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2024-04

「疎外」 -支配と束縛の子育て法- vol.2 - 2015.04.17 Fri

前回の始めの方で、「昔の保育士は~」と言いましたが、実際はいまでもそのように保育をしているところはたくさんあります。
保育園だけでなく、一般の人もひんぱんに、この子供を疎外することで言うことを聞かせるという子育て法をたくさんしています。

特に、祖父母世代は、この関わりを好んで使っているのを見かけます。

「〇〇しない子は知りません!」
(この逆が、「〇〇したら△△あげる」 ←これは疎外ではないけど、根っこのところでは、子供を思い通りに動かせばいいという姿勢の表れであり、類似の関わりと言えるでしょう)







むしろ、「疎外」は子供のいいなりにもならず、声を荒げて叱るでもなく子供に言うことを聞かせることが出来るので、「うまい関わり方」「よいしつけの方法」という認識でいる向きも強くあります。

おそらく世間一般で使うこの疎外を使って子供に言うことを聞かせる関わり方を、保育士は保育の中でより徹底してして使ってきたのではないかと思います。



若い保育士さんからコメントでしばしば寄せられる、

「子供を受容したいのに、先輩保育士に”子供になめられるな”と言われるので心苦しい」

に出てくる、先輩保育士の人は、まずたいていこの「疎外」をうまくできることが、「うまい保育」であると理解してしまっているのでしょう。

大変残念なことに、それは大間違いなのです。


保育園で疎外を用いられて、「言うことを聞かされている子供」は、確実に家庭に帰ってたくさんのゴネを出したり、激しい後追いや、泣きをして親を求めることでバランスをとろうとします。

(また、受容不足になり、大人への信頼感を築くこと、大人から安心感をもらうことが必ず不足していくので、次の年度のクラスになって問題行動を噴出させたりします)

もしくは、優しく受け止めてくれる保育士のところに行って受け止めてもらい、なんとかその場所に安心感を見いだそうとします。


”「疎外」で言うことを聞かせることがうまい保育” だと考えている、そこの先輩保育士はそれを見ると、「そんな風に甘やかしていると、子供は言うことを聞かなくなる」、「そんなんだから子供になめられるんだ」と、その子供の行為と優しい保育士を否定します。



そのような保育士は普段から、子供に対して無表情や冷たい表情をしています。
すでにそこからもう「疎外」が始まっています。

子供にしてみると、無表情や冷たい顔を向けられることは、「自分はこの場にいていいのだろうか」、「ちょっとでも怒らせたら、この場にいさせてもらえないのではないか」といった不安を与えられます。

なので、子供は必死にその人の顔色をうかがって、否定されまい、追い出されまいと健気な努力をしなければなりません。

これは心理的な束縛をしているのであって、子供が大人の思うとおりに動いているからと言って、子供自身に健全な成長を与えているわけではありません。

そして、必ずなんらかの反動を子供にもたらします。

保育としても、子育てとしても、このような関わり方は大間違いなのです。


こういう保育をしている人は、保育自体少しも楽しくはないでしょう。
楽しくないからこそ逆に、自分は「うまい保育をしている」と変なプライドばかりを肥大させていくことになります。
ただ、子供が言うがままに動くことに強い自己満足を感じたりはしているかもしれません。

でも、そういう保育士のことは、きっと子供は大きくなったときには少しも記憶に残してはいないことでしょう。



今回、話の比重をやや保育に置きましたが、この「疎外の子育て」は、いまの祖父母世代からこのかた根強い人気の子育て法です。
世間一般にもいまだに、これが「うまい子育て」、「うまいしつけ」だと思っている人はたくさんいます。


『条件付きの肯定はいらない』のシリーズでも見たように、自分の親からこういった関わりをずっとされてきたことで、いまだに苦しんでいる大人もたくさんいます。

もう、この悪循環の連鎖は断ち切った方がいいでしょう。


いま子育てをする人、これから子育てをする人、そして子育てを仕事とする人には、「疎外」で子供を大人の思うとおりにしても、それは子供の健全な成長にはならないことを覚えておいて欲しいです。
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● COMMENT ●

初めまして

たまたま行き着いてブログ拝見させて頂きました。私も幼稚園教諭として働いておりますが、私が想像、目指していた保育を本当に実践しておられる方がいたんだー!!と感動です。
過去記事もいろいろ読みました。疎外感、孤立、貧困など私も学生時代勉強し、夜間保育などボランティアにも通う中で、子どもや家庭に関わる立場としてあれこれ考えながらやってきましたが、現場ではかなりギャップもありました。
まだまだ経験が浅いので、これから自信を持って保育できるようになっていきたいです。
これからも楽しみにしています^o^

いぜんコメント投稿した際のハンドルネーム失念してしまい違うハンドルネームで失礼します。

息子が通う保育園は、おっしゃるような疎外多用されてます。
赤ちゃん組に連れてくよ!じゃなく実際に連れてかれます。
そして赤ちゃん組の先生に追い打ちをかけられる…という胸が痛くなる光景。
疑問をアンケートで投げかけたことはあるが、いかに子供のためかという熱い力説が帰ってきます。
子供の今だけじゃなく将来を見据えの指導ですというような。

話が出来るのに泣いてごまかすのは絶対に許しませんというスタンス。
先生方みなさん共通しているので園がそういう方針なんだろなと…

しかし一方で熱心な指導や子育てに悩む親に対しての対応は感心することもあるので完璧に満足する園なんてないかなと諦め気味です

いろいろ

はじめまして。
たまたまたどり着きました。
読ませて頂き、介護の世界でも同じだなと思いました。・・・介護の仕事をしています。
思いも動きも自由がいいなと思います。
今後もちょくちょくおじゃまするかと思います。

本を紹介してくださいとコメントしたものです。お礼が遅くなりすみません。
ありがとうございました。
高橋和巳先生の本は、はじめて読みました。とても良かったです。先生の他の書籍も読みたいと思います。このブログがきっかけになり、随分救われました。
お体に気を付けて、これからも頑張ってください。ご家族の皆さまの幸せを願っております。ありがとうございました。
これからも、拝読させて頂きます。

うちの夫も、息子にこっちに来てほしいときに「ばいばーい」と言って、疎外で言うことを聞かせようとしていました。それじゃ来ないと思うよと言ったのですが、息子が泣きながらパパの方に向かったので、ほら効くやろ?みたいな得意気でした。それは悲しい気持ちになるから、やらないで、来てほしいときはおいでって言って待ってほしいと伝えると、心から納得してはない表情でしたが、それ以来気を付けてやらずにいてくれています。理解のある夫で本当に良かったと思っています。
おとーちゃんさんのブログを読まなければ、疎外も脅しも物でつるも、全く疑問を持たずにやってたと思います。本当にありがとうございます。今、息子は甘えん坊で困ることもあるけど、とっても可愛らしく育っています。

こんにちは

保育の仕方、保育士によって違うのはなんとなく気づいていました。幸い我が子の通う保育園では、ベテラン保育士さんが受容や承認を大切にしてくれているのがよくわかるので、安心しています。
さて、ここからは要望ですが、久しぶりにスマホからこちらにアクセスした際、とても邪魔な宣伝?バナー?が出てくるようになりました。
もし改善できそうでしたら、よろしくお願いします。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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