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2024-04

『ほめて ほしかった』 - 2016.07.23 Sat

まずはmamastaに載っているこちらの小学校1年生の詩を見てみてください。

【高知新聞】小1「おかあさんに ほめてほしかった。はんたいに おこった」


子育ての中には、この子供の思いと大人の思いとのすれ違いが少なくありません。

子育ては多くの場面でバランスなので、それもほどほどであれば大したこともないかもしれませんが、たくさんになったり、その関わりが強くなっていけば子供をかえって伸び悩ませてしまいます。






僕が多くの子を育ててきて思うのは、子供にとって「目先のできること」よりも、なにかものごとに取り組もうとする「意欲・モチベーション」の方が何十倍も大切であるということです。

このお母さんは「土曜日の分をやらせよう」とすることと引き換えに、子供の「勉強をしたい」というモチベーションの芽を摘み取ってしまっています。


しかし、多くの人にとっては、目に見えないモチベーションを育てることよりも、「目先のできること」を優先させたくなる誘惑は大きいようです。


これは勉強に限りません。

野菜が苦手な子だって無理やり食べさせずとも、モチベーションを否定しないでいけば、その子はその子のペースでそれを達成します。


「片付けをさせなければ」と子供に求める人は多いですが、「片付けなさい!」と「目先のできる」にとらわれて、子供に否定の方向性のアプローチばかりをしてしまえば、かえって「片付けなどやるもんか」と思う子供を作りかねません。


友達関係だってそうです。
他児にいじわるしたり、乱暴する子だったとしても、その行動を否定するだけでは子供は大人の思ったようには、なりたくともなれません。



子育てってそういう意味では、山道を歩いているようなもので、「そこに答えがあるから」と一直線に進もうとするとかえって遠回りになってしまうかのようです。




子育てには二種類の方向があります。

・「させていく」子育て
・「するようになる」子育て

です。


現代の子育ては、その多くが「させていく子育て」になってしまっています。
子供の感情から、行動まで。
すべてを大人が”作り出すよう”に子供に関わってしまっています。

「させていく子育て」は一度始めると、その後もずっと「させ続けなければ」ならなくなってしまいます。

なぜなら、そこにモチベーションはないかもしくは少なくなっているからです。
(これは子供の個性にも左右されます。させていくことを積み重ねても、それなりにモチベーションを維持できる子もおります。そういう子だと現代では結果的に「育てやすい子」とみなされます)

片付けを、目くじら立てて「やらせる」習慣をつけていけば、「やらせなければ」やらない子になってしまいます。
たいてい、その「やらせる」関わりは強くならざるを得ません。

そういうサイクルが子供の姿の多くの場面で行われるようになると、大人からして「子育ては大変だ……」になるのは時間の問題です。


「させていく子育て」には、子供にとって副作用がたくさんありますが、
大人にとっては大きな利点があります。
それは「させていくこと」で結果を目に見えて作ることができるので、「安心」が買えるという点です。

子供の将来は、どうしたって誰にだって未知数です。
その不安が大きいと、それを解消したくなるのが人間というものです。
だから、「私が」作り出すことによって「安心」したくなってしまいます。



この詩のシーンは、まさにそこになっています。

この子は、モチベーションにあふれていました。
しかし、母親によってそのモチベーションはしぼまされてしまっています。


このあと子供がどういう方向に進むかというのも、ケースによりさまざまですが、極端なところであげれば、モチベーションがなくなりそのものごとに意欲をなくしていく場合と、そのものごとへの自発的なモチベーションは無くなったが、親の期待に応えるために自己のモチベーションの代わりに、「頑張り」を費やしてその期待に応えていくケースがあります。


その「頑張り」は文字通り、「ついやして」いってしまうのです。すり減らすように。
本当は自分で人生を歩み出すまでにたくさんためておくべきだったそのエネルギーを、「親のために」使ってしまうのです。
本当に極端になると、子供はそれで「生きにくい」人生を送らなければならないケースもあります。



僕は、子供とくに小さいうちほどこのモチベーションをしっかり溜める時期だと思います。

このモチベーションのすごいところは、それが”共通している”ことです。


片付けのモチベーション、苦手なものも食べようとするモチベーション、勉強のモチベーション、遊びに取り組むモチベーション


「させていく子育て」で子供への関わりを組み立てると、それは一個一個「させていかなければ」なりません。


しかし、子供のモチベーションは根っこのところではつながっているのです。

「苦手な食べ物があったけど、それを否定されずに過ごして、いまは食べられるようになった。それをほめられてうれしかった」

この気持は、どこかでつながってそれが片付けや、勉強にもプラスに働いてくれます。


だから、たくさん認められたり、肯定されたりして育っていくと、その子はいろいろなものごとにその意欲を発揮します。

なにか好きなものがあって、それに打ちこんできた子はその他のことにも前向きになりやすいです。

いまは早期教育ブームまっさかりですが、一方で多くの子育ての研究者たちは「直接的な勉強ではなく、子供は遊びや生活の中でゆくゆくは勉強にもつながる力を養っているんですよ」といったことを訴えています。



ただの偶然なのかもしれませんが、ノーベル物理学賞などの科学的分野の受賞者の人に、幼少期昆虫好きであった人の比率がとても高いという話があります。
以前どこかで読んだものなので、その正確な数字は忘れてしまいましたが、かなりの比率だったと思います。

多様性の宝庫である昆虫には、子供の探究心を遺憾なく発揮させるなにかがあって、長じてからもそれがその人のなにかに打ち込む原動力になっているのかもしれませんね。

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● COMMENT ●

同じような思い出があります

この小1の子と同じような思い出があります。

中学1年生のとき、初めての英語のテストで80点ちょっとを取り、うれしくてうれしくて母に見せたら、「こんな簡単なテストでこんな点数を取って!」と、ひどく叱られました。
泣きはしなかったと思うのですが、とても悲しかったことを今でもよく覚えています。
次回のテストでは、叱られないかドキドキしながらテストを見せ、叱られなかったような気がします。

大人になってから、あれは、こんな出来で満足するような子になってほしくない、という親心だったのだな、と気づきましたが、同時に、自分の子がもし同じようなことをしてきたら、思い切りほめてあげよう、とも思いました。

親になった今、母と同じようなことをしないように気をつけていましたが、モチベーションという視点で見たことはありませんでした。
その視点から見ると、モチベーションの芽を摘み取るようなこと、してしまっているかもしれません。

子どもの「今」だけを見て(ちょっと語弊があるかもしれません)、子どもの気持ちに寄り添っていく。それが一番の正解なのだろうな、と思います。
モチベーションの芽を摘み取らないよう、気をつけていこうと思います。

4歳の息子は昨日ダンゴムシと金魚を家で飼い始め、大喜びでお世話をしています。
ますます自我が強くなってきて手を焼くこともありますが、今のところまっすぐ育ってくれているような気がします。
このまま、子どもの成長を邪魔しないように、成長に手を添えるくらいの気持ちで育てていけたらいいな、と思います。

お母さんしつけをしないでを読んでたら

紹介されていたお母さんしつけをしないでを読んでいたら教師の家はしつけが厳しい事があり挨拶などしっかり出来る一見いい子が二面性をもって暴力行動を起こすことがあるとの文を読んでうちの子(11ヶ月)は出来るだけ甘くいこうとおもっていたら今回戦後最悪の大量殺人があり、両親は教師で近所の人曰くしつけのしっかりとしたお子さんとのコメントがあり震えました。世界を救うためという妄想の下をたどれば自分が救われたかったのかもしれません。それか両親への反撃?役に立たない者への嫌悪は自分自身への嫌悪だったのか?など色々考えてしまいました。もししつけの悪影響ならこのブログで訴えている内容は世界を変えるのかもしれません。頑張って下さい

ほめるのは難しい。

この子は、どうしてほめて欲しかったのだろう?

たしかに、ほめられるとうれしいもんです。

なんか認められたような感じがします。

ただ、ほめられるのが目的で、何かをするのはどうなのでしょうか?

ほめられるのが、モチベーションになってしまうと…

ほめられないと、やる気をなくしてしまう。

ほめると、さらにモチベーションが強化される。

でも、このモチベーションは、相手に合わせたものなんですよね。

それが続けば、自分が何をしたいのか分からなくなってしまう。

なので、ほめて欲しいと思っている相手に対して、ほめてしまうのは難しいですね。


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