物を取られたときに手を出すなどといったレベルではありません。
そばにたまたまいた子、通りがかっただけの子をいきなり押したり、突き倒したり。かみついたり。
片っ端から座っている子の髪の毛を後ろからひっぱって回ったり。
理由もなしに攻撃的な行動をとるようになっています。
大人に対しても、生活の全ての部分で感情をむきだしにしてきます。
甘えて泣くという程度の出し方ではなく、大人から最大限の関わりを出すために最大限の感情をぶつけるような泣き方をする。
この姿が連日続きます。情緒が安定しているとはとてもいえない状態です。
こういった姿はその子が「悪い」から起こっているのではなく、その子が安定して過ごすことを欠いている状態だからその子自身やむにやまれず出ているわけである。
だから、叱ったりする関わりはさらに悪化させることにつながってしまう。
保育園とは子供の健康を維持することが、まず第一に大切であり、「健康」とは身体だけでなく心の状態も健全であってはじめて言えることです。
それゆえこの状態から少しでもいい方向へ向かわせることが保育士の仕事です。
そこで母親に認めたり受け止めていく関わりを勧めるも、言葉では同意するのだが気持ちにはあまり響いていない。
具体的な出来そうな関わり方も伝えていくが行動にはあまりつながっていない様子。
家庭の力だけでは改善が難しいと思われるので、保育士が園で十分に受け止めるよう働きかけることとする。
職員間で話し合い、担当保育士もしくは信頼関係のできている保育士一名に重点的にその子に関われるよう配慮する。
出来る範囲ではあるが、一名を他の子の世話や雑事につけずその子を必ず見守っていたり、必要に応じて常に対応をしてあげられる体制をとることで、その子に安心感をあたえる。
そして、情緒が安定していないのでひとつの遊びによいかたちで取り組むことができず、投げたり壊したり、または他児の遊びを邪魔することが遊びとなってしまっているので、そのような時はくすぐったり、抱きとめたりの一対一の関わりを十分にする。
「くすぐり」はこれまでにもたびたびブログの中でも紹介していますが、そのほか顔遊び、身体をつかったスキンシップ遊びなどもてる限りのレパートリーを使って、その子に大人がしっかりと受け止めてくれるという信頼感・安心感をもたせることに多くの時間を費やす。
必要に応じてそういった関わりを続けます。この子の場合は一週間以上かかりました。
その週のうちにもだいぶ落ち着いてきたのですが、週末の休みでまた不安定になってしまい次の週もしばらく同じように重点的な対応が必要だったからです。
一週間以上そのように常に見守り受容的な関わりを続けたことで、それからは通常の保育の中でも、ダダをこねたり泣きで大人の注意をひきつけたりということは続いたのですが、無差別な攻撃的な様子というものはほぼなくなり、一応の情緒の安定にこぎつけることができました。
いまだに叱ったり・怒ったりに終始する保育をする園、保育士もいますが「受容」を軸に関わっていかなければ、子供の心身の健康・健全な「育ち」は図れません。
乳児期の子育ては「受容」こそが大切であるといえます。
しかし、ここでこの子へのアプローチは終わりではありません。
長くなったので次回へ続きます。