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2024-04

親のタイプから考える子育ての形 vol.6 「いいなり型」からの脱出2 - 2017.07.11 Tue

前回からのつづき。

ちょっとイメージしてみて下さい。

子供と親の間に、「対人関係の関わりのモデル」という橋がかかっています。
これにはいろんなタイプの橋があります。





前回の例で出したa,の子で見ると、「甘え ⇆ 受容」という橋が架かっています。

「いいなり型」だったb,の子は「物事の要求 ⇆ いいなり」という橋が架かっていたわけです。


ちょっと話がそれますが、「受容」というと、を純粋に「かわいがる」といったことではなく、「モノや行為を与えること」と理解してしまう人も少なからずおります。
この背景には、消費文化が劇的に伸張した高度経済成長期以降の昭和型の子育て観が、大きな影響を与えていると感じます。いまの祖父母世代やそれ以上の人には、「モノや行為を与えることが愛情なのだ」という理解をしている人が少なからずおります。
そんな考え方が現代の子育てする人にも色濃く影響を残していると考えられます。
このあたりも、現代で「いいなり型」の子育てが多くなってしまったのと無関係ではないでしょう。


「対人モデルの橋」には他にも様々なものがあります。

・「習い事(勉強)を頑張る ⇆ 褒めてもらう」
・「親の顔色をうかがって行動する ⇆ 許容」
・「親に合わせる ⇆ そのときの感情・気分で関わる」

などなど。



それまで「いいなり型」の橋がもっとも大きなものだった子供と親の間で、その橋がなくなってしまえばその子は他の橋も架かっていればそちらを通じて親と関わりを持つということができますが、それがないor少ない場合は、難しい姿が出るべくして出るというところまで前回お話ししました。


そこで「いいなり型」から脱出するために必要なことが見えてきます。

「いいなり型」の子育てから安定した子育てに変えていくために必要なのは、「いいなりの橋」をなくすことに力を入れるのではなく、親子が互いにムリのない関わり方の橋を作ることが必要なのです。


このことについては実はこのブログでも、「素直な甘え」というフレーズでずっと前から述べています。


「いいなり型」の子育てをされて対人モデルを「他者をいいなりにすること」として獲得してしまった子は、甘え(受容の欲求)や自己主張、自立の発露などを「他者をいいなりにする行動」として出してしまいます。人によってはそれは「子供のわがまま」と見えることでしょう。(実際は適切な対人モデルの欠如の結果であって、その行為はいわゆる「わがまま」とは違う)


これでは、受ける側は気持ちよく長続きできません。
それらを受ける側も気持ちよく受けられる形を実際の関わりをする中で子供に持たせて、「こうやって関わるんだよ」「こうすれば、私もあなたも気持ちよく関われるんだよ」ということを教えなければなりません。(言葉で教えるというよりも、実地の実践で教えるという意味)

大人が実践することで示して(教えて)あげなければならないのです。

良くない行動に対してNOを突きつける(※「甘やかすな」式の対応)だけで、人間は適切な対人モデルの獲得はできないのです。

(※「しつけ」が要求するような「甘やかすな」式の対応は、適切な対人モデルの橋が架かっていることを前提として考えられています。ですから現代の子育てでは合わないことが増えています。
かつての子育て環境では子供に関わる大人が多かったゆえに、子供はその親から与えられる以外の対人モデルを獲得できていたため、親がそれまでいいなり型であっても、「甘やかすな」式の対応をすれば、子供は他の対人モデルに切り替えることが可能でした)




だから、子供からのかわいらしいアプローチを待っていても、それは無理というものです。

「大人からの積極さ」が必要不可欠です。
大人の方から互いに心地よい関わりを出していくのです。


時間や気持ちに余裕のあるときに、「あなたはかわいいね」と抱きしめてみるといったことです。
そういうことが難しいならば、追いかけっこやくすぐりを大人の方からやるのです。

絵本が好きな子ならば、大人の方から「いま時間があるから、この絵本読んであげるね」と大人の方から関わるのです。

難しいことをしようとする必要はありません。

子供の何気ない話を聴くということでもいいですし、
ご飯を食べて「おいしいねー」とほほえみかけるといったことでもそれは達成されていきます。


短期的に見れば、その子はそれにより大人と心地よい関わり・時間を共有できたことを身をもって理解するので、それを繰り返そうとします。

その子は「絵本読んでー」と持ってくる姿がでてくるでしょうし、「おいしいねー」とそれを再現しようとしてきます。

これが、「いいなり」ではない「新しい橋」です。
これを育てていきましょう。

その子の年齢によって、その対応の方法はことなってくるかもしれませんが基本的なエッセンスは同じです。両者の心地よい関わり方を大人の方から示していくことです。



もし、「絵本読んでー」と子供が持ってきたときに無理な状況ならば、それに頑張って応える必要はありません。それではまさに「いいなり型」の関わりになってしまいます。

「無理なら無理」と正直に言う方が、実は子供のためなのです。

「無理を押して、子供のために・・・」と応じてきてしまったのが、両者が互いに心地よく関われない「いいなり型の橋」を作ってしまった原因です。

しかし、すでにいいなり型の関わりになっている人が、「無理」と言ったら子供はそこで納得できず、ごねて大変になってしまうことでしょう。


だからこそ、大人の方から積極的に心地よいアプローチたくさんしていくことが必要なのです。

「大人の方から積極的に関わってくれる」 という事実が

「大人が自分にあたたかい関心を持ってくれているという認識・自信」を子供に持たせてくれます。
なので、「そのとき」言うことを親が叶えてくれないということがあったとしても、親が自分を否定していると受け取らずにすみます。


しかし、大人の方から関わりを示してくれず「自分に積極的であたたかな関心を親が持ってくれているかどうかわからない」という状況にある子は、ずっとゴネ続け、受け入れてもらおうとがんばらなければなりません。

その「わがまま」と見える要求を受け入れてもらうことが、その子にとっては自分を肯定してもらうこと、自分の存在そのものを受け入れてもらうことと同義になってしまっているからです。


だから、「いいなり型」からの脱出のためには、積極的な心地よい関わりを大人の方から先に意図的に展開することが必要なのです。

基本的にはこの方向の関わりで、いいなり型の関わりは脱却できていくはずです。


「大人から積極的に関わること」がもたらすものにはもう一つの側面があります。

つづく。
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● COMMENT ●

こんにちは

いつも大変勉強になることをありがとうございます。
「橋」のお話はとてもわかりやすかったです。
後編も大変ためになりました。

また、埼玉でのセミナー告知ありがとうございます。
私の力不足が原因で、周知があまりできておらず、
中止になってしまいそうな・・・
すでにお申込みされてる方にはもちろん、先生にも申し訳なく存じます。
すみません。

先回りした関わり

おとーちゃんがずっと言って来られた先回りしたいい関わりの具体的なやり方てすね!
わたしはつい強く叱ってしまう方ですが、何気ないときに息子に大好き!と言って抱きしめています。4歳児嬉しそうにはしていますが、照れる時があります。段々とただ可愛い幼い子ではなくなって居るんだなーと感じます。

でも負けずにずーっと大好きって抱きしめ続けようと思います。

今日幼稚園で手に持っていた手裏剣を噛み付かれて奪い取られたそうです。歯が喰い込んたあとが見られ、血が滲んでいました。幼稚園から病院にも行きましたが、ちょっとびっくりしました。

息子は何かしたわけでもなく、先生に作ってもらって、あそんでいたところいきなりだったようです。噛み付いて奪うなんて…その後その子は平然と遊んでいたようで。


言葉にならない怒りを抱えてつい、とか、思い通りにいかなくてつい、とかはよくある事でしたが…奪う為の手段として噛みつく!っていうのは10年程幼稚園で働いていましたかが、なかったなーと。

まぁここまでの息子とその子の関係っていうのはわからないので何とも言い難いですが…

うちの園でも、明らかに親との関係がうまくいっておらず妙なゴネかたをする子が増えて来ました。ホントにおとーちゃんが仰る通りに、幼稚園にも子供がやった事自体に対応しているだけではどうにもならない時代が来ましたね!

裏にあるものを読み取って、プロとして対応する事が求められる時代ですね。

さて、我が家でも噛み付かれたらやり返せ!と夫が息子に教えています。うちも変な家庭です。困ったものです。

男女の差が出ています

はじめまして。
いつも楽しく拝見しています。初めてコメントさせていただきます。2歳半の息子を持つ母です。

最近気になることがあり、コメントせずにはいられませんでした。

私は教育機関で働いていたこともあり、幼児と接するのは初めてですが、毎日楽しく育児をしています(イヤイヤもあるので色々な日はありますが)手を繋いで毎日するお散歩の時間が一番幸せです。

ただ、激務で週1.2日、月に2回くらいしか会えないときもある夫が、完全にこのいいなり型になっており、2歳半の息子が、いつも指示を出して遊んでいるような状態です。
私にはそんなことを言わず、かわいいわがまま(あーそーぼ、今ぎゅーってしたいなー、など)言ってくれますが...

そのせいか、男の子を相手に遊ぶとき(同年代でもお兄ちゃんでも)は指示だし遊び(これやって!)が強く出ます。
女の子にはほぼそんなことを言わず普通に遊べます。

夫には気になったときには適宜、こうした方が○○が喜ぶよ、等伝えるのですが、最近男女の差を見ていると気になってしまい。。。

夫も子供が好きで構ってあげたいのに、指示を出されてしか遊べず、見ていてなんとなくやきもきしてしまいます。
ここは我慢強く言い続けていきますが。。。

上の方も仰っていますが、夫との考え方の違い、擦り合わせるのが難しいです。
来年から幼稚園、男女に対する差が顕著にならないようにしていきたいです。
もしこの件でアドバイス等あれば、返信は不要ですので、少し触れていただけたら嬉しいです。

本当にいつもすとん、と納得できるコラムをありがとうございます。
今まで、子供と接する中でもやもやしていたことがすっきりできて嬉しいです。
暑いですしお忙しいと思いますがお体に気をつけて頑張ってください!


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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