「いい保育」と「上手い保育」 vol.4 - 2016.10.12 Wed
「正しいこと」という決めつけをせずに、子供に向き合っていく必要があるというところまでお話ししました。
では、それをせずに子供に関わるにはどうすればいいのでしょうか?
「ああ、そうなんだ」という言葉。
この意識で受け止めることが現代の子供への適切な関わり方のスタート地点になります。
それは「あるがままを受け止める」ということです。
例えば「○○がいい。○○は悪い」という価値判断抜きで、対象(この場合は”相手である子供”)を受け止めることが必要です。
「ああ、そうなんだ」というのは、いかにも平易な言葉ですが、これができるかできないかが現代の保育士の専門性の分かれ目となるでしょう。
「どうあってほしい」「このような成長を獲得して欲しい」ということを、考えてはならないといっているわけではありません。
でも、「○○できる」を求めて「現状の否定」から出発しても、すべての子供を本当の意味で伸ばすことはできないということに気づかなければなりません。
なかにはもちろん「現状の否定」から関わりをスタートしても、問題なく育っていける子もいます。
しかし、このやり方ではそういった「元々伸びる子」しか伸ばせないのです。
現代は、かつてよりも保育園、幼稚園、学校に入ってくる時点で、そこでのものごとが無難に送れる基礎条件を備えた子ばかりが入ってくるわけではありません。
(昔だってもちろんそういう子ばかりではありませんでしたが、現代はそのあり方がより多く、デリケートになり、多様化・個別化しています)
この「ああ、そうなんだ」という「あるがままを受け止める」姿勢から始めることによって、価値観の押しつけではない適切な援助がスタートできます。
そこを踏まえたところから、その子が必要なものを獲得させたり、問題となっていることを改善していく、次の具体的アプローチを考えなければなりません。
たったワンクッション。
「ああ、そうなんだ」と目の前の子供の今ある姿を受け止めること。
このことは、些細なことでしかないようですが、その子への関わりの最初のピースをこれにすることで、大人が行うその子への対応、そしてそれが子供に与える影響は大きく違ったものとなっていきます。
これは、カウンセリングの世界で言うところの「傾聴」と、ほぼシンクロして考えられるかもしれません。
子供は、”もの言わぬ存在”なので、「ああ、そうなんだ」と汲み取ろうという姿勢が保育者の側には不可欠なのですね。
クライアントの話も聴かず、受け止めず、自身の考えや正論を押しつけてくる人はカウンセラーとして失格という話は聞いたことがあるのではないかと思います。
子供を本当に伸ばそうと思ったら、保育にもこの「受け止めるプロセス」が重要です。
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● COMMENT ●
次のアプローチ
一旦あぁそうなんだと一旦受け止めて別のアプローチでいいと思います。
我が子が年度代わりの新学期、毎日毎日暴言をいい続けたときがあり、それは好ましくない気持ちになると伝えても全くダメでした。親も毎日ストレスでした。
ああそうなんだ~とは力量不足で言えませんでしたが
視点を変えて別のアプローチをと、家事の手をとめてトランプを朝晩各毎日30分程一緒にすることにしました。50回勝てたねメダルを作った辺りで暴言は一切なくなりました。
本人も心ではわかっているので、毅然とした態度で伝えるか否かは子供側にはそれほど重要ではなく、その先に求めているものがあると思います。
子供が自分に寄り添ってもらえてると思えるならどんな遊びでもいいはずです。
いつも見ているよ♪視線と声かけのみでも結構子供には届きますよ!!
もちろん、くすぐりが大事だとか、同じ目線でも否定的な見方と肯定的な味方とでは違う事理解していたのですが、ずっと何か引っかかるものがあり、答えを見つける事が出来ずにいました。
叱らずとも、子どもは大人に寄りそってくれるようになると信じ色々と試してはいたのですが、目の前の姿だけにとらわれ、正す事に意識がいってしまい、大事な事が抜けていました。
クッキーの缶を満たすってそういう事なんですね!
ずっと愛読していたのにも関わらずお父ちゃんさん、ごめんなさい。
まさに、ピンクゴキゲンさんは、トランプを毎日30分程した事が子どもの心を満たし、クッキーでたくさん貯まったんですね!
目の前の子どもの姿にどうにかしなきゃ、どうしてこの子は…とそんな風に見てしまっていて、「ああそうなんだ」と受けとめるものの、その後どうしたらいいものなのか、わからなくなっていました。
子どもは大人がどうこう手を変え品をかえしなくても、良い方へと向かうんですよね。でもその為に大人が出来る事は日々の小さな関わり一つ一つが大事なんだという事がわかりました。
遠回りに見えても、一緒に絵本を読んだり、にっこり笑ったり、話をゆっくり聴いたり、抱きしめたり、子どもの中にしっかり自分を受け止めて、寄り添ってもらえて、心が満たされたら、自然と大人に寄り沿ってくれるんだろうなぁってそんな風に感じました。
自分の子どもにもまだまだ出来てないのですが、好ましくない姿を見ては、振り回されるのではなく、根っことなる部分を見つめて、長い目で見ていこうと思います!!(*^^*)
ありがとうございます!
確かに困った場面でいくら努力して関わったところでマイナスな関わりにしかならない、親の気持ちを伝えたりすることは大切だけれども、その時点で上手く伝わらないと感じるようなら、さっさと切り上げて、プラスの関わりを沢山増やそう、、そして成長を見守ろう、、やっと腑に落ちました~!!
分かったようでいて、分かってなかったけど、やっとわかりました。。
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一つ疑問なのですが、前回の記事で、「ああそうなんだ」と子どもの姿をありのまま受け止める事が最初の一歩だと書かれていたのですが、「ああそうなんだ」と受け止める事は出来ても次のアプローチの仕方がわかりません。
一旦その姿は受け止め、別の場面で、色々な角度から子どもとの関わりをすれば良いのでしょうか?
子どもと関わる仕事にたずさわっているのですが、(学童保育です)時間的にも短く人数も多い為、ゆっくりと一人一人に関わり、肯定的な関わりを増やす事や、信頼関係を築く事など、なかなか難しく、正しい姿を求めてしまうと、否定の関わりだけで、その日が終わってしまう子が出てきてしまいかねません。
なので、「ああそうなんだ」の関わりをもう少し深く取り上げてもらえると大変嬉しく思います。
次のアプローチに繋げる方法は、色々あるとは思いますが、大人から見て好ましくない姿を見た場合でも否定から入らないと言う事なのでしょうが、こちらが心地よくないと思う事に対しては「ああそうなんだ」と受け止めつつ毅然とした態度でしっかりと伝えた方が良いのでしょうか?
質問、相談等受け付けてない事は承知なので、またこれからの記事を読みながら、勉強させて頂きます(*^^*)