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2024-04

保育士が子供を威圧する保育はなぜ起こるか Vol.2  信頼関係 - 2014.05.07 Wed

前回のつづき。

叱って食事を食べさせるようにしたところで、子供が本心からその食べ物を好きになったり、苦手を克服したりしたのではなく、「叱られるからイヤイヤ食べている」のだとしたら、それは保育士の自己満足でしかありません。










中には叱られたりすることでも食べられるようになって、それで自信をつけて克服するというケースもないわけではありません。

でも、もっと嫌いになったり、食事そのものへの意欲を失うというような、好ましくないケースだって実際にあるわけですから、
それがプラスに作用するかどうかというのは「当たるも八卦当たらぬも八卦」というやつになってしまいます。

人を育てるというものが、そのように出たとこ勝負でいいわけはありません。

このような関わりというのは、大人から子供への一方通行の関わりです。

「これは正しいことだから」という理屈で、紋切り型に誰彼なしに押し付けていくということをしてしまっています。

このことは子供個々の違いつまり、「個性」というものをなんら顧みていないということです。

そんな保育をしているところでも、「個性を尊重・・うんぬん」というのが保育理念や目標の中に入っていたりします。
ということは、実際には「個性の尊重」というようなことは、全然理解されていないということになってしまいます。

悲しいかな、多くの保育がそのような客観的に自分たちの保育を見直すというような視点を欠いたものとなってしまっています。

だからこそ、「子供を威圧する保育」というものもなかなか改善されません。







子供との関係の原点は、「信頼関係」にあります。

大人が子供をかわいがり大切にし、慈しみ、尊重し信頼するから、子供は大人を信頼し従おうとするのです。

大人の力により「威圧」されるから子供が従うのではありません。


しかし、日本ではこれまで後者の考え方がとても根強く残っていました。
家庭でも、学校などの外の世界でもそういった考えで子供に接するということが多くありました。

「叩く子育て」「叱る子育て」というのも、そういった子育て観の産物ともいえるでしょう。


「威圧する子育て」をする人は、「子供は力でねじ伏せなければ大人の言うことを聞かないのだ」と思ってしまっています。
残念でまたかわいそうなことに、その人は子供を尊重し信じて暖かく見守ってあげることで自発的に従ってくれるということを知りません。もしかするとその本人も力でねじ伏せられて育ってきたのかもしれません。


そして子供は威圧する大人を本当の意味では信頼しないので、そのような大人に対しては自分から喜んで従おうとはしません。
なので、その威圧する大人からはいつまでたっても「子供は威圧を強化していかなければ従わないもの」として見えることでしょう。



「力で威圧しなければ子供は従わない」と思っているということは、子供を信じていないということです。
また子供の力を見くびっているということでもあります。

素人ならばまだしも、子育ての専門家がそれではよくないのは誰にでもわかるでしょう。


子供の能力を正しく知らないと適切な働きかけというのはできません。

それを知らないで、前回の朝の会の例のように、2歳の子に3~4歳の能力のことを求めていたらそれは威圧して従わせるしか方法はなくなってしまいます。

このように知識不足・勉強不足もそのような力でねじ伏せることを生んでしまいます。



「信頼関係」については検索してもらえれば、過去記事に関連するところがたくさんみつかります。
基本的には「叱らなくていい子育て」のところも、そのエッセンスは「信頼関係」にあるわけです。

過去に保育においての信頼関係をテーマにした記事もありました。


なので、この場では「信頼関係」についてのこれ以上の話は省いて、次回から事例を見ながらその具体的な実践について考えていきたいと思います。
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● COMMENT ●

No title

確かに、威圧して屈服して大人しくなった状態と、趣旨を理解して大人しくなった状態と、表面的には似ているので履き違えるこがとも多いのでしょうね。

よく、親に言葉で謝るまで小さい子供を責め続けるというのが良い躾といわれてるのを聞いたりしますが、それって大人が躾ができたと実感する自己満足の為に、子供が屈服したという証拠が欲しいだけじゃないのかなーと、子供だって(言う事を聞いて実際やめるかどうかはともかく)ちゃんと大人が一度言ったことは聞いて意味は年齢に応じた形で理解してるはずなのになと、常々思っていたので、今回の記事はとても頷きながら読みました。
子供の理解力をみくびっているとはその通りだと思います。

でも、分かりつつも新しい局面で、似たような事を先日してしまいまい…きつく怒りすぎて小1の息子が過呼吸になってしまったのですが、命に関わる事だから、どう演出すれば本気で怒ってる感じが出るかとか考えてしまい、やりすぎてしまいました。そんな事までしなくても伝わったのになと反省しきりです。
反省と理解を促すことと、人格の根っこへの打撃を与えることは、似ていて違うのですが、紙一重にも感じます。
最近の土下座ブームとかを見ても、何となく似た物を感じます…。

改めて育児には柔軟な思考が必要なのだなと実感しているとこです。
いつも更新ありがとうございます。

相談です

子育てって本当に難しくて頭を悩ませてます。現在2歳2ヶ月の男児と0歳2ヶ月の女児の母です。悩みは上の子の性格がちょっと控え目で、同じ年くらいの子には遠慮してしまうみたいで、自分の持っているオモチャをよその子に取られても泣いたり奪い取るわけでもなく、私に目で訴えてくるか取ろうとしてもいつも負けてしまいます。見ている私がモヤモヤしてもどかしいです。せめて泣いてくれれば私が「泣いてるから返してね」と言えるんですが…親にはちゃんと自己主張出来ますが他の人には出来ないみたいです(-_-)こういう場合親はどういう対応をすればいいですか?守ってあげたらいいのか、ほっとけばいいのかな。

おとーちゃんのブログに出会うまでこの威圧の保育と受容の保育の狭間で悩んでました。
一度威圧系の先輩と組んだ時に、なにかにつけて○○先生は優しいから…と馬鹿にされているような気がして、私だってやれば出来るんだとばかりに、威圧した保育をしたことがあります。もうその年は最悪でした。子供とは、うまく回らないし、毎日辛くてストレスで喉がキュッとしまって声が出せなくなるし…

その次の年、威圧を手放した途端に毎日楽しくて仕方ない状態に戻りました;^_^A

そして、今年、威圧系の先輩が持ったクラスを引き継ぎました…
4月当初は、クラス全体がわーって落ち着きませんでした…
普通に片付けますよーと声かけても通らないくらいうるさくて…女の子達は、なんとなーくコソコソしてて…ものすごーく居心地が悪かったです;^_^A

地道に、子供と遊んで楽しいを共有して、1人1人と会話して…やっとものすご〜くうるさいクラスは落ち着きましたm(__)m
まだまだ女の子達のコソコソ…とした感じは抜け切らないけれど、ようやく子供らしくにこーっと笑ってくっつきながら、話してくれるような女の子も増えてきました。

先輩先生は、年長にもなって先生にくっつき虫するなんて‼︎と目くじらたてますが…私は、少し信頼してくれているのかな…と喜ばしい気持ちです。

園内は、子供を言い負かしてナンボな雰囲気がありますが…私はおとーちゃんの後押しを信じて子供との信頼関係から始まる保育をしていきたいと思います!

まきこさん

僕はその性格が控えめで他者に強く言えないということが、そもそもそう悪いことだとは思いません。
それもその人の個性だからです。

ましてやまだ2歳です。
できないことがあったとしても何らおかしくはない年齢です。

他者に主張できないから、主張できるようにしなければならないと望むわけではありませんが、

>守ってあげたらいいのか、ほっとけばいいのかな。


そういうことにいちいち大人が介入していたら、今後も余計に自分を出せない方向へといきかねないでしょう。

大人のところに避難してきたり、受け止めてもらいにきたときまで拒否する必要もありませんが、基本は見守っていればいいと思います。

人間関係というのは実地の経験で本人が乗り越えていくしかないことだからです。


今のその姿がもっと大きくなったときも、続いていると判断されることであれば大人がなんとかしなければということもあるかもしれませんが、その姿がずっとつづくわけではありません。

そこに大人が早手回しで過剰に心配していくと、これは過保護や過干渉となってしまい、むしろ子供の自然な発達を押しとどめてしまうかもしれません。

ほうっておいて、子供では本格的にどうにもならないときにだけ大人は出ていけばいいのだと思います。

けふじろさん

いまでもありますが、昔から「中学校における荒れ」というのがありますよね。

僕はあれは、「威圧」で子供に対峙している日本の子供観・教育観が生み出した一つの結果ではないかと感じています。

保育園・幼稚園時代から子供を押さえつけ大人の望む行動を課し従わせ、それで次のクラスにバトンタッチして、またそこでの新しい大人がそれを繰り返し、小学校に行けばいったでまた、そこの先生たちがそれをし、さまざまな問題が見え隠れしていても、それを臭いものに蓋方式で押さえつけることで対処し、また次のクラス担任へとバトンタッチ、自分ではその結果でているよどんだ物に責任を持つことはなく、次へと送り、また新しい子にそれをし・・・。


そして、子供が精神的にも肉体的にも大人に対抗できるようになってきた、中学生の頃にそれらの大人からの威圧になんとか抵抗を試みる。

そういうのが「中学校の荒れ」として吹き出てしまっているというのが多分にあると思います。

僕の頃だと、それらを押さえつけるために中学校教師は盛んに体罰を振るっていました。


威圧で子供に関わることを繰り返していくと、それらは強くならざるを得ません。
その結果が学校における体罰です。

威圧を強めれば子供を大人の思い通りにすることは簡単だけど、それは本来の子供を育てるというものではないと僕は思うのです。

本当に年端もいかない、乳児・幼児に対しても威圧で望まなければならないと考えている人は、人間の心というものにずいぶんと鈍感でいられる人なのだなと不思議に感じてしまいます。

月極めと一時保育

初めまして。
ブログを拝見させて頂き、共感することが多く、おとーちゃんさまならどうお考えになるかとお伺いしたくなり、書き込みさせていただきました。

我が家の息子は2歳5カ月で、先月まで約1年間、東京都の認証保育園に月極め(9時から5時)で通っていました。

その保育園をなぜ辞めたかというと
・乱暴なクラスメイトがいて、危険だと考えたこと
・都合により週3日程度は保育園に預けることは避けられないが、認証園の基準である週160時間までは必要ないこと
が理由です。

現在別認可保育園に併設の一時保育専門のクラスに2、3日(曜日は限定せず)通っています。

認証保育園に通ってきたときは、朝泣いてしまう時期(乱暴な子にいじめられた後しばらくの間など)もあったりはしましたが、おおむね楽しそうに通っていました。

一時保育の利用はまだ5回目ですが、認証園に通っていたころの嫌がり方より激しく泣いて登園をいやがります。

一度母親とべったりしてしまったことの反動もあるとは思います。

でも、もしかしたら不定期で、メンバーも固定でない(担任の先生は固定)な一時保育通いが、子供の不安を増大させているのではないかと心配になりました。他の子供たちも不定期の一時保育なので毎朝数人の子供が泣いている状態です。

乱暴な子が来るかそうかも不確実なので、却って固定メンバーの方が子供自身の気構えや対応などができて良かったのではないかと悶々としています。

「日中は元気に過ごしてますよ。」と一時保育の担任の先生はおっしゃるのですが。

別の認証保育園から「少し先だけど、空きが出るので月極め保育可能」との連絡をいただき、どうするか悩んでいます。

月極め保育は、時間的にはより多く子供を預けてしまうことにはなりますが、家事を保育時間中に済ませて、子供といるときは遊びに全力投球できていたので、夕方から夜の子供の笑い声は、一時保育利用の現在より多かったと感じています。

子供側の視点から考えると、一時保育と月極めではどちらが負担が少ないでしょうか?

おとーちゃんさまはどう考えになりますか?


さるすべりさん

確かに一時保育だと、かえって慣れにくいというケースはあります。

それで通う日になると、そのたびごとに泣きぐずったりを繰り返すので、子供にとってよくないのではないかとも感じてしまいます。

でも、子供というのは親の前での姿と、一人になったときの姿というのは往々にして違うものです。

ぐずりなんかがあったとしても、保育中は普通に過ごしているのであれば、そういったぐずりなどは当然でるものと考えてしまってもいいのではないかと思います。


そういうことがあっても、一緒に家庭で過ごせる日でバランスは取れているはずです。


また、2歳5ヶ月という年齢では、そういう姿があって普通ですし、逆に考えればこれからののびしろというものがたくさんあるのですから、今の姿がずっと続くとも限りません。


さらに、保育園というのは必要があって預けているのですから、そうそう簡単にあわないから変えようということができるものでもありません。

その新しい園に移り変わったところで、そこではさらにもっと深刻な問題に直面する可能性だってないわけではないのです。

また、小さい子にとっては環境がころころ変わるということも負担になり、それを繰り返すたびに環境変化に対する不安というものが強くなっていってしまうということもあります。


ですので、現状でどうにもならないほどの不都合がなければ、また移った際の大きなメリット(通園時間が短くなるだとか)がなければ、変えていくよりも現状維持(慣れを待つ)が無難ということも多いです。
参考までに。

ありがとうございます

お忙しいところ、お返事をいただきありがとうございました。
環境をころころと変えるのは良くないですよね。

認証保育園については、やはり入園辞退しようと思います。
一時保育で乗り切るべくがんばります。
ここを乗り切れば4月からは幼稚園ですし!

おとーちゃんさまのブログを読んでいると、子育てを頑張ろうと
新鮮な気持ちになれます。

これからも記事を楽しみにしています。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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