものですよ。
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私は、できるだけ別の言葉で注意するようにはしています。
スーパーで走り回るので、「他の人の迷惑だし、転んだら、自分が痛いよ」とか・・・。
でも、あまり、周りくどく言い過ぎて、自分でわからなくなってしまい、結局、「うるさい」とかって言ってしまうこともあります。
日々、反省して、私も成長したいと思います。